歌って難しい…… |   SHOWBOAT~舞台船~

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  役者として舞台を中心に活動している明石智水の仕事の事だったり
  日常の事だったり、考えていることだったり。。。徒然草です(*'‐'*)

舞台の稽古が始まりました。
顔合わせ後、お稽古は歌稽古から始まりました。

今回はミュージカルなので。
↓↓↓

昔はキーボード持ってましたが、今はタブレットに入れたピアノアプリで音を取ってます。
便利な世の中になりました。

でも、なんだか未だにアプリのピアノに慣れず、軽いタッチで音は鳴るのに力入れて鍵盤を押さえちゃいます。
分かってるのにやっちゃう。。。

今回、自分の歌うコーラスパートが稽古まで分からないというのがあって、二声(主役のパートを入れると三声ですが)の部分を両方弾いてどちらも歌えるように音取りしていました。

ハモる部分の覚え方って人によって違うと思うんですが、私は自分の歌う音単体だけでなく、他のパートとの和音で覚えた方が入りやすいタイプ。
単音を拾った後に和音で覚えるんですが、こんな事をしてるため、好きでよく見ている『ハモリ我慢』で、メインメロディの方が釣られまくってるのに淡々と自分のパートを保ててるハモリの方々、尊敬します。
メインメロディを歌ってる人が派手にどこかに飛んていっちゃってる時は分かるんですが、少しズレた状態で、まるで移調したようにメロディラインを保って歌い続けてるところで正しい音を保つとか、私には絶対に無理。


私も若い頃は歌のレッスンを受けていたことがあるんですが、その中で最強に面白かった先生がいました。
その先生はミュージカルとクラシックを教えていましたが、ホワンとした緩めな感じのわりに生徒さんには劇団四季の、当時四季を観ていた人なら誰でも知ってるようなメインどころの俳優さんの四季入団前後を教えていたり、私が習っていた時には東京芸大の声楽科の方なんかも教えていました。

「劇団四季の○○くんって知ってる?いや〜、歌下手くそだったんだよね〜」

とか言ってましたが、四季を観てる人には有名な人過ぎて反応に困るという。。。

その先生のところでは毎年、発表会的にコンサートがあったんですが、元々が歌ではなくチェロの人だったせいか、伴奏がピアノだけではなく弦まで入った上に、弦の人にはN響の人までいたりして、クラシック曲でないミュージカルソングを歌う人には当たりが強くちょっと怖かったりしました。
そんなコンサートの楽屋で、当時芸大の大学院生だった方と私、後に劇団四季に行くことになった私と同じ年の子で

「今までに先生にやらされた一番おかしなこと」

という話で盛り上がったことがあります。

私の体験談は、

「右の鼻の穴からだけ息を吸って」

というものでした。
歌う前に息を吸った時に

「右の鼻の穴からだけ息が通ってない」

と止められ、そのセリフ。
左の鼻の穴を押さえようとしたら

「押さえちゃダメ」

ですって。。。
分かりますかね?
鼻の穴を塞ぐこと無く、右の鼻の穴からだけ息を吸うって言うリクエストの難しさ。
何度か繰り返した後

「よし、今入った!」

と歌わされ

「違い分かる?」

と聞かれましたが、全く分かりませんでした……

この「違い分かる?」には、右手の薬指パターンもありました。
歌ってる時に「なんか詰まってるな〜。手の指一本ずつほぐしてみて」と言われ、やったら右手の薬指で「そこだ!」と言われ、

「違い分かる?」

もうね、全然分からなかったです💦


なお、芸大の方の一番の面白体験は、その場で逆立ちさせられるというものだったそうです。

この芸大の方も面白い方で、テノールの歌手でしたが、「僕もミュージカルの歌を歌ってみたい!」と、ラ・マンチャの男の『The Impossible Dream』
を歌ったものの、「イタリアン語やドイツ語の歌詞なら慣れてるけど、英語は慣れてない」と最後まで歌詞覚えられず。。。
両手を広げて朗々と歌っていましたが、広げた両手の手のひらが自分の方を向くような広げ方で、手のひらにガッツリ歌詞書いてました。

この時の先生が本当に変わった人だと感じたのは、ある日いきなり歌を教えるのを辞めてしまったことです。

ある時、本当に突然に

「しきに興味あるんだよね」

と言い出し、

「四季?」

と思ったら、「指揮」でした。
「指揮の勉強するから歌はもう教えられない」
と……

確かにその少し前に、ピアノ伴奏をやめて生徒の歌を指揮し始めることはあったのですが。。。
ただ、先生の指揮は歌いやすく引っ張ってくれるものだったので、指揮者の重要性を感じる良い経験にはなりました。

本当に芸術家肌と言うんですかね、不思議な先生で、歌う時に伴奏を弾いてくれるんですが、前奏が終わって歌い出そうとした途端

「ダメだな。全然ノレてない」

とピアノが止まり

(え?まだ歌ってないのに)

と思っていたら

「あ、僕がね」

と自身のピアノへのダメ出しを始めてみたりと自由でした。

ロンドンにいた時にも、ここまで自由で不思議な先生には出会いませんでした。
イケボな笑い声が遠くから聞こえてきてすぐに「先生来た」と分かる先生はいましたが。

学校にいた時に最も面食らったのは、突然

「ドレミファソラシド ドシラソファミレドをクラシックとポップスで2種類歌って下さい」

と言われた時です。
今でもちゃんと出来る自信ありません。

歌って難しいですね。