8月19日に「全県地方議員会議」という
埼玉県の共産党議員が集まるお勉強会に参加してきました。
そして
「行政のデジタル化と自治体が抱える課題」
というテーマの講義を受けてきました。
講師は日本共産党の衆議院議員の塩川鉄也先生です。
結論から言うと、これはつまり
企業が儲けるために国や自治体の持っている個人情報を
企業の求めに応じて渡しちゃうよって話で
そのために行政をデジタル化して
アナログ媒体をなくしていくよってことです。
紙媒体も対面窓口もなくすようです。
行政機関にお務めの人がたくさんリストラされます。
そして
行政はデジタル化したらカスタマイズはなるべくしないで
「システム的に無理」といって住民要求を退けるつもりのようです。
そういう事ができるような法律が束で通っていて
これからエライことになるぞ
という事を教えてくれる講義でした。
それじゃ詳細(長文)行ってみましょう~~
「行政のデジタル化」をめぐる動き
2013年のマイナンバー法を始めとして
安倍・菅政権は「データ活用」「デジタル・ガバメント」を
成長戦略の柱として推進してきました。
マイナンバー法とは複数の機関が保有する個人情報を
同一人物の情報であることを確認するための基盤づくり
行政が保有する個人情報の連携基盤をつくる法律です。
つづいて
2016年に官民データ基本法で
データを利活用することを本格的に打ち出しました。

そして
2019年のデジタル手続き法では行政手続きにおいて
アナログと対面を減らしていき
デジタルを基本にすることにしました。
そして個人情報保護法の規制緩和を推進しました。
原則として本人の同意のない第三者提供や目的外利用
必要以上の個人情報収集は認めなかったのに
「匿名加工情報」という新たな制度を設けて
この原則を骨抜きにしてしまいました。
「匿名加工情報」とは自由に利活用することを目的として
特定の個人を識別することが出来ないように個人情報を加工した情報です。
これならいいでしょ?とばかりに「匿名加工」によって
本人の同意なしに第三者提供や目的外利用が行えるようになり
個人情報「保護」法が個人情報「利活用」法になってしまいました。
2021年には「デジタル関連法」ができました。
「データが競争力の源泉」だとして
個人情報の利活用を国の成長戦略として位置づけ
国内で一番個人情報を持っている
国、自治体などの行政機関は企業からの注文に応えて
個人データを企業に利活用しやすい仕組みをつくり
企業が利益を上げやすくすることを目的とする。
そのために行政のデジタル化を行い
紙媒体から電子媒体へ替えていき
文書・事務手続きの標準化して
ネットワークへの結合(情報連携)をすすめるのです。
岸田政権のデジタル化もこの延長線上にあります。
デジタル田園都市国家構想 略して「デジでん」
これは、地方創生にデジタル化を被せたもので
デジタルインフラの整備とICT公共事業の推進をします。
デジタル臨時行政調査会 略して「デジりん」
これは
アナログ規制の撤廃を目指します。
目で確認しなければならないとする規制や
常に専門の担当者を置かねばならないとする
安全のための規制が緩和される恐れがあります。
今年の12月までに自治体向けのマニュアルをつくるそうです。

画像(デジタル臨時行政調整会「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン(案)について(プレゼン資料)2022.06.03より」)
2021年1月~2026年3月の間には
「自治体DX推進計画」と言って
自治体が取り組むべき計画を、総務省が策定します。
狙いは
①自治体の個人のデータ活用推進
②地方行政への民間参入
③自治体リストラの推進
地方行政のデジタル化とは
4つの仕組みと問題点があります。
①国・自治体の情報システムの集約・共同化
(ガバメントクラウド)
②マイナンバー制度の拡大
情報連携・マインバー制度を利用した行政手続きのオンラン化
③個人情報保護法制の一元化、
自治体が持つ住民の個人情報のオープンデータ化
