では、その次はローベルト・シューマン(1810~1856)の後期の傑作、ヴァイオリン・ソナタ第二番ニ短調、作品121の解説を、私流のものですが、ご紹介させていただきます。

このソナタは、シューマンが41歳のときに作曲しました。シューマンは、ヴァイオリンのためのソナタを全部で3曲作曲していますが、この第二番はシューマンの後期の中でも、独特の憂いと限りない情熱を込めた大変優れた作品で、彼の霊感とファンタジーあふれる素晴らしいソナタです。
この曲の少し前に作曲した第一番のヴァイオリン・ソナタも素敵なソナタなのですが、シューマン自身はあまり満足せず、それでこの第二番に取り掛かかりました。タイトルも「ヴァイオリンとピアノのための大きなソナタ」とつけたほど。意気込みのすごさを作品からも感じ取れます。

第一楽章「かなり遅く」。
重厚な和音の響きで決然として始まります。これがこの楽章を貫くテーマとなるのですが、それに引き続き、ヴァイオリンがモノローグのように物語を静かに語り始めます。ピアノはそれに対してうなずいて、物語をヴァイオリンから、もっと引き出すように支え、サポートします。
さあ、ここから始まる「生き生きと」!ヴァイオリンは冒頭の和音をテーマのメロディにして情熱を込めて歌い、しかしピアノのシンコペーションは不安を隠しきれません。弾いていても、ぞくぞくします。シューマンのほとばしる熱い思いは止まることを知りません!一度この情熱の魅力に触れ、心を奪われると、計り知れないパワーを秘めたこの作品のとりこになってしまいます。

第二楽章 「とても生き生きと」。
狩のようなリズムの、シューマンらしい、勢いの良い躍動感あふれる楽章です。途中に二度にわたり、素敵なおとぎ話を聞かせてくれます。最後は花火のように重音を鳴り響かせ、華やかに締めくくり、次の楽章へ。

第三楽章「静かに、そしてシンプルに」。
雰囲気はがらりと変わって、繊細な、優しい響きを求められるこの楽章は、まるで天使の歌のようです。しかし、途中の第二楽章を思い出させる対照的な激しさは、シューマンの心の寂しさの訴えかもしれません。それでもまた、再びなめらかに天使の歌を歌い、第二楽章の思い出も、遠くに遠くに消えてゆき・・・

第四楽章 「動きを持って」。
にすすみます。これもまた、内なる炎が熱く燃えるとても情熱的な楽章です。常に変化していく16部音符たち。次に何が起こるのか、その変わり方に、どきどき、はらはら、目を見張ってしまいます。最後に長調になるコーダが、また素晴らしい。この瞬間を待っていましたとばかりに、夢と希望を高らかに歌い上げ、燃焼しきって、確信に満ちて物語りは終わるのです。

・・・このように、遠い過去の時代のこの音楽に、今現在、演奏をとおし、楽譜のままでは紙の上の芸術である音楽に、新たに命を吹き込むことができる - この素晴らしい精神を蘇らせることが出来ることは、この上ない幸せと、使命感を感じます。
音楽は魂を豊かにし、喜びと希望、勇気と励ましを与えてくれるのです。この天からの贈りものである幸せを、皆様と分かち合えることができる・・・その喜びは何にも変えがたく、それこそ、私が演奏家であってよかったと思えるときでもあるのです。
私たちの演奏を通して作曲家の精神がよみがえり、正しくをそれをお伝えできるよう後残りの5週間、真剣に作品に取り組みたいと思います。