卵子凍結を終えて | 前田智子オフィシャルブログ「t-made」Powered by Ameba

卵子凍結を終えて


先日Instagramで

「卵子凍結の道のり」と題した記録をアップロードしました。


皆さんからのコメント、リアクション、ご質問、ありがとうございます。


まだご覧になっていない方は

考えの種にどうぞお役立てください。

卵子凍結の道のり


私はAMH値が7.42

7以上は多嚢胞性卵巣症候群の疑いがあり

近々に産む予定がないのなら早く凍結したほうがいいのではと言われました。


37になる歳。

計算上、一人授かるのに12.1個の卵子の凍結が必要だそう。(目安)

何人子を持ちたいかなんて今聞かれてもわからないから、「できるだけたくさん確保したい」という気持ちと

自分の体力やスケジュール、

そして経済的な負担も考えて、

妥協案は2人分の計算にあたる24個。


私がお世話になったはらメディカルクリニックでは

私年齢で24個の凍結は

およそ56万円弱の費用がかかるという計算でした。

(事前に金額のシミュレーションできます)



隠していないし、

ご存知の方も多いと思いますが

受精卵を凍結していたパートナーと昨年、事実婚を解消しました。


受精卵凍結を終えた時点で、産みの苦しみはまだ未体験でも、

ホルモン注射や採卵の痛みを経験したからか、自分の卵巣や卵子を目にしたからか、

「親になる未来」を強く望むようになりました。

楽しみでした。


だから一番辛かったのは、受精卵を破棄すること。

産まれてくる命が争いのもとにならぬよう

離婚や死別の際は、凍結した受精卵を破棄する決まりなのです。


さてそこで、「なぜ卵子凍結を選択したのか」


卵子を凍結したからといって

妊娠、出産が確約されるわけではありません。

まだ知れぬ副作用があるかも知れない、と心配する声もあります。


それでも凍結に踏み切った理由は、

「卵子凍結を後悔しないか?」と、

とある方にいただいた問いに答えると自ずと伝わると思います。

あえて、その時の回答を極力編集せず掲載します。




結論から言うと

卵子凍結をしたことに後悔は今後一生ないと思います。


まず卵子凍結説明会前の私は

「これだけお金をかけても、もし劇的な出会いが卵子凍結直後にあったら?」

「結局自然妊娠で子供を授かったら?」などと考えていました。


受精卵凍結の時点で、卵子の加齢のことをしっかり学んだはずなのに、人というのは都合よく希望的観測をしてしまうものなのですね。(それが力でもあるけれど。)


だから説明会で改めて卵子の加齢と妊娠の関係性をデータで目の当たりにし、例え思ったよりも近い将来に誰かと出会い婚姻関係になったとしても、一番安心な選択は凍結したなるべく若い卵子を受精させることだという結論に達しました。


どんな別れも精神的に疲弊するもの。

正直、事実婚解消からまだ時が経っておらず、思った以上にパートナーを探すことに気持ちがついていかない状態、つまりは後ろ向きな状態です。親になりたいと強く思う一方で段々とその兆候は色濃くなっています。

ちょうど今回の採卵周期直前は、

「早く相手をみつけなきゃ」という焦りがあるけれど、だからと言って無理矢理に心を仕向けることはできず、抱いていたのは焦りを通り越して絶望に近かったようにも思います。


「やっぱり卵子凍結をしよう」と決めて、気持ちはとても楽になりました。


一度現実に引き寄せた「親になる」という夢。

以前よりもリスクが高まった年齢で再び遠ざけられたからと言って、

自分で動かぬまま恨み言を言う未来は絶対に避けたかったのです。転んでも起き上がれる機会をくれたのが卵子凍結だと思います。


東京都の助成金を待つかということも考えましたが、万が一、と思うと怖くって、1周期(1カ月)でも待つのは嫌でした。


蓋を開けたらお陰様で順調でしたが

いざ受精という段階まで、つまり今はまだ本当のところ順調だったかどうかはわかりません。

だからやっぱり手放しには安心できないのが現実です。

それでも、万が一、と心配しながら

それを見えない聞こえないように自分を律しながら過ごすのとは、ココロの重さも未来の明るさも全然違って感じられています。



東京で生まれ育ち、今福岡でも生活をしてみて、

やはり東京の物価の高さは異常です。

自分一人の生活だけでいっぱいいっぱい。同じことを多くの女性が、きっと男性も、考えているに違いありません。

特に女性は妊娠すれば休職期間がどうしても必要になります。仕事を休む、戦線を離脱する、そんなことをしたら暮らしていけないし、帰る現場がなくなってしまう。子供を養える未来は想像できませんでした。

東京に暮らすからと言って、イキイキ働いている誰もが高所得だったり、自分の収入を気にしなくて生活できる立場にあったり、安定収入があるわけではありませんし、自営業は先の見通しがなかなか難しい。そのことにやっと東京都が気づいてくれたのだと思います。


まだ

「産みたいかもしれないけれどよくわからない」

「親になることもアリだとは思っている」という女性たち(かつての私)を支援できなければ、少子化に歯止めはかかりません。

だから私は、東京都の助成金にも賛成です。


何もせずにただ待っているのはとても不安。

得体の知れないものもとても怖い。


卵子凍結は

自発的にできること

自分のカラダを「見る」こと。


不安ででも前を向いて今あることに一生懸命取り組みたい自分に、自分がしてあげられること。


白黒はっきりつけられなかったら、

今母親になることを選択できないのなら、

それは無責任。

だから親になる資格がない、

と無意識に自分でも、周囲からも、みられる気がします。


でも、先延ばしにすること、白黒つけないことは悪いことではないと思うのです。

結論を出せないことを抱えたまま、時に天気に考えを左右されながら、考え続けて生きるのは、ネガティブケイパビリティという人に備わった本来の力ではないでしょうか。


ただ生殖機能に関しては明確なタイムリミットがあるのも現実。女性の歳はただの数字ではありません。

だから「先延ばし」にできる卵子凍結、受精卵凍結は、

ある意味とても自然で、とても人間らしいと思います。



今回の採卵に向けて、

スケジュールを何度も練り直し、ご迷惑が掛からぬように組んでいました。

が、

そう思い通りにはならない。

生理が予想よりかなり早く来てしまったお陰で、事前準備もなんのその。

改めて電話をかけまくり、謝り倒し、

マネージャー達にその場で相談しながら

なんとか採卵周期を先延ばしせずに済みました。

ありがとうございました。


生きるか死ぬかではないけれど

来月ではなく

「今」じゃなきゃいけない事

わかってもらえるだろうか

伝わるだろうかと悩みました。


多くの方が同じ悩みを抱えていることでしょう。

もっとストレートに、当たり前に、

堂々と言えるようになったらいいな、と思います。


皆さんにお願いしたいのは、まず知っていただくこと。

そして

カラダのつくりやお仕事の環境や、求める人生の違いをちゃんと認めて

若いからとか、いい歳してなんて言わずにインクルーシブな

そんな社会を一緒に作っていきませんか。


男性にも

女性にも

子どもにも

親にも

あなたに幸あれ。