今日は日曜日。昼近くに目覚めると、すでにtomolennonが出かける準備をしている。
「今日は日曜だから、まだ寝てていいよ」
寝起きでボケーっとしていたボクはそう言われ、お言葉に甘えて再び横になる。
結局それからまた2時間ほど寝てしまい、ボクは後悔した。
なぜ飛び起きて一緒に行かなかったんだろう。完全に起きた時には何をするでもなくポツンと部屋に居た。
4時45分、tomolennonから電話が入る。
「今日はあちこち写真を撮って廻っててさ。それと今晩、サエコが晩飯おごってくれるらしいから、何が食いたいか考えといて」
サエコさんはtomolennonの以前つきあっていた人で、彼女も今ニューヨークへ来ているのだ。
またしても大ラッキー。晩ゴハンにありつける。ん~、何にしようか。今日は寒いから鍋なんていかかでしょう?
tomolennonは12時前にココを出て、まずタイムズスクエア、ロックフェラーセンターへ。
5番街を下り、チェルシーそしてシーポートを経由してヴィレッジへ行き、そして5時を少し過ぎた頃、部屋に戻って来た。前々から言っているが、我々は一文無しなので、移動手段は徒歩しかない。
当然ずーっと歩いて廻っていた訳で、彼はボクが足が痛いのを知っていて誘わなかったのだ。優しいヤツだ。
「撮ってきた写真をパソコンの中に入れさせてよ」
tomolennonが言うので、パソコンを立ち上げデータを送り込む。
撮った写真の枚数およそ150枚。
地域ごとに建物やそこにいる人、服装なんかが違っていてとても面白い。
かなりの距離を歩いて、少し疲れている様子だった。
7時にサエコさんがやってくるまで、ボクは明日の予定をノートに書き出し、彼に確認をとった。
まるで、秘書かマネージャーのようだ。
tomolennon先生はその時、手相に夢中でらして徐に、
「ちょっと、左手見せてみ」と言う。
左手を出すと、彼は小冊子とボクの左手を交互に見てこう言った。
「ふ~ん、ナルホド…」
「何だよナルホドって!何か言ってくれなきゃわかんねーじゃん」
彼は笑っている。
そんなに知りたきゃ自分で見やがれと、その小冊子をボクに手渡した。
ボクは占いの類が好きだ。一時期、本気で占い師になろうかと思った事さえある。
真剣にその小冊子と自分の左手を見比べるが、ボクの左手にはやたら線があって
はっきり言って、どれがどれなんだかサッパリ分からない。
いつまで見ててもしかたがないので占いは諦める事にした。
待ち合わせの時間になったので、お迎えをするべくロビーで待機。
間もなくしてサエコさん登場。
サエコさんは土産としてタバコを2箱ずつくれた。
このスバラシイ贈り物に気をヨクしたボク等は彼女を部屋へ招待した。
「画家が住んでますって感じの部屋だねぇ」
そう言うと彼女は、タンスを開けたり流し台の方へ行ったりしてこの部屋を堪能したのだった。
それから我々は、20分ほど歩いて、セントマークスにある居酒屋へ。
明太子茶漬けに豚骨ラーメン、焼き鳥各種にブタキムチ。
今日初ゴハンと言う事もあり、もうサイコーにおいしい。
大勢のお客さんで賑わっていて席につくまで少々待ったが、待って食うだけはあるなと思った。
ペロリンコとたいらげ、食後のコーヒーが飲みたいって事で移動。
外は雪が降っていた。N.Y. の街並は雪がよく似合う。
顔を上げれば、街路灯の光の中に雪が舞って、なんともキレイだ。
ロマンチックな雰囲気に浸っていると、tomolennonが言う。
「おかわりコーヒーの出来るところへ行こう」
ブチ壊しだ。
我々は24時間営業のいかにも庶民的な店の前までやってきた。
外から様子をうかがっていると、どうやら肝心のおかわりコーヒーサービスはなさそうだ。
それでは意味が無いので、次にチョット古くさい感じのカフェに入る。
店員のおにいちゃんは何やら忙しそうで注文するのを少し待たされる。
5分程してようやく注文を聞いてくれた。
「コーヒーを3つね」
「コーヒーはやってないよ」
どーゆー事だ?カフェじゃないのか、ここは?
訳のわからん店を出た後、どうせおかわり出来ないなら、せめて美味しい方がヨイという事でスタバへ行く事に。
コーヒーを買ってもらい席へつく。
たわいの無い話をしていると、いつの間にやら話のテーマが結婚や恋愛の方向へ。
この中で結婚の経験がないのはボクだけだ。
「1度は結婚しといた方がイイよ」
「40くらいで結婚してない男は、絶対何か問題があるよね」
「籍入れなくても式だけ挙げればイイんじゃん?」
「ダメなら離婚すればいいしね」
など、経験者の方々は次々に結婚に対しての意見を重ねて行く。
ボクは、その昔1度だけ結婚しようと思った女性がいたが、いろいろな問題があって別れてしまった。
それ以降、結婚とは無縁なところで生活をしてきた。結婚したいと言う欲もない。結婚には何の意味があるのだろうか?
恋愛に関しても、あまり得意な方ではないので、誰かと長く付き合うのはボクにとっては難しい。
そんな話で盛り上がっていると、見るからに栄養満点な女性店員が
「あと15分で閉店です」
と言う。その、“あと15分”をしっかり過ごし、店を出る。
ボク等はサエコさんを駅まで送った。
「ごちそうさまでした」
声を揃えて、彼女にお礼を言う。ホント助かりました。アリガトウ。
チェルシーに戻り、tomolennonは絵の続きを描き始めた。
いつ見てもヨイではないか。
完成後に吹きつけるスプレーの臭いが部屋中を満たしていく中で、
ふと、彼は色を重ねて行く時、何を考え何を感じているんだろう?と思った。
ボクにはない独自の世界を持っているtomolennonに、嫉妬にも似た感情を覚えた。





























