私が20代の終わりに初めて地元福岡を離れるとき、沢山の仲間たちが門出を見守り見送ってくれた。
いつもの酒場にみんながいて、タカヒトがギターを片手に「上を向いて歩こう」を歌ってくれた。
みんなが何も言わず、ただただ見つめてくれた愛の溢れる瞳を思い出す。
私はその思い出の歌を、旅の間で何度も歌った。
そして支えられてきた。
あのとき、どうして旅に出たのかなんて、今も誰も訊かない。
そんな優しさが有り難かった。
もう二度と福岡には戻らないつもりで、だけどどこか片隅できっとすぐ戻るだろうと思っていた。
あれから何年経っただろうか。
私は今もまだ道の途中で、風の吹くまま歩いている。
旅の果てに辿り着いた海辺の田舎に腰を据えて2年が過ぎた。
みんなの笑顔が、歌が、沢山の思い出が急に蘇ってきて、少し恋しくなった。
そんな潮風の香る夏の夜。
写真は20代の終わり当時、福岡空港にて。
旅立つ私を友人が撮影してくれたもの。
抱きしめたくなるほどに懐かしい。
2020.6.28 23:02:00