鉱工業生産、11月は0.9%下落 3カ月ぶりマイナス | 元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

元世界銀行エコノミスト 中丸友一郎 「Warm Heart & Cool Head」ランダム日誌

「経済崩落7つのリスク」、
「マネー資本主義を制御せよ!」、
「緩和バブルがヤバい」、
「日本復活のシナリオ」等の著者による世界経済と国際金融市場のReviewとOutlook

「国家の盛衰を決めるのは、政治経済体制が収奪的か包括的かの差にある」(アシモグルら)

掲題の今朝の日経ウェブ記事。

ご参考まで。

 

なお、普段は前年同月比が「得意」なハズの日経記者が、

鉱工業生産に限っては、

なぜか前月比で記述するのは心強い一方で、

やや不思議でもある。

 

いずれにしても、経済指標は、

前月比でも前年比でも議論しないのでは

正確性に欠けるというもの。

 

ところで、日経平均株価は年末に向けて

バブル崩壊後の高値圏で

推移してきているのは周知の事実。

 

その根拠となってきているのが、

企業による強気の来期業績見通し。

 

しかし、今朝発表された足元の鉱工業生産、

特にその出荷をみれば、

11月に前年同月比でマイナスに転じてきているのは注目に値する。

 

(11月鉱工業生産は前月比-0.9%の減少、

前年同月比-1.4%の減少。

同月の鉱工業出荷も前月比-1.3%の減少、

前年同月比-1.5%の減少。

 

なお、2023年暦年と同年度における

11月までの鉱工業出荷の平均出荷は

前年比-0.5%と僅かながら減少を

記録してきている点も注目される。)

 

鉱工業出荷と企業業績との間には、通常

高い相関がみられる。

 

したがって、来期の強気の企業業績見通しは、

企業のアニマル・スピリットとして、

わからないものではないが、

少なくとも眉唾物かもしれない

といわざるをえまい。

 

企業や特に我が国の証券会社などは

来年度も大幅なドル高・円安を

期待し続けているのだろうか?

 

もちろん、景気刺激的な財政と

金融政策が継続していることに変りはないものの、

その持続性にはインフレ加速と資産バブル増幅という観点から

大いに疑問のあるところ。

 

なお、より深刻だと見えるのは、

設備投資の一致指標といえる資本財出荷も

11月に前月比-6.8%、前年同月比でも-5.9%という

かなりの落ち込みを記録したこと。

しかも、資本財出荷のかなりの前年比割れは

7月以降の5カ月連続の前年比でのダウン!

(事実、過去5カ月間で前年比平均-6.8%という

かなりの前年同月比割れ)

 

したがって、筆者がかねてから主張してきている、

10%消費税率と高インフレ税のダブルパンチ

(正確には両者の掛け算部分が加わることで、

トリプルパンチ)によって、

消費と(設備)投資の悪循環が生まれきており、

インフレとマイナス経済成長の共存から

日本経済はいつまでも抜け出せないとのシナリオを、

今朝の11月鉱工業生産速報値は

いみじくも裏書きしたとも言えよう。

 

b2020_202311sj.pdf (meti.go.jp)

 

 

 

経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(2020年=100、季節調整済み)速報値は104となり、前月比で0.9%下落した。自動車工業や電気・情報通信機械工業が振るわず、3カ月ぶりのマイナスとなった。

QUICKがまとめた民間エコノミスト予測の中心値は前月比1.7%の低下だった。28日の発表では全15業種のうち11業種が下落した。生産の基調判断は「一進一退」で、10月の表現を据え置いた。