野球をしていると、ピッチャーが投げたボールをキャッチャーがとれずに、ランナーの進塁を許してしまうという場面があります。
 このとき、ピッチャーの投げたボールが、キャッチャーがとてもとれないようなボールだった時は、ピッチャーのワイルドピッチ(暴投)となります。
 逆に、ピッチャーはちゃんと投げたのに、キャッチャーがうまく捕ってくれなかったという時はパスボール(捕逸)となります。
 このワイルドピッチとパスボールを合わせて、バッテリー・ミスと言ったりします。

 さて、対話はキャッチボールとよく言われますが、対話の中でも、当然ながら、バッテリー・ミスは起こります。
 この場合、やっかいなのは、ワイルドピッチなのか、パスボールなのかの判断が、野球以上に難しいことです。
 つまり、自分が発した言葉に問題があって対話とならなかったのか、それとも相手が受け止められないことが問題となって対話にならなかったのか、さらには投げた自分にも、受け取る相手にも問題があって対話にならなかったのかもしれません。

 相談援助の場に身を置いていると、何か相手に問いかけたのだが、相手がうまく答えられなかったという場面に出くわすことがあります。その場合、「何かうまくいかなかったなぁ」とだけとらえてしまうのでは、次の成長にはつながりません。
 この場合、自分の問いかけが相手にとってはワイルドピッチだったのか、相手のパスボールだったのかをしっかりとらえようとすることが大切になってきます。
 そうすると、自分の問いかけがどのようなものだったか、つまり、自分の投げたボールのコースをしっかりとらえておくことが大切です。
 こんなことを日々考えているわたくしです。

 では、対話の中で、自分の問いかけがどのようなものだったかをとらえるのにはどうしたらいいのでしょうか? 
 特に相談援助の場に身を置くようになり始めたビギナーはどのようにすればよいのでしょうか?

 今日、とある場面で、このような内容の問いかけをされたわたくしなのでした。



 そこでわたくしは、このようなことを伝えました。
 質問するという場合、その質問には、「開かれた質問」と「閉じられた質問」があるのです。
 「開かれた質問」はOpen Questionといい、相手に応答の内容をゆだねる質問です。
 例えば、「今日の具合はどうですか?」、「このことはどんなふうに思われますか?」といったものです。

 「閉じられた質問」はClosed Question といい、「はい」「いいえ」で相手が答えられるような質問のことです。
 例えば、「今日の具合はいいですか?」、「このことは悲しく思われますか?」といったものです。

 開かれた質問は相手の応答の自由度が高い質問です。
 そのため、相手は自分の考えていること、感じていることなどを自由に語ることができるので、相手の世界をそのまま聴くことができます。
 一方、閉じられた質問は、相手の応答の自由度が低い質問です。
 そのため、相手にとっては問いかけられた内容に対する応答の選択の幅が狭くなってしまいます。また、多用すると、相手は問い詰められているようにも思ってしまうことも少なくありません。

 こうしたことから、一般的には、相手の思いや考えを引き出したり、相手のことを深く理解したいという場合には、開かれた質問を多く用いる方が良いと言えるでしょう。
 しかし、相手の緊張度が高かったり、拒否的な場合、また、相手に言語化することがあまり期待できない場合などは、開かれた質問はなかなかうまくいきません。
 例えば、こんなやりとりが起こってしまいます。
 私「今日はどう?」、相手:「別に」
 
 そのため、こうした場合は、閉じられた質問によって、相手が答えやすい関係性を築いていき、徐々に開かれた質問を使っていくということが必要な場合も多くあるのです。
 このように、開かれた質問と閉じられた質問のどちらが一方が良いと言うものではありません。
 では何が大切なのでしょうか?
 それは、自分が相手に質問しようとするとき、そこで問いかけたい事柄の内容、相手の状況、自分と相手との関係性などのデータをきちんととらえた上で、「開かれた質問」とするのか「閉じられた質問」とするのかを自分なりに判断していくことだと考えています。