「配信や中継は終了しました。ここからは未公開です」

「ここから先は、卒業ライブのDVDやブルーレイにも収録されません」

「これから歌う曲はCDにもデジタル音源にもなりません。配信もされません」

「今日ここにいる私たちと12000人のみなさんの記憶にだけ残る曲です」

「この日この時この場所で歌うために作られた、たった一度だけ歌われる曲です」

「そんな曲があってもいいと思います。私たちが歩んできて確かにここに立ったという証の曲」

「虹はいつか消えますが、記憶には残ります。どうか語り継いでください。あの日見たよと

「聴いてください。ファイナルナンバー『虹色ドリーミング』」


≪ドリーミング 七つの夢が一つになったから デコボコだって乗り越えられたの≫

≪ドリーミング みんなの夢が重なり合った時 それは星より大きくふくらむ≫

≪どんな夢でも君のおかげで 狙い撃てた魔法 ドリーミング≫

≪夢は虹色 どんな色にだって 光り彩りあざやかに輝く≫

≪今日の景色をどうか思い出して 君がこれから歩く道しるべ≫

≪迷い探し歩き疲れたら 見上げてごらん 虹色ドリーミング≫


≪ドリーミング 君の光が私を導く 鏡に映る銀河の恋人≫

≪ドリーミング 恋にさまよう魂が叫んで 君の声と共鳴していく≫

≪見つけ出してねたくさんの中 私のことを奇跡 ドリーミング≫

≪恋も虹色届いてこの想い 恋し憧れ抱きしめあいたい≫

≪今日の気持ちを絶対忘れない 君と再び出会えるその日まで≫

≪涙流し恋に疲れたら 思い描いて 虹色ドリーミング≫


≪君の愛が私を照らして 輝いていた ウィーワードリーミング≫

≪愛は虹色 愛し愛されて 光放って高く羽ばたく≫

≪今日も明日もこれからだって 君と私はずっ。といっしょよ≫

≪愛の心を見失ったら 見つめ直して 虹色ドリーミング≫

≪一つの虹が七つになっても 光り輝く 虹色ドリーミング≫


 ステージからはけた瞬間に杏花ちゃんが泣き出した。

 それが伝染するように、全員の心の水門が決壊した。

「やだよぉ。まだアリーナもドームも球場もホールも、出てないとこいっぱいあるじゃん。紅白だって出たいよぉ」

「…………」

「…………」

「……そうだね」

「…………」

「……虹はいつか消えちゃうの」

『そう。虹は期間限定なの。だから綺麗だし貴重な体験なの』

「この七人の道が一つになった時、たまたま虹みたいに見えたんだよ。この七人だからそう見えた」

「七人とドリーマーが集まったからここまで来られたんだよね」

「そんなの分かってるよぉ、この七人じゃなきゃダメだったんだって」

「アイドルでいえばやっぱり神7?」

「えー、私あそこまで輝いてないと思う」

「あと、ウルトラセブン?」

「ミオタン、ウルトラセブンはモロボシ・ダン一人だよ」

「えー、誰それ」

 みんないつの間にか笑顔になっている。

「もういっしょのステージには立たないかも知れないけど。私たちいつまでも友達だよね?」

「親友じゃない?」

「いや、永遠の仲間」

「結婚式絶対呼んでね。誰が一番早いかな?」

「そりゃ年齢的にいってミオタンじゃない?お相手もいるみたいだし」

「ええ?バレてたの?」

「そりゃ物販であれだけイチャイチャしてたら誰だって分かるよ」

「毎年チョコケーキでお祝いする七夕もあったしね」

「あたしは一番最後かな。子供は欲しいけど」

「子供が産まれたらママ友になろうね」

 コンコン……。

「そろそろ撤収するぞー」

「はーい」

「ねえ。七人で写真撮ろうよ」

「私のが一番画質がいいし、盛れるから私ので撮ろう。はーい撮るよー。えっ?そのポーズでいいの?いくよ。はい、リナチー」

 武道館を出ると道路が濡れていた。雨は止んだみたい。

 夜の冷たい空気が「もうすぐ冬が来ますよ」と教えてくれる。

 九段下の駅で東西線組と都営新宿線組に別れた。

 最寄り駅で一人になってふと思った。これからはこの道を一人で歩かなきゃならないんだなって。

 寒い。、明日から少し厚着をしよう。