中国に「第2の衝撃波」 生産現場に迫る供給網寸断・外需落ち込み。

経済活動が徐々に再開しつつある中国で、生産現場が新たな打撃を被っている。新型コロナウイルスの感染拡大が欧米に移り、海外からの発注取り消しや支払い遅延などが相次いでいるためだ。感染封じ込め対策から経済の再起動へシフトする中国にとって、正常化への道のりは険しい。

　国内は復旧相次ぐ

　中国は初期の封じ込め対策が比較的奏功し、新たな感染例が極めて少なくなり、企業の業務も再開され、先行き見通しも明るくなりつつある。中小企業の景況感は過去最低を記録した２月から回復し、ブルームバーグが追跡している８つの指標をまとめた指数も改善した。

一方、中国の生産現場がようやく復旧し始めたこのタイミングで、新型コロナ感染拡大に伴う欧米諸国の一連の休業措置が受注に影響している。中国の山東磐古実業で輸出責任者を務めるグレース・ガオさんには、先週から既に注文の先送りや、別途通知するまで製品の出荷を保留したり、最大２カ月の支払い猶予を求める電子メールが海外取引先から相次いでいる。

　同社は金づちやオノなど工具を製造し、うち６０％が欧州向けだ。ガオさんは４月から５月の販売は前年同期から最大４０％減ると見込む。

「先月は予定通りに製品を納めることができるか心配になって問い合わせてきたのは取引先の方だったが、今ではわれわれが受注通りに製品を届けていいかと尋ねるようになっている」と話した。

　生産活動の復調を目指す中国経済にとって、こうした状況は深刻なリスクとなる。李克強首相らは支援策も講じているが、民間エコノミストによる経済成長率見通しの下方修正は続いている。すでに１～３月期の経済成長率は１９７６年以来の低成長が見込まれている。

　発注キャンセルの嵐

　オーストラリア・ニュージーランド銀行（ＡＮＺ）の●兆鵬エコノミストは「中国経済にとって間違いなく第２の衝撃波だ」と指摘。新型コロナの世界的な拡大で「寸断されたサプライチェーン（供給網）、外需の落ち込みという２つの経路で中国製造業に影響する」との見方を示す。本土企業にとっては発注取り消しや物流をめぐる不透明感、支払いの遅れが目下の頭痛の種だ。（●＝刑のりっとうがおおざと）

　繊維産業で有名な紹興市柯橋区の工場は注文キャンセルの嵐に直面している。現地調査によると、今月に工場が再稼働して以来、同地区の企業の約７８％の受注が減少し、６５％が一部の注文をキャンセルされた。

各国の封鎖措置が広がり、物流の停滞や発注側の支払い遅延が相次ぎ、特に手元資金に乏しい中小企業が逆風にさらされている。台州市の自動車エンジン部品メーカーの輸出マネジャーであるジャニー・チョウ氏は「輸出の準備が整った後でも製品を保管する必要がある。銀行が閉鎖され、自宅待機を余儀なくされる中で、取引先は期限内の支払いができない」と説明した。

中国商務省は一部の輸出注文取り消しを認めており、税金還付措置などを通じ輸出業者を支援すると表明している。また、当局は主要な貿易国での企業の倉庫建設を支援するほか、通関手続き合理化を進める計画だ。

マッコーリー・グループの中国担当チーフエコノミスト、胡偉俊氏は「輸出やサプライチェーンにとって最悪期はこれからだ」と指摘。「中国の輸出は通年で１０％、あるいは恐らくそれ以上の減少になるかもしれない」とコメントした。