皐月
「今、お客様が退場のご準備をなさっているので、もう少しここでお待ちください」
先に退場した私と遼一さんは、ゲストの方々に渡すプレゼントを用意して下のフロアで待っていた。
とも
「皐月さん、私、本当に幸せです。もう何とお礼お言っていいのやら。」
遼一
「まーだパーティーは終わってないでしょうが」
とも
「そうなんですが、もう私胸がいっぱいで」
皐月
「喜んでいただけてうれしいですよ」
ゲストの方を待つ間、3人で談笑していたのだが…
とも
「あの…ゲストの方々は…」
しばらく待ってもなかなかゲストの方々が出てこないので不思議に思ってたずねてみる。
皐月さんが何かを答えようとしたとき、反対側の大きな扉がゆっくりと開いた。
とも
「ん?」
思わず遼一さんを見る。
すると、遼一さんは、私の腰に手を添えて、一歩前へ出るように促す。
わけがわからず、もう一度前を見ると、扉が開いて現れたのはノエルさんだった。
とも
「ノエルさん、今までどこに行って…」
そう言いかけた途端、私のすべての思考が停止してしまった。
一瞬、何が起こったのか分からなかったものの、すぐに状況を理解した。
胸が詰まって立っていられなくなり、その場にしゃがみこんだ。
色んな思いがあふれてきて、声をあげて泣きたいのに、胸がいっぱいでその声すら出ない。
そんな私を見た遼一さんが優しく私の手を取りゆっくりと立たせてくれた。
「もう泣かないで」
顔を上げると、声の主も涙を流していた。
そう、私の目の前に立っていたのは、大きなバラの花束を抱えた、私の恩師のお母さん、史子さんだったのだ。
とも
「史子さん…」
やっとの思いで声をふりしぼって、史子さんの名前を呼んだ。
史子
「驚かせてごめんなさいね。いつのタイミングならあなたを驚かさないか考えてたんだけど…いつ登場してもびっくりするわよね」
遼一
「このたびは、本当にご無理を言ってすいませんでした」
史子
「いえいえ。このようなおめでたいところにお招きいただいて、本当にうれしかったわ。世界的に有名なレーサーさんにお迎えに来てもらえるなんて思ってなかったし」
そう言って涙をぬぐいながら笑う史子さん。
ノエル
「最初から俺の仕事はともの大切なゲストを送迎すること」
とも
「ノエルさん…」
とも
「史子さん、本当に遠いところありがとうございます。今朝、遼一さんと2人でお墓参りに行って先生には報告させてもらったんですが、まさか史子さんが来てくださるとは思ってなくて、もう言葉にならないぐらい嬉しいです」
史子
「遼一さんからはずっと前からご連絡をもらってたのよ。パーティーから出席してもらえないかって言ってもらってたんだけど、最初はお断りしてて。すっごく嬉しかったんだけど、私はあの子の変わりにはなれないから、申し訳なくて」
遼一
「ともから、シンデレラの入社が決まったときもオレたちの結婚が決まったときも、史子さんに一番に報告したらすごく喜んでくださったという話を聞いてたから、どうしても来て頂きたかったんです。本当に無理を言ってすいませんでした」
史子
「ふふふ。無理だなんて。あなたの熱烈アプローチには負けたわ。ともさん、遼一さんは、本当に素敵な方ね。あなたのことが大好きなのね」
とも
「はい!本当に素敵な人と出会えて幸せです」
史子
「きっとあの子も喜んでいると思うわ」
そう言って大きなバラの花束を渡してくださった。
史子
「お2人とも本当にお幸せに。また日本に来たときは、ぜひ遊びに来てちょうだい」
とも
「ぜひ伺わせてもらいます。本当に遠いところありがとうございました」
遼一さんと2人で深々と頭を下げ、いつまでもその背中を見送ったのだった。
ノエルさんが史子さんを送りに行ったあと、皐月さんから、遼一さんがみんなに史子さんのことを相談してくれていたことを聞いた。
その話を聞いたみんなが、絶対にサプライズを成功させようと協力してくれていたのだという。
そのことを聞いて、また私は涙が止まらなかったのだった。
パーティーがすべて終了した夜、遼一さんが予約してくれたホテルに泊まることになった。
今日1日いろんなことがありすぎて、疲れているはずなのに、まだ興奮状態が冷めないでいた。
2人でお風呂に入ったあとも、ベッドでゴロゴロしながら今日の話をしていた。
「あそこまですごいパーティーになるとは正直思ってなかったわ」
「遼一さん、私ね、あのイギリスで式を挙げたとき、人生の中で一番幸せな日だと思ったんですが、今日も本当に幸せでたまりませんでした。みなさんにあんなによくしてもらって、感謝の気持ちでいっぱいです」
「あぁ。本当にいい日になったな」
「今日は何度涙を流したかわからないです。それにしても最後のサプライズだけは想像もしてなかったので、驚きました」
「絶対バレないように気を付けてたからな」
「遼一さんは、先生はもちろん、史子さんにも会ったことがないのにわざわざ連絡とってパーティーにまで呼んでくれて、もう胸がいっぱいになりました。ところで、どうやって史子さんの連絡先が分かったんですか」
「あぁ、お前のおかあ様や友達に聞いて調べてもらったんだよ。お前の一番の願いは叶えられないから、史子さんにだけはどうしても来てもらいたくて」
「遼一さん…もう、遼一さんに何とお礼を言ったらいいのか」
「…なぁ、とも」
「なんですか?」
「お前が一生オレにいじめられる覚悟ができてるように、オレも覚悟できてるから」
「遼一さん?」
「お前、正月オレに言ったよな。しわくちゃになってもずっとそばにいるから覚悟しろって」
「はい」
「お礼なんかいらない。だから…だから、しわくちゃになるまでずっと長生きしろよ」
その言葉を聞いたとき、遼一さんがどれほど私を思ってくれているのか、切ないほど伝わってきて今日何度目かわからない涙が私の頬をつたった。
そして、満面の笑みを浮かべて、
「はい!」
と力強く答えて、こう続けた。
「たとえ遼一さんが嫌だっていっても、びっくりするぐらいしわくちゃのお婆さんになってもずっと離れませんから覚悟しててくださいね」
すると
「よくできました」
と満足した顔で遼一さんが答えた。
そしてその瞬間、私の視界が反転した。
どちらからともなく唇が重なる。
お互いがお互いを心から欲しているのがキスから伝わってくる。
そのキスを合図に私たちの長い夜は始まったのだった――
駄文ですいません。。。
シンデレラファンの方々、イメージと違ってたらごめんなさい。
どうしても、ある方を思って書きたいと前々から思っていたのでやっと書けて良かったです。
これはある方にまつわる実話をもとに書いたフィクションです。
小説、漫画やアニメ、乙ゲにおいて「長生きしてほしい」と願う気持ちや、それを伝えるエピソードは今までにたくさん読んできましたが、私もある実話をもとに書いてみました。
こんな駄文に最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました!