A calling(天職)~ニュージーランド編~

 

第12話 羊の大移動

 

 

ニュージーランドのジェニーの牧場での仕事が始まって2日、この日は、朝8時から豚小屋の掃除やヤギの乳搾りなど、毎日の動物の世話が終わり、小休憩を挟んでから、羊たちの大移動を行うことになった。

 

羊や牛などの草食動物には、年間を通じて十分な草を供給できるように、牧場を幾つかのフィールドに分け、約1か月ごとに移動させる。

 

動物達が居ない間、そのフィールドではしっかり草を生やす事が出来る。

 

羊の大移動でを担当するのは、シープドッグのベスィーである。

 

フィールドとフィールドを移動するには、隣同士であっても、1度ドライブウェイ(敷地の入り口から母屋までの車が通る道)に出る必要があった。

 

両方のゲイト(縦1m、横3m程の扉)を開け、羊たちが逃げないように、ジェニーと私がドライブウェイの上と下に立った。

 

そして、ジェニーが

 

「Go around (走り回れ)」

 

と、叫ぶと、ベスィーがフィールドの一番奥に向かい、そこから吠えながら、羊たちをゲイトに向かわせるように追い込み始めた。

 

そして、ゲイトから出て来た羊たちを、そのまま隣のフィールドに入れるように、ジェニーと私が大きな声を出し、両手を振り回して誘導した。

 

無事に最後の1匹も隣のフィールドのゲイトに向かったかと思いきや、フェイントを使い、自分の脇をすり抜け、ドライブウェイに出て、敷地の外へ向かい走り出してしまった。

 

「Shit!(やばい)」

 

と、呟くと、すかさずジェニー

 

「Fetch it. (捕まえろ)」

 

すると、ベスィーが目の色を変えて、逃げた1匹の羊を追いかけ始めた。

 

羊の脚の速さも中々だったが、さすがシープドッグ。

 

敷地の外に出る前に、羊の後足に噛みついて、倒したのであった。

 

そして、今度は羊が逃げた方向に先回りし、羊が戻って来るように威嚇し、見事に、逃げた羊を新しいフィールドに収めることが出来た。

 

「Good girl.(お利口さん)」

 

と、ベスィーの頭を撫でていたので、自分もジェニーの真似をして、頭を撫でようと手を近づけたら、物凄い形相で威嚇された。

 

どうやら、まだ自分には心を許していないようだが、これから一緒に仕事をしていく内に、自分にとってベスィーはかけがえのない存在になっていくのであった。

 

第13話につづく