イメージ 1

先日、レコード芸術1月号の中のジャニーヌ・ヤンセンのインタヴューが載っていて、ヤンセンの演奏に私はとても好感を持っていますので、読んでみました。

すると、大変興味深いことを彼女が言っていまして、それは私も去年の2月に書いたブログ記事と似たような内容のものでした。

「シャコンヌは人生のようだ」と。

彼女は、オランダのある作家がそう話していたと語っていて、私はヘーバルト先生がそのような内容をレッスンでお話しくださったことから、下記の解説を当時(2008年1月ごろ)書きました。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

バッハ(1685~1750)は無伴奏ヴァイオリンのためのソナタを全部で6曲、1720年ごろ、つまり35歳ごろに作曲しました。(ソナタを3曲と、パルティータを3曲。)どの曲も、ヴァイオリニストにとっては必ず勉強しなくてはならない、そして生涯、勉強するたびに新たな発見に出会う喜びを見出す、立派な作品であります。パルティータは、各曲に踊りの形式を名づけた組曲で、舞曲の順番は決まっています。
このパルティータ第二番は、全曲を通して、始まりにD-Cisというバスに当たる音が共通しているのもバッハらしいです

まず組曲のはじめに置かれますのは、ドイツ風のという意味を持つ、16分音符が滑らかに連続してつながってゆく、繊細な4拍子のアルマンドで、これは行列踊り、つまり、前の人の腰に手を当てて、つながって踊るものでした。(と、私の桐朋時代、末吉先生のバッハの授業で先生がおしゃっていました。)ですからあまり速いテンポではありません。

次は三連音符と、はねるリズムとの関係がユニークな、走ると言う意味の3拍子のクーラント。

ゆったり堂々と、威厳を持って歌う、アリアのような王侯貴族のための踊りの3拍子のサラバンド。

軽快なテンポの非常に速い6拍子のジーグ。

そのような順番で通常のパルティータは終わりますが、この曲は最後に、これだけでも独立してよく弾かれる、シャコンヌが置かれています。ジーグで徐々に気持ちを高揚させ、この曲集の頂点であるシャコンヌへと向かうのです。

厳かに登場するこの曲は、最初に奏でられる重厚なテーマを次々と変形させて、いくつものヴァリエーションから成り立っています。ときに、それは厳しい付点音符の連続であったり、軽やかな、細かな音のつながりであったり、華やかなアルペジオであったり、夜空の星の輝きの調和であるような幸福感あふれる長調にかわったり・・・いろいろなリズムや表情の七変化で、ヴァイオリンという、不思議な魅力の詰まった楽器の最大の可能性を引き出します。
全体は大きく3部に分かれますが、それはまるで、わたしたちの人生を凝縮したかのような内容です。私はもう、この曲の持つ高貴で偉大なる精神に、ただただ、ため息です・・・。

多くの作曲家が、この名曲を他の楽器でも弾けるように編曲(たとえば、ブラームスがピアノ曲にしたり)しましたが、その気持ちも分かります。そして、コンサートやコンクールでも、シャコンヌだけ単独で演奏されるほど、多くのものの心を魅了する、バッハの作品の中でも、名曲中の名曲です。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は、ヤンセンの記事を読んだあと、ヘーバルト先生とお話ししたくなりました。もしかして、先生もそのお話をお読みになったのかと。

答えは、「いや、知らないよ!」でした。

先生のバッハのレッスンは毎回素晴らしく、深く、哲学的で、私は非常に感銘を受けます。
先生の演奏もそうなのですが、しっかりした様式感のなかに自由があり、音楽の魂が輝いていて、そのバランスが大変に素晴らしいと思います。
 
そして、あの気品と格調の高さ。

誰もがまね出来る演奏ではありません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

去年を振り返ると、私はシャコンヌで年を始め、シャコンヌで年を終わらせていました。

昨年末、28日に憧れのヴァイオリン、1748年の J・B・グァダニーニでバッハを録音してみて、最後にシャコンヌを弾いたからでした。

今、その音源を聴いてチェックしていますが、一年という歩みを感じ、感無量・・・。

シャコンヌの本番がある前は、必ず何かしらハプニングがあり、私はその都度たくましく乗り越えてきました。ありえない精神的ハプニングも経験しました。だから、今の私には本番前に何が起きようと、緊張はしますが、動揺することはないでしょう。

そして私はその都度、このバッハの音楽を演奏することを通して、偉大なる不思議な力によって自分自身が癒されていったのでした。

まさに、そういった意味で人生の歩みを感じる、人生そのもののシャコンヌ。

バッハの音楽が私たちに与えてくれる力は素晴らしい・・・!

グァダニーニの響きも素晴らしくって、この元から楽器が持っている。美しい深みのある豊かな音色にシャコンヌの響きが非常に良く合っていました。
この香り高い気品あふれる奥行きのある音色は、私の楽器からはどう努力しても引き出すことの出来ない音色です。
惚れ惚れしてしまいます。

時期はまだ分かりませんが、そのうちに、パルティータ第二番(このシャコンヌを含めた全曲)と、ソナタ第三番の無伴奏の夕べをウィーンで弾くことになると思います。

ソナタ第三番も、私はシャコンヌと同様に、深めていきたい作品です。

次回、日本での4月のリサイタルで演奏出来ることを、大変嬉しく思います!