最終レッスンの社会人Aちゃんを終えて、私もごみ置き場に降りるため一緒に出ようとしたところ我が家の玄関前で蝉がお亡くなりになっているという。

 

自慢じゃないけど、私は虫がぜんっぜんダメで、もちろん死骸もダメ。玄関前ということはお外に出られない。Aちゃんも虫嫌いだけれど一度出てしまったので戻ることもできず。Aちゃんに「ごめん!エレベーター脇に置いてある箒でとりあえず階段のところまで掃いちゃって!」とドア越しにお願いした。Aちゃんも必死。私に言われたとおりにへっぴり腰で箒を握り、私は1cmくらい開けたドアの隙間からそれを見守る。

 

その時、事件は起きた。

 

死んでると思った蝉がものすごい勢いでAちゃんにとびかかる。ちょっとあり得ないくらいすごい羽音と、それに負けないくらい大きなAちゃんの悲鳴が響き渡った。我が家のエレベーターホールはとても狭いのでAちゃん絶対絶命。

 

虫退治のスプレーをかけた→蝉、おとなしくなる。

掃こうとする→蝉、大暴れ

ゴキブリ退治のスプレーをかけた→蝉、おとなしくなる。

掃こうとする→蝉、力を振り絞ってAちゃんに飛びかかる。

 

もうあとは私が外に出ない&Aちゃんにはその場を放棄して逃げてもらうしかない。Aちゃんに「逃げてよし!」と声をかける。「無理!このままだと一緒にエレベーター乗ってきちゃうよ!TT」という悲痛な叫びが帰ってきた。

 

最終手段。急いでキッチンからもってきた台所用洗剤で申し訳ないけど蝉さんには絶命していただく。蝉さんも夏の僅かな命を一所懸命生きてるのはわかってる。でもごめん。我が家にそのまま住まわれるのは困る。

 

さて、ここで次の問題。私は死骸もダメなのは前述のとおり。Aちゃんとギャーギャーおろおろしていたら、奥の部屋から齢85になる最強のおばあちゃん、わが母が「あなたたち、なにやってるの?」と首をだす。「蝉が死んでね。とれなくてね。」と説明したとたん、ティッシュもって現れて「一番怖いのはいつだって生きてる人間よ。」と呟きつつ、さくっとつまんでゴミ袋へポイ。ちなみにわが母、生きてる虫はまったくダメだけど相手に息がないことがわかるととっても強い。

 

数年分くらいの悲鳴をあげたであろうAちゃんは汗だくで、レッスン後にあげたチョコレートを見せてくれた。見事にひっつぶれていてどれだけ彼女が渾身の力で戦ったのかがよくわかるものだった。

 

 

 

ゴミ捨てを無事に終え、コンビニに寄ってから帰ってきた私を待っていたのはエントランスのお掃除。ついでなので洗剤足してデッキブラシでごしごし。