梶谷さんは1週間に1日くらい来たらいいとこだったのに、私が来るようになって登校が増えたと、保健室の先生は喜んでいました。


ある日梶谷さんに

「彼氏いる?」

と質問された。


私はびっくりして首をブンブン横に振った。


それを見て梶谷さんは

「私いるよ〜」と自慢気な顔。


私がさぞかし羨ましそうな顔をしていたんでしょう…

梶谷さんは耳元で

「作り方教えてあげる」

と言うと、キョロキョロしながら学校のそばにある公衆電話に私を連れていき、手慣れた感じに番号を押していました。


私は全く意味がわからず、横で聞いていたら、電話口に出た誰かと話してるよう。


「ほらっ!話してみ?」

いきなり受話器を渡され“もしもし”とだけ言うと、相手は男の人。

意味わかんなくてつい切ってしまった。


「何やってんだよ〜!」と梶谷さんに怒られたけど、それが90年代よく耳にした“テレクラ”だとその時初めて知りました。


梶谷さんは彼氏をテレクラで見つけたんだそうで、フリーダイヤルの番号が書かれた紙をくれ「ここにかければ男がつかまる」と教えてくれました。


私は凄く興味を持ちました。

テレクラが悪いことだとか、どんなものなのかあまりよくわかっていなかった私。


その紙を生徒手帳に大切に挟んでおきました。