源実朝は小野小町が野垂死にをして九相図にあるような野ざらしの死体になるまでを描いた絵巻物を「絵合わせ」で一位に選んだそうです。1千年前の人も、それより前の人間たちも残酷なものに惹きつけられる…その本能と、それを規制するいろんな機関の考え方など、読み応えある内容となっており、おすすめです!是非本屋でお手にとってみてほしいのですが、もしおいてなかったときはこちらからも購入できますよー(大宣伝すみません)
サントリー美術館 絵巻マニア列伝は後半に入り、展示替え、場面替えがありますので再訪しました。
特に場面替えでお話の続きが見られるのがとても楽しみです。
5 経光卿記(重文)
後堀河院直筆の日記。後白河院が蓮華王院に設けた宝蔵「蓮華王院宝蔵」に入って検分した時のことが記録されている。宝物は全て目録が作られ、絵巻物は内容物の記載のある櫃に入れられて保管されていたことがわかる。
7 伴大納言絵巻(複製)
なんと30億円という凄い金額で譲渡された出光の宝物。
前期では応天門が焼ける場面を、かなりの火力で描いた場面が印象的でしたが後期は火事を物見遊山で眺める群衆、そしてそれを逆側からこっそりとみる謎の男、天皇に「伴大納言の進言を鵜呑みにせず源信が犯人と決めつけるのは良くない」と諭している太政大臣、それを立ち聞きする謎の男と、スパイ映画的な展開の場面が堪能できる。物見遊山の人々の中には騒ぎに乗じて不埒な真似をしてる人もいるらしい。
9 病草紙 尻の穴のない男(重文)
他の病は実際にあるものがほとんどだが、尻の穴がなかったら、生き延びるのは不可能だろう。とても苦しそうに口から便を吐いている。かわいそうに、前世の業とはなんだったのだろう
12 病草紙 顔にアザのある女(重文)
不眠の女と同じく、やるせない、悲しそうな表情をよく捉えている。
17 狭衣物語絵巻断簡(重文)
戊辰戦争のとき、江戸城宝物庫から上野の寛永寺に疎開させていたこの絵巻物。しかし、上野戦争(1868.5.15)の戦火で灰塵に帰したものと思われたが奇跡的に絵巻の一部が助かり、6つに分断されてそのうち5幅は現在東京国立博物館の所蔵品となっているという曰く付きの絵巻。江戸時代の写本により内容はわかるが、異本も多い。
狭衣は才色兼備(とキャプションにあったけど、男性に対しておかしいよね)は兄弟同然に育った源氏の宮に結婚を迫るが拒絶され、心の傷を癒すためたくさんの女性と契りその女性方を不幸にする。出家を希望するも阻まれ、幸運が重なり天皇の位まで上り詰める狭衣だが、心の空虚さは埋まらなかった。
展示では、狭衣が管弦の遊びの際笛を吹くと余りの美しさに天稚御子がやってきて狭衣を天国に連れて行こうとするところでした。ギリシャ神話のような趣を感じます。
21 九相図
ホラー映画ライターのウチの旦那さんがみたら大喜びしそうな、野ざらしになった死体が動物に食われていく場面。
両目は食べられ赤い空洞となり、股の間から引きずり出された内臓が飛び出ていて、動物が貪っている。空には鳥が腸を持って羽ばたいている。おぞましい姿ではあるがこれが自然の姿なら自分も動物の糧となり、土となって植物の栄養になりたい…
24 春日権現絵巻
貧しい母子がお寺参りすると「出家する子は宝」といわれ、8歳の子をお寺に預ける。3年後、母は危篤となり、出家した子の姿がみたいという母の願いを叶えるため剃髪し会いにいくが時すでに遅し、母は亡くなり悲しみにくれる。一方母は閻魔大王の前にたどり着く。そこに春日大明神が現れ、この女を生き返らせるよう閻魔大王に宣託。3日後母は蘇る。そして3年生きたのち亡くなるが、残された子は僧侶となり毎朝夕法華経を唱えるのだった。
とても色鮮やかな絵巻で美しい。今回の場面は母がたどり着いた冥界に春日大明神が現れるところ。雲で顔は見えない。閻魔大王が、春日大明神に深々と拝礼している場面である。3日後に復活するというのがキリスト教っぽいなと思いました。