SVGに関する調査結果を書きます。
そももはマイクロフトが「アイコン」という形でオフィス製品にSVGを取り入れたのは何故かという疑問が湧き、調べました。
理由はすごく簡単と推測していたのですが、かなり深かったです。
調査結果をまとめたのが以下の図になります。
オフィス及び図形の歴史
Officeは最初保存データとしてバイナリ(テキストとして見る事のできない型式)を採用していました。
パワーポイントの拡張子は.pptでした。
この時、「図形」はオートシェイプと呼ばれており、図形もバイナリの中に含まれていました。
(マクロではShapeとしてこの言葉が残っています。)
その後、オートシェイプはVMLというテキスト形式に変わりました。
VMLとはMicrosoft, Macromedia, HP, Autodesk, Visioの5社が提唱して定義した、ベクター図形用の仕様です。
型式はXML派生のマークアップ言語です。
XMLを説明すると長くなるので、HTMLみたいな言語と思って下さい。
そして、VML(テキスト)で記述すると、VMLを使用するパワーポイントなどのソフトが解釈し、図形に変換して表示します。
実際にはこんな感じで書きます。
赤色で塗りつぶされた楕円を描画するコードの例
<v:oval style="position:absolute; left:0; top:0;
width:100pt; height:50pt"
fillcolor="red">
</v:oval>
これはOffice XP(Office 2002)以前に行われた改良でした。
これはオープン化初期の流れで、当然のごとくAdobeやSunなど数社がPGMLという規格を出してきました。
この結果、オープンな規格として2001年にSVGが規定されました。
これを規定したのがW3Cである事に注目です。
W3CとはWeb技術の標準化を行う非営利団体です。
これは、この後SVGがWeb標準のベクター図形として利用できるようになった事を意味します。
一方Officeですが、データの型式がOffic 2007からOOXML(Office Open XML)になりました。
これが、パワーポイントの拡張子がpptからpptxになった理由です。
これはマイクロソフトがオープン化の流れに乗った形で導入されました。
オープン化する理由ですが、例えば、OfficeXP以前の状態でマイクロソフトが倒産したとします。すると、倒産前に他の企業が買い取らない限りOfficeのバージョンアップは無くなることになります。
で、その他の企業が独自にオフィス相当品を開発したとします。けど、MS-Officeが無くなっていますので、その仕様は独自のものとなり、以前MS-Officeで作られた膨大なデータは使えません。よって、重要な資料は別の製品で作りなおしという事になります。
こういった無駄な作業を無くすために、Officeのデータ構造を定義・公開して、別の製品に乗り換えられるようにしようとする試みがオープン化です。
オープン化により、Open OfficeやThink Officeなどの製品が作られました。
(実際にはOOXMLの設定前からその動きはありましたし、MS-Officeも2003ではXML型式で保存できたようです。)
この流れからすると、Office2007から図形の型式がSVGになってもおかしくないと思うのですが、マイクロフトはDrawingMLという新しい型式に変更しました。DrawingMLはSVGと互換性がありません。
私なりに理由を考えてみると、オフィスの図形は図形とテキストが組み合わさったものです。これはSVGの仕様に無いように思います。もしかしたら、SVGに移行する前のワンクッションとしてDrawingMLを作ったのかも知れません。
またSVGの話に戻りますが、2001年に規定されて、2005年にはFireFoxで表示できるようになっています。
しかし、当時主流であったIEでは表示できず、IE9(2011年)から表示できるようになりました。
IEではSVGが規定されてから実に10年かけて実装された事になります。
これはSVGがいまいち主流にならなかったという事も関係していると思います。
そんなSVGですが、Office 2016の追加機能として「アイコン」が導入され、そのファイル型式がSVGとなりました。
ここにきて、マイクロソフトがSVGを導入し始めたのです。
実際、グラフィックス系をやっていてSVGが増えて来たと思います。
「アイコン」と言えば以前はJPG,PNGなどで作っていたものが多かったのですが、2015年あたりからSVGを配布する際とが増えてきました。
マイクロフトもその流れに乗ったのか?と思いますが、実際にはハードウェアの性能が関係しているように思います。
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画像(ラスター図形)はビットの集まりであり、Windowsの基本機能であるため高速に処理ができます。
図形(ベクター図形)は計算によって画像を作るので、画像よりもハードウェアの機能を必要とします。
現状のオフィスでSVGを扱うという事は、DrawingMLとSVGの両方を扱う事になりよりハードウェアの能力が必要となります、
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これは聞いた話なので、実際どうか判りませんが、以前OS/2というOSがありました。
これはIBMとマイクロソフトが共同で開発していました。
しかし、Ver2まででマイクロソフトは開発を放棄し、Windows/NTを発売しました。一方IBMはそのままVer3を発売しました。
この理由なんですが、当時OS/2を動かすにはハードウェアの性能がまだ追い付いていないとマイクロソフトが判断したためだと言うのです。
もし、これが本当なら、マイクロフトはハードウェアがSVGを十分に使えるレベルに達するまで待っていたと言えそうです。
ここ数年で、メモリの標準搭載量は4Gとなりました。以前は2Gが標準だったように思います。
CPUはAtomであってもクアッドコアとなり、そこそこ高速に動作します。
HDDはSSDになり比べ物にならないほど高速です。(まだ値段は高いですけど。)
ではIEは2011年にSVG表示が実装されたのにオフィスには実装されないのか?
答えは、IEはブラウザーですから表示するだけです。オフィスはエディタなので編集します。この違いなのではと思います。
しかし、Office 2016に実装されたSVGの編集機能は「図形」ほどの編集機能はありません。せいぜい、色を変えるくらいです。基本的な扱いは「画像」です。ある意味、画像より編集機能は低いです。
Office2016のベクター図形という意味では「図形」と「SVG」が入り混じった状態です。
実際、色の付いたSVGを200個ほどパワーポイントのスライドに貼り付けて保存すると、私のPCでも「保存に時間がかかっています」表示が出るほど遅いです。(私のPCはCPU:Core i7,メモリー:32GB)
これは過渡期でしようがないのかも知れません。
今後のオフィスがどうなるかの予測
図形の型式がSVGになる可能性は高いように思います。
もちろん互換性のために「図形(DrawingML)」は残るでしょう。
しかし、SVGを標準形式にするためには先に述べた、SVGへのテキスト組込みが問題になります。
編集機能で何とかするような気もしますが。
SVGになった場合の編集機能ですが、最低限の操作は今と同じにするでしょう。
ただ、SVGの場合は多彩な編集が可能です。なので、従来の編集に加えて、高度な編集ができるようにしてくる可能性もあります。
あるいは、従来の編集のままで、高度な編集はAffinity Drawなどに任せるかも知れません。
今の図形(DrawingML)はファイル化できませんし、ファイル化できてもDrawingMLのエディタがありません。もちろんインポート機能もありません。
SVGになれば、外部のエディタで編集ができるわけです。
結論
ベクター図形の型式はDrawingMLからSVGになってゆくと思われる。
多分DrawingMLがSVGに変わっても最低限の編集操作は一緒だと思うので。今のまま編集テクニックを磨いても良い。
しかし、編集機能が追加になる可能性もあるので、Affinity Drawなどのエディタを購入し、高度な編集テクニックを身に着けておくといい事あるかも。
オチがいまいちですみません(^^;