米ナスダック市場が活況だ。今週、アマゾン・ドット・コムやフェイスブックが上場来高値を付けるなど、新型コロナウイルスはどこ吹く風。関連の上場投資信託(ETF)には資金が流れ込み、世界の主要指数の中で突出して上げている。ただ、急ピッチな上昇でIT(情報技術)バブルといわれた2000年以来の過熱信号も点灯している。

21日の米株式市場ではアマゾン株とフェイスブック株が連日で過去最高値を更新した。ダウ工業株30種平均が一進一退なのを尻目に、この2カ月ほど右肩上がりで推移している。

IT企業は対面のサービス業や製造業と比べ、コロナの打撃を受けづらいとの期待があるのが背景だ。強力な金融緩和で世界のリスクマネーは再び膨らんでおり、IT株はその受け皿して一気に資金が流入している。ダウ平均は昨年末より14%低いが、ナスダックは4%高く、米国内ですらその格差は鮮明だ。

ただ、急激な上昇で過熱シグナルもともっている。ナスダック総合指数をS&P500種株価指数で割った値だ。足元は315%で、00年3月以来の高水準となった。00年3月といえば、ナスダックが当時5000台を付けたネット株バブルの頂点だ。目先の収益よりもインターネットの将来期待が過剰に膨らみ、その後に崩壊した。

この比率はここ数年、投資家のリスク許容度を測る指標にもなってきた。アップルやアマゾンは収益力やブランド力が突出している反面、上昇局面でも下落局面でも値動きは株価指数より大きくなりやすい。リスクを負ってでも積極的に値上がり益をとろうとする投資家が増えればこの比率が高まる傾向があった。

言い換えれば、この比率の上昇は投資家心理が強気に傾いていることを示す。たとえば16年半ばや18年末に株価が大きく調整したときもこの比率は数カ月かけて大きく上昇していた。いまの局面も投資家はかなり前のめりになってきている。コロナ流行の再拡大や米中対立の激化という事態に陥れば、相場は打たれ弱くなっている可能性がある。

鍵を握るのはETFだ。ETFによる大手IT株の保有比率は年々高まっており、株高局面でも株安局面でもETFの売買が株価形成に大きな影響を与えるようになっている。一方向に資金が動くと、それに向き合って売買する投資家が少なく、価格が振れやすい構造になっている。

4月以降はナスダック株を投資対象とするETFへの資金流入が強まっている。最大の「インベスコQQQ」には年明けから110億ドルの資金が流入し、5月には純資産が1000億ドル(約10兆7千億円)を突破した。株高に乗り遅れまいとする個人投資家の買いは続いている。

ナスダックブームはどこまで続くのか。5月に入り、市場ではこの議論が熱を帯びている。値動きやPER(株価収益率)でみると過熱感は確かに強い。だが、政府と米連邦準備理事会(FRB)は経済や市場を壊さぬよう異例の規模で対策を進めており、経験則が通じない局面でもある。

「今回は違う」。この言葉が出るとバブルは終盤に近いということは歴史が示す。ブームとバブルは紙一重。危うさもはらみながらリスクマネーのナスダックへの流入が続いている。