■ WTI原油先物価格は4月20日に史上初のマイナス圏へ急落

■ 先物取引特有の要因があり、現在の期近物の取引最終日である5月19日辺りも要注意か

 

 4月20日、WTI原油先物価格(期近5月物)が史上初となるマイナス圏で終了した。5月物の取引最終日だった21日を前に買い手が反対売買を行い、売りがかさんだことが1バレル=マイナス37ドル63セントまで急落した主因とみられている。新型コロナウイルス感染防止で多くの国で外出制限が行われるなど、極端に経済活動が低下するなか、3月6日に石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成するOPECプラスの協議も不調に終わり、原油は需給バランスが悪化している。ただ、OPECプラスの協調減産体制が崩壊した後も、WTI原油先物価格は1バレル=20ドル辺りでは下げ渋っていた。20日の急落は厳密にいえば、原油そのものの価格下落だけではなく、先物取引特有の動きに増幅された部分が多い。WTI原油先物取引の参加者は原油の実需に基づいて売買を行っている業者だけではなく、機関投資家の存在感も大きい。今回は5月物の買い手が清算日の原油現物引き取りを回避するために、ぎりぎりで反対売買(この場合は売り)を行ったことが暴落の引き金を引いた模様だ。世界的な供給過剰でWTI原油先物取引の現物受け渡し場所であるオクラホマ州クッシング周辺の貯蔵施設の空きが既に限られ、実務家も現物保管が難しくなっていることが背景にある。さらに、米国でWTI原油先物に投資する上場投資信託(ETF)が個人投資家の人気を集めていたことが今回の急落に拍車をかけたとの見方もある。

 4月12日にOPECプラスは5月からの日量970万バレルの減産開始で最終合意している。新型コロナ関連の経済活動への制限を緩和する国も出始めており、5月には原油の需給が改善してくるとの期待はある。また、トランプ米大統領は貯蔵能力の限界が近づいている米石油会社に対して国家戦略備蓄施設を貸し出す意向を示しており、保管場所の問題も若干ながら緩和する可能性がある。ただ、WTI原油先物は、現在の期近6月物の清算日が5月22日、最終取引日は3営業日前の19日になるが、この辺りで再び売りが優勢となる可能性がある。投資家心理悪化による株価への影響も含めて注意が必要だろう。