翌日には帰院と言う日の午後、ノッポ先生に呼ばれ私は所長室へと連れていかれました。


苦笑いワードの所長さんが待っていました。  


必ず帰院前には所長さんとも面談のようなものがあると聞いていたので、それかと思っていたら


「松田さん、さくら学園には戻りたくないんだって?」


“聞かなくてもわかるくせに、意地悪な奴”

と内心思いながら、首を縦にふると


「俺は帰りたくないって子を無理矢理返すような鬼ではない」


そう所長さんが話し出したのです。


つい「えっ!」と声が出てしまいました。


《施設から家に帰ったとしても働かなくてはいけない。

でもその厳しさや大変さを知らずに帰すわけにはいかない。

それらは身を持って経験しなくてはわからないこと。

ここから“職場実習”に行くというのはどうだろう?

経験してからでも遅くないだろう?》


そう、所長さんからのまさかの提案に、ただただ驚くばかり。


どこに実習行くかとかはまだ決まってないから、決まるまでは引き続きここで生活して、決まり次第実習をスタートすると。


私は

「やります!!やらせてください!!」

そう伝えました。


所長さんが神様に見えました。


ノッポ先生も頑張ってくれたんだと思います。


私はこの頃確実に人に恵まれていて、私のことを真剣に考えてくれ応援してくれる人がいて、けして1人ではなかったこと、書いていて気付かされました。