ロシア侵攻の激戦地・ウクライナ南東部マリウポリの戦火から逃れ、愛知県小牧市で暮らし始めた30代の女性が、市役所を訪れ、山下史守朗小牧市長に近況を報告した。女性は「みなさんよくしてくれる。温かい思いをずっと忘れません」と謝辞を伝えた。

 「生きているだけでありがたい」。女性は日本国籍の父とフィリピン国籍の母の間に生まれ、日本国籍を持つ。ウクライナ人の夫と結婚し、2021年10月、マリウポリで暮らし始めた。だが2022年2月26日ごろから戦闘音が聞こえるようになり、砲撃で家が揺れる体験もした。

 その後、日本大使館に相談。幼いころ暮らしていた愛知県への避難を希望すると小牧市を紹介された。現在、市の宿泊施設で暮らしながらウクライナ中部に移った夫との再会を願う。

 「ひとつずつ頑張っていく。少し安心したら、ちゃんと仕事を見つけ、だんなさんをこちらに呼ぶ」

 市によると、ウクライナ国籍が避難民としての要件になっており、女性は日本政府からの支援メニューが受けられないという。山下史守朗小牧市長は「国の支援のスキームに漏れがある」と指摘。住居の提供や支援金は市独自で対応しているため、市は国や県に働きかけながら女性を支え続ける意向だ。女性は16日、市からの支援金16万円を受け取った。