ちょうど2年前の今頃、2017年の11月に私は湯シャンを始めた。
オーストラリアに来てから9か月目のことだった。

その当時、私はオーストラリア南部のタスマニアという九州くらいの大きさの島に住んでいて、映画「Captain Fantastic -キャプテン・ファンタスティック-(放題/はじまりへの旅)」に出てきそうな家族とコミュニティで暮らしていた。

庭に組み立てたティピの骨組みに半分だけ目隠しをして、バスタブに水を溜めて火を起こし、朝晩とお風呂を沸かしていた。

パパのウォーリックさんはそれを「温泉」と呼んで、5歳の息子タカもその「温泉」が大好きだった。
その頃の私はいかに身軽に生きていくかを考えていて、極力荷物を減らしたかった。
それまで出逢った周りの人々もお湯だけで髪を洗っていたけれど何の匂いもなく、艶のある健康な髪をしていて、ずっと自分も始めたいと思っていた。

ちなみにママのワカさんは身体も石鹸でゴシゴシ洗ったりしないと言っていた。
「出てくる垢はどうするんですか」
と、訊いたら
「潤いだと思って押し戻す」
だそうです。
う、うっ、潤いですか。なかなかの強者。私もまだまだだな。と、そのとき自分がこれから歩もうとする道のりの長さを悟った。

それまでも一応、気を使ってオーガニックのシャンプーを使ってはいた。
ただ私の腰まである長い髪は、湯シャンを始めた当初は本当に大変で、いっそのこと頭を丸めてしまおうかと思うほど苦労した。

湯シャンの基本はブラッシング。
とにかく櫛で髪を梳かすこと。
しかしこれがなかなか大変で、最初はお湯で洗えば洗うほど髪がきしんだ。
竹でできた櫛は折れてしまうんじゃないかというほど、頭皮から出てくる皮脂に空気中の塵や埃がくっついて、灰色のワックス状の固まりとして櫛にこびりついていた。
本当にこの状態から改善されていくのだろうかと、