ミュージカルの踊り |   SHOWBOAT~舞台船~

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  役者として舞台を中心に活動している明石智水の仕事の事だったり
  日常の事だったり、考えていることだったり。。。徒然草です(*'‐'*)

英国の舞台系学校にいた時にMusical Theatre Repertoireというレッスンがありました。

選択科目だったんですが、他のクラスに比べて1、2年生合同レッスンも多めで楽しいクラスでした。

何をするのかと言うと、再演頻度の高い有名ミュージカルや、その時上演中のミュージカルの実際の振付を教わるというクラス。

1年生の時に2年生と合同レッスンでやったのは当時人気だった『Grease』の『We Go Together』と『Crazy For You』の『I Got Rythem』でした。

どちらも当時出演していた方や出演時にダンスキャプテンだった方が教えに来て、曲のアタマから終わりまで全員に役を割り振って作ります。

『I Got Rythem』はタップなので、1年生は必須科目にタップがあったとは言え、学校に入って初めてタップに触れた私のようなのは大変でした。

もう、それっぽくやってるけど鳴ってませんって感じでごまかしていましたが、銀のトレイを使っての振りはとても楽しかった。

『Grease』に関しては1年生だけのレッスンで『You're The One That I Want』や『Born to Hand Jive』も習いましたし、同じ頃2年生のクラスでは『Cats』の『Jericle Ball』をやっていました。


名作としては1年生のうちにコーラスラインとWest Side Storyは鉄板。

私が辞めた後、ジャズダンスのコースディレクターが、コーラスラインのオリジナルキャストだったバイヨーク•リーになった時期もあったので、この時期にコーラスラインを習った子達は正真正銘のオリジナル振付を習ったはず。

羨ましい!


教わるのは実際にウエストエンドの舞台で踊られている(もしくは踊られていた)振付です。

向こうはロングランが基本なので、舞台学校出身者は、既に本番の振付を踊れる状態で作品のオーディションに行くということになります。

この時点でかなりお得だと思うのですが、それ以上に人気作品の見せ場を、学年またいでみんなで作る時間はとても楽しく、とても印象に残っています。


特に『We Go Together』は歌も割り振られたパートで歌いながら。

男女で組んで順番に歌う


Ramma-lamma-lamma-ka-dingity-da-dinga-dong

Shoo-wop-sha-whada-whadda-yippidy boom-da-boom

Chang-chang, changity-chang-shoo-bop

Yip da dip da dip shoo bop sha dooby do

Boogity-boogity-boogity-boogity-shooby-do-wop-she-bop

Sha-na-na-na-na-na-na-na-yippity-dip-da-do


の部分を、誰と誰が組になって歌うのかとか、舞台ではここの最後に1人、ユージンと言うメガネの真面目くんキャラが立ち上がってノリノリで変な動きをしながら歌い出し、気付いたら皆が静かにユージンを見ていて、ユージンも気付いて「あれ?」となって歌い止め、「Sit down!」と言われて「Ok...」と静かに座るという場面が挟まります。

コミカルなシーンですが、このユージン役を誰がやるのかというのもクラス中がざわざわしましたし、歌詞の中の「Boogity-boogity-boogity-boogity」はネイティブにもとても言い辛く、確か2年生の先輩がやったと思いますが「全然言えない…」と涙目でした。

けっこう早口なので「g」をちゃんと言うと「t」が「d」になっちゃうとかするんです。

ちなみに私は、メインキャストが歌ってるだけの時にも後ろで踊ってるチアガールの一人をやったので、クラスの中でこの曲の振付を初めから最後までしっかり全て覚えている数人の1人だと思います。

途中からチアガールと同じ振りをメインキャストもやるのですが、そこはチアガールしか踊らないと思って油断していたクラスメイトや先輩が先生に

「はい、ここから先は後ろのチアガールと同じ振り。チアガールはさっきやった振り」

と言った時「どうやるの?」と焦っていました。

人が振り付けられている間、他人事だと思ってボーッとしてちゃいけない、と学んだ瞬間でした。




と言うわけで(どんなわけだ?)、私のレッスンでも自分が習っていて振り付けを知っている物はたまに扱います。

私のレッスンでは、ダンサーになるためのダンスレッスンではなく、役者として舞台の上で肉体をコントロールしたり、自分の立ち居振る舞いがどう見えているかを、感覚的に理解して動けるようになること、音楽性の向上を目的としています。

その上で、振付にキャラクターやその場面での心情表現が乗っているミュージカルナンバーの振付は、お芝居とリンクさせて学ぶ事が出来ます。


学校で習った『Tommy The Musical』の『Sensation』という曲があるのですが、これはウェイン•シレントーと言う振付家の振りで、主人公トミーのピンボールの才能を目の当たりにした周りの人達の驚きを踊りで表現しているので、「Wow!」とか「Oh my God!」といった言葉がそのまま伝わるアクションが振りに盛り込まれています。

実際習ってる時にも「ここはOh my god!」と習ったので、踊るときにも「Oh my god!」と頭の中で言ってました。

あまりにもその言葉にしっくりくる動きでした。

ちなみにこの振付家はコーラスラインのオリジナルキャストで、振付としては『Wicked』が日本では有名だと思います。


過去にレッスンではこの『Tomy The Musical』の『Sansation』、『Cats』の『Jericle Song』(ロンドン版)などを扱いました。

今月から久し振りのミュージカル振りとして『Grease』の『You're The One That I Want』を扱おうかと思っています。

この曲の振り付けは、ダンス経験者でも舌を巻くトリッキーな動きが登場するのが特徴で、リフトを含むパートナリングに入る前の振りに難しいテクニックは何一つ入っていません。

トリッキーな動きに関しては、私は今でも上手くできる自信がありませんが(なんなら当時見た舞台でも、途中で誤魔化しているダンサーがそれなりにいました(笑))、逆に大丈夫な人には、ダンス経験がなくても出来てしまったりする振りでもあります。

ミュージカルの曲でのダンスは、どんな場面でどんな役でもイメージしながらできるので、役者向けのレッスンにはとても合っていると思います。


たまにこんな感じで、自分が楽しかった要素をレッスンに取り入れたりしています。

「楽しむ」ということは学ぶうえでも大切ですしね。