1月15日(日):

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最後まで読んで最初に出た言葉は「どうするのこれ…、こんなにしちゃって…、(これで、第四巻でどんな話になるの???)」である。半ば過ぎからは、どんどん転落の速度に拍車がかかって、主人公弓成亮太は堕ちるところまで落ちていく。  

同業他社の新聞記者や大学教授など様々な被告弁護の証人が立つ。強引な取材手法は、決して珍しくもなく、読者に代わって権力を監視する上で当然認められるべきである。表現の自由の本質は、むしろ受けての「知る権利」にこそあり、それは「報道の自由=取材源秘匿の権利」と深く関わるという欧米の法理論などが述べられる。
検察官を見下す外務官僚たちの不熱心さもあり、公判は弓成側に有利に推移する。
事件から1年10カ月後、一審判決 三木昭子、懲役六月、執行猶予一年。弓成無罪。→弓成、毎朝新聞に辞表出す。

一審判決直後に、週刊誌で「外務省機密文書漏洩事件 判決と離婚を期して『私の告白』」という三木昭子の独占手記が発表される。内容を読んだ俺の感想は「出ーたー!、やってくれちゃったよ…、これどうすんの…(ため息)」、法廷で弱者に徹し、死んだふりをして、控訴もしなかった三木昭子が、法廷外で、まさかの<復讐的虚言>を弄して、掟破りの週刊誌上判決を挙行し、弱者の立場から弓成を公開処刑してみせたのである。権力に全面的に降伏・服従した元外務省事務官三木昭子は、実は非常に自律した女性の(?)強かさと復讐心をもった魔性の女だったのだ。弓成にしてみれば、真後ろから、鉄砲で撃たれた様なものである。取材源を巻き込んだことに強い負い目を持ち、男のプライドに拘り、三木昭子を擁護する紳士的姿勢を堅持しようとする弓成がかなう相手ではなかったのだ。

控訴した検察庁が、本腰を入れて巻き返しをはかるが、読んでると、一審判決が有利と見えた。
弓成は妻子を東京に残し、別居して北九州の実家に戻り、父親の卸売「弓成青果」を手伝う。
高等裁判所:「裁判所が上級になるほど、裁判官の考え方は保守的になり、男女関係を古い観念で断じやすい傾向にある」
事件から5年後?、二審の高等裁判所 弓成、逆転有罪、懲役四月、執行猶予一年

最高裁は、原則、書類審査のみ。「最高裁裁判官が扱う事件は、弁護士より著しく多い。」東京の弁護士は多くて年に約35件で事件イメージは<人の顔>、最高裁裁判官は年に2000件を超し、事件イメージは<初めて見る記録書類>である。上告趣意書は、「万感迫るものがどんなにあったとしても、解りやすく、三十頁以内のものでなければ」ならない。

事件から7年後?、最高裁判所 上告棄却、有罪確定。。 弓成、「云い分あるが、さし控える」という所感のみ。

「まだ裁判を引きずっとるんか、人を殺めたわけでも、強盗に押し入ったわけでもなし、ゆうてみりゃ新聞と役所の内輪揉めみたいなもんやないか。」と叔父に叱責されても、立ち直れず。裁判で、最高裁まで闘い続けることの苛酷さ、それが人間の尊厳をかけた闘いであればある程、周囲の理解を得にくく孤独な闘いとなる逆説

◎事件から8年後?、北九州の実家の「弓成青果」も競争他者に吸収合併されてしまう。

◎10年後?、落魄して小倉競馬場に入り浸る弓成の姿で第三巻終わり。