④公務・公共サービスへの民間参入の拡大
①国・自治体の情報システムの集約・共同化
(ガバメントクラウド)
(1)基準に適合した情報システム利用を義務付け
昨年できた「デジタル社会形成基本法」で
「国と自治体の情報システムの共同化・集約の推進」を規定。
「自治体情報システム標準化法」では自治体について
国が定めた標準化基準に適合したシステムとすることを義務付けています。
埼玉県には20市町村の入った自治体デジタルクラウドがありますが
2025年までにガバメントクラウドに移行しなければならないのです。
画像(デジタル庁HP「地方自治体によるガバメントクラウドの活用について」より)
(2)カスタマイズ抑制による自治体独自の施策・住民サービスの後退の懸念
国は情報システムの共同化(ガバメントクラウド利用)にあたって
ノンカスタマイズ(仕様変更しない)を徹底すると掲げています。
つまり
自治体は国が作る鋳型に収まる範囲の施策しか
行えないことになりかねません。
(3)自治体独自施策の維持・強化を
国会で付帯決議もでています。
地方公共団体情報システムの標準化を契機として、上乗せ給付などの地方公共団体独自の施策が廃止・縮小されることのないよう、地方公共団体情報システムの機能等について、当該施策を継続するための改変・追加が行えるようにするともに、当該改変・追加に要する経費について必要な財政支援を行うこと
衆議院総務委員会2021年4月15日
参議院総務委員会2021年5月11日
②マイナンバー制度の拡大
情報連携・マインバー制度を利用した行政手続きのオンラン化
(1)個人データのさらなる集積、利活用へ
政府は「利便性向上」をアピールしながら、
マイナンバーの情報連携とマインバーカードの鍵機能を使った
マイナポータルを入り口とした情報連携によって、
個人データをさらに集積しようとしています。
3つあってややこしいですが
マイナンバー(個人ID)
マインバーカード(IDカード)
マイナポータル(ポータルサイト)ですね。
マイナポータルは政府が運営するオンラインサービスで
国民一人一人に用意されたネット上の窓口のようなもので
行政機関からのお知らせが届き、
個人から行政機関への各種手続きや申請も行なえます。
(平成29年11月本格運用開始
令和3年11月15日時点で利用登録者808万人)
一瞬、便利でいいじゃないか!と思ってしましたが・・
マイナンバーそのものの利用拡大には法改正が必要ですが、
マイナポータルを利用した情報連携の多くは
法改正なく進めることが可能です。(なんてこった!)
マイナポータルの情報連携は、行政だけでなく民間サービスも含めて
進められています。
マイナポータルを通じて、行政の個人データが
民間で利用されるのではないかという懸念があります。
政府はマインバーカードの普及促進と一体に、行政手続きのオンライン化を進めます。
デジタル手続き法(2019年)で、自治体にもオンライン化の努力義務を課しました。
システム移行経費に対する補助は国費で行います。(10/10)
マイナポータルに自治体システムとの接続機能を実装し、全ての自治体の情報システムとマイナポータルの接続を実現し、マイナポータル「ぴったりサービス」を活用した申請手続きのオンライン化を進めます。
画像(内閣府「マイナンバー社会保障・税番号制度 概要資料」2020年3月)より
(2)マインバー制度の問題点そもそもマインバー制度は
経団連などの財界の意向を受けて、「税と社会保障の一体改革」の下
国民の所得・資産・社会保障給付を把握し、
国民への徴収強化と社会保障費の削減を進める仕組みとして作られました。
政府は、マイナンバー制度によって
「公平・公正な負担と給付」の実現を掲げていますが、
企業の優遇税制は聖域にしたまま、消費税増税を前提にしています。
消費税の殆どは社会保障に回されず、大企業減税の原資になっています。
デジタル関連法案には、本人同意による個人の銀行口座等を
マイナンバーと紐づける法律やマイナンバーとともに
銀行口座をマイナポータルに登録すれば
