そして、12月23日。


「遼一さん、お父さんのことよろしくお願いします!私は24日の20時には帰れると思いますから」


「はいはい、早くしないと間に合わないんじゃないのか」


そう言いながらも、後ろからふらわりと抱きしめて、私の髪に顔をうずめる遼一さん。


「遼一さん・・・」


愛しいその名前を呼ぶと、強引に前を向かせ唇を奪われる。


遼一さんはいつだってずるい・・・こんなことをされたら離れられなくなってしまうのに。


会えないのはたった1日なのに、別れを惜しんで私たちは夢中でキスをした。






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「あぁ、遅くなっちゃった。まさか電気系統のトラブルで電車が遅れるなんて・・・何とか0時には間に合いそうだけど、遼一さん寝ちゃったかなぁ。せっかくのイブなのに・・・一緒にご飯食べてゆっくりしたかったなぁ」



そうひとりごちながら空を見上げると、澄んだ空気の中、満月が静かに光り輝いていた。


「そっか、今日は38年ぶりに満月のクリスマスだったんだ」


千早さんが言ってた言葉を思い出し、ムーンストーンの指輪を月にかざしながら信号を待つ。


このきれいなお月様を遼一さんと眺めたかったと思わずなはいられないほど、聖なる夜を明るく照らしていた。






家に着き、遼一さんを起こさないよう静かにリビングに入る。


「お帰り、◯◯」


「遼一さん、ただいまです!!待っててくれたんですか!!」


遼一さんの顔を見ただけで、あぁ、私はこんなにもこの人が好きなんだと再認識してしまう。


そして、愛しい人が自分を待っていてれることがこんなにも幸せなんだと思うと胸がいっぱいになり、おもいっきり遼一さんに抱きついた。


「どうした、そんなにオレに会えなくて寂しかったのか」


そう言って、ぎゅうっと抱きしめ返してくれる。


遼一さんの笑顔があまりにも優しくて、抱きしめてくれる腕があまりにも温かくて、2日間の疲れは全て吹き飛んでしまう。


「今回はたった1泊の出張だったけど、すっごく会いたかったです…お父さんのことも本当にありがとうございました。お前の旦那様は最高だ、くれぐれもよろしく伝えてほしいとお父さんからメールがきました」


「喜んでいただけたなら良かった。オレもお父様と色々お話できて良かったわ」


「でも、せっかくのイブなのに帰るのが遅くなってすいません」


「まだ、イブは10分あるでしょうが。そして明日2人でゆっくりすればいい」


そう言って、ポケットから小さな包みを取り出す遼一さん。


「◯◯、メリークリスマス」


「わぁ!ありがとうござまいます!開けていいですか?」


そう聞きながら、包みを開ける。


「嬉しい!ムーンストーンのネックレス…」


それはハートにのチャームにブルームーンストーンがついた、とても可愛らしいネックレスだった。


「お父様から話は聞いた。10歳のとき、本気でサンタを信じてたお前は、友達と言い合いになったんだってな。それでも、サンタはいるーって家に帰ってから泣いたそうじゃないか」


「う・・・恥ずかしい」


「あのとき、お母様とだいぶ2人で悩まれたらしぞ。だからあの手紙を書かれたらしい」


「手紙の話もお父さんから聞いたんですか」


「この前、◯◯が見せてくれた箱の中に入ってただろ」


「あっ!あのとき、遼一さんはあの手紙を見てたんですね」


「あぁ。その手紙を見たから、お父様に聞いてみたんだよ。


10歳の◯◯さんは、ご両親に欲しいものを尋ねられても、サンタなら分かるはずだって言って、欲しいものを言わなかったんだってな。


だから、『今年はあなたが欲しいものとは違うかもしれませんが、1つ大人になったあなたへのプレゼントです。大切にしてください』という手紙とともにこの指輪が送られた」


そう言って、遼一さんは私の右手の薬指の指輪をなでた。


「そうなんです。あの日、すっごく早く目が覚めちゃって・・・そしたら、枕元に指輪と手紙があって・・・


お父さんの字で書かれた手紙を読んだとき、私泣いちゃいました。どうしてこんないい両親を困らせたんだろうって。今思い出しただけでも恥ずかしいです。


この指輪、大きくなるまで大事にとっておこうと思って、毎日眺めて過ごしました」


「なんかお前らしいな」


そう言って笑う遼一さんの笑顔はとても優しい。


「まぁ、ノエルが言ってた話はあながち間違ってなかったってわけだ」


「ノエルさんの話?」


「ラウンジで言ってただろう。『恋人はサンタクロース』って」


「はい。でもそれが…」


「ほら、サンタクロースからの手紙のラスト、

『あなたを愛しくれる人はみんなあなたにとってのサンタクロースです』って。

だから、お前、あいつらの前で、サンタはいますって言ったんだよな」


「ふふふ・・・そうなんです。ちょっとこっ恥ずかし話なんですけどね」


「何も恥ずかしがることじゃないだろ。


本当に素敵なご両親だ。オレもいつかそんな親になりたいって柄にもなく思ったわ」


そう言って笑いながら私の首にムーンストーンのネックレスをつけてくれる。


「◯◯は色々な人に愛されて大きくなった。それは今だってそうだ。だけど・・・


だけど、オレはお前にとって一番のサンタでいたい。


◯◯、愛してる」


この人は、どうしてこんなことをさらっと言ってしまうのだろうか。


もう、幸せすぎてどうにかなってしまいそうだ。


私を愛おしそうに見つめたあと、とびきり優しいキスが降ってきた。


「ん・・・まっ・・・て」


「はい、却下」


「私も遼一さんにプレゼントがあるんです。それに今日は38年ぶりのクリスマスの満月ですよ。一緒に眺め…」


言い終わる前にキスで言葉を奪われる。


「オレを照らしてくれる月が帰ってきたんだからそれでいい。あープレゼントも後でいいから」


そう言って、キスをやめようとしない遼一さん。


「りょう…いち…さん、待ってくだ…さい」


遼一さんのキスに溺れ、理性が溶かされそうになるのを必死に堪えながら伝える。


「今度はなんだ」


「私も・・・」


「ん?」


「私もずっと遼一さんの一番のサンタでいたいです!」




私だけじゃない。遼一さんだって、ご両親や皐月さん達、本当に色々な人たちに愛されている。


けれど、どんなときだって、私は遼一さんの一番の理解者としてそばにいたいし、誰よりも愛していたい。


それはファンとしても奥さんとしても。


とにかく心から愛しいと思う気持ちを届けたくて、とびきりの笑顔で遼一さんに伝えた。


「遼一さん、大好きですよ」


「あぁ、知ってる」


少し頬を赤らめて言う遼一さんのその答えが嬉しくて、今度は自分から遼一さんに口づけをした。


イブは終わってしまったけれど、私たちにとって熱い夜が始まったのはいうまでもない。


窓の外では、私たちを見守るかのように月が優しく静かに光り輝いていたーー









3度目のアップにも関わらず、最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

何度も言ってますが「遼一さん、愛してますよ」とか「大好きですよ」の返しが、「あぁ知ってる」って言うのがめちゃくちゃ好きで。



やっぱり私の中で廣瀬遼一は最強の最愛です♡



年の瀬のご挨拶はスマスマ最終回が終わってから、涙を流しながら書きたいと思います(^_^;



ではみなさん、素敵なクリスマスをお過ごしくださいませ*\(^o^)/*