6月20日(木):

366ページ  所要時間3:25        図書館

著者48歳(1964生まれ)。雑誌記者。

「在特会」という名前は、知っていたが、下らない右翼系団体だろう、と関心を持てず放置してきた。今日たまたま、図書館で目にし、概略だけでも知れれば良いと思って手に取った。

 1ページ15秒を目標に、付箋を貼りながら流し読みした。2chの書き込みが、間違って集団化した勢いで外の世界に出てきた、という感じの想像していた以上に空疎で無自覚・無責任な団体だった。

 社会的に疎外された低学歴・不安定就労の人々による「承認欲求」がマイノリティ攻撃に転嫁した<団体による集団行動>である。彼らの発する差別的言辞は、背景にそれなりの思惟も覚悟も基礎的教養も全く存在しない。従来のルールを完全に逸脱した目立つためだけの検証なき過激?・破廉恥さであり、ブログ掲載を憚られる内容である。まさに、便所の落書き、パンツを脱いだ露出狂のような内容である。

それを支えているのは、社会全体のマジョリティの中に無自覚に薄く広がっている不安と差別感情である。非常に低レベルで底が浅い、スキだらけの露悪的顕示行動だけに、かえって草の根的で分厚い岩盤に支えられているようで、不気味である。

 著者の、取材能力は高いが、取材対象の在特会があまりにも愚劣で低レベル過ぎるので、本書の評価もあまり高く評価できない。

*在特会リーダー・桜井誠(偽名)の本当の名前は高田誠(1972年生まれ)。福岡県立中間(なかま)高校卒業。学校では、全く存在感の薄い存在だった。

*在特会とは、「在日特権を許さない市民の会」という名称で、「在日コリアンをはじめとする外国人が」「日本で不当な権利を得ていると」と訴えることで勢力を広げてきた右派系市民団体。インターネットの掲示板などで“同志”を募り、ネット上での簡単な登録ながらも会員数1万1000人を超える。朝鮮学校授業料無償化反対、外国籍住民への生活保護子宮反対、不法入国者追放、あるいは核兵器推進など、右派的なスローガンを掲げて全国各地で連日過激なデモや集会を繰り広げている。

*在日の“4大特権”とは:
①特別永住資格(当然の資格である!)
②朝鮮学校補助金交付(保障されていない!)
③生活保護優遇(こんな実態は存在しない!)
④通名制度(通名使うのは、厳しい差別のせいである!)  
※正直、すべてが全く無知でナンセンスな主張である!

*少し前、金(京都朝鮮第一初級学校OB、36歳)は雰囲気の良い小ぢんまりとした居酒屋を京都市内で見つけた。家族的な感じが気に入って何度か通った。店主と気心が知れたと思ったときに、自分が在日朝鮮人であることを告げた。すると、それを境に店主はどこかよそよそしい態度を取るようになったという。
ある晩、酒に酔った店主が急に「君ら、日本に住まわせてあげてるんだから、もっと日本に感謝した方がいいよ」と金に向かって言った。
「何も言えなかったですよ。店主は優しそうな人でしたし、けっして僕に敵対するような言い方だったわけでもない。ただね、考えてみれば、その主張は在特会とあまり変わらないでしょ。叩きだせとかゴキブリだとか、そんなことは絶対に口にしない優しい人ではあるんだけれど、僕は在特会よりも、この店主のほうが恐ろしかった。損な主張が日常会話のなかで、さらりと出てくるところが、なんともやりきれんのです」
おそらく在特会はこうした人たちによって支えられている。いや、当人に支えている自覚がなくとも、在特会の側は、自分たちに無言の支持が集まっていることを知っている。
たとえ在特会がどんなにグロテスクに見えたとしても、「社会の一部」であることは間違いない。彼らは世間一般の、ある一定の人々の本音を代弁し、増幅させ、さらなる憎悪を煽っているのだ。
在特会とは何者かと聞かれることが多い。そのたびに私は、こう答える。
あなたの隣人ですよ――。
人の良いオッチャンや、優しそうなオバハンや、礼儀正しい若者の心のなかに潜む小さな憎悪が、在特会をつくりあげ、そして育てている。街頭で叫んでいる連中は、その上澄みにすぎない。彼ら彼女らの足元には複雑に絡み合う憎悪の地下茎が広がっているのだ。
そこには「差別」の自覚もないと思う。引き受けるべき責任を、少しばかり他者に転嫁しているだけだ。そうすれば楽だし、何よりも自分自身を正当化することができる。
私も、それが怖い。いや、私のなかに、その芽がないとも限らない。在特会について考えるとき、私がいつもヒリヒリと胸が焼けるような感覚を味わうのは、私のなかの「在特会的なるもの」が蠢いているからなのかもしれないと思ったりもするのだ。364~365ページ


目次: ※ウィキペディアからコピペ
1.在特会の誕生
過激な“市民団体”を率いる謎のリーダー・桜井誠の半生
2.会員の素顔と本音
ごくごく普通の若者たちは、なぜレイシストに豹変するのか
3.犯罪というパフォーマンス
ついに逮捕者を出した「京都朝鮮学校妨害」「徳島県教組乱入」事件の真相
4.「反在日」組織のルーツ
「行動する保守」「新興ネット右翼」勢力の面々
5.「在日特権」の正体
「在日コリアン=特権階級」は本当か?
6.離反する大人たち
暴走を続ける在特会に、かつての理解者や民族派は失望し、そして去っていく
7.リーダーの豹変と虚実
身内を取材したことで激怒した桜井は私に牙を向け始めた……
8.広がる標的(ターゲット)
反原発、パチンコ、フジテレビ……気に入らなければすべて「反日勢力」
9.在特会に加わる理由
擬似家族、承認欲求、人と人同士のつながり……みんな“何か”を求めている