災害・感染時に支給される公的給付金を
受け取ることができる法律も含まれていました。
すでに社会保障や税や災害分野に限定していたマイナンバーの適用範囲を拡大する法案が準備されています。
「本人同意」による医療や教育の個人データ集積、企業の利活用を広げる動き。
個人データが本人の不利益となる利活用につながる恐れがあります。
個人の黒歴史など本人でも忘れてしまいたい事がいつまでも蒸し返される
「デジタルタトゥー」が増えるかもしれません。
行政手続きのオンライン化を口実にした住民サービスの後退
前橋市では「マイタクシー」制度の申請に当たって
紙の手続きを取りやめ、マイナンバーカードのみとしました。
デジタル化による「業務効率化」に伴う人員削減(自治体リストラ)の危惧
政府は、マイポータルの活用で行政窓口をなくすことを狙っています。
2018年7月の自治体戦略2040構想研究会第二次報告では
「半分の職員数でも担うべき機能が発揮される
スマート自治体への転換」を目指す。とあります。
行政手続きを早く便利に簡単にできるデジタル化は良いですが
選択肢の一つにしておいて人間の相手は人間であってほしいです。
AIだけでは的はずれな回答や複合的な相談内容に対応できないです。
あくまで職員の補助手段としての活用にしてもらいたいです。
デジタルは停電や水没に弱いです。
災害時を考えてもアナログ対応は
できるようにしておいたほうが安心です。
個人情報保護法制の一元化
民間・行政機関・独立行政法人をそれぞれ対象にしていた3本の個人情報保護法を統合。地方自治体・地方独立行政法人の個人情報保護制度についても統合後の法律で共通ルールを規定。全体の所管を「個人情報保護委員会」に一元化されます。
行政機関と同等の規律が自治体にも適用され
個人情報保護委員会が示したガイドラインに基づき運用されます。
現行の条例は不要となり、今後は法律の範囲内で必要最小限の条例が認められるだけになり、新たに条例を制定した場合は個人情報保護委員会への届け出義務があります。(なんてこった!)
自治体に関しては、条例に寄る自治体独自の個人情報保護措置を制限し、オンライン結合(情報連携)を認めず、匿名加工情報制度に基づく提案募集を都道府県と政令市に義務付け、これによりオープンデータ化を推進するのです。
自治体にある個人情報は公権力が集めた情報です。
手厚く保護されなければなりませんが
これを民間と同じ程度の保護で良いことにしようとしています。
プライバシーの侵害の恐れは大いにあります。
自治体デジタル部門への
民間人材の登用による官民癒着の懸念
非常勤職員や業務委託契約のスタッフの場合、
地方公務員法が適応されないので公務の公正性が確保されないです。
神奈川県ではLINE社の執行役員をパートタイムで
最高情報責任者兼最高デジタル責任者に任用しました。
福山市では最高デジタル責任者に富士通の現役社員を
業務委託契約で就任させています。
兼任であっても企業からもらう報酬が多ければ
企業のために働くことになりかねません。
さんざん問題点、懸念点ばかり上げてきましたが
それに対していかなる取り組みをすべきか・・・
ちゃんと講師の先生は教えてくれました。
「政策目的」である「個人情報の利活用」よりも
「権利保障」である「プライバシー保護」が優先されるようにする。
もともと個人情報保護条例案の検討にあたっては
国の個人情報保護法制を上回る条例の内容が
後退することのないよう働きかける。
匿名加工情報制度は
プライバシー侵害や技術的な対応能力が欠けている点など
慎重な対応が求められる。
匿名加工手法の検証や加工結果のチェック
提供後の事業者名の公表などを条例で規定する。
官民癒着の監視、告発、是正の取り組みをする。
デジタルに係る幹部職員、専門職員は
「任期の定めのない常勤職員」として採用し
「全体の奉仕者」として職務に専念できるようにする。
議員向けの講義だったのでこういった内容になっていますが
皆さんは行政のデジタル化の恐ろしさを知って
周囲の人に話して下さい。
多くの国民が知るだけで違ってくる筈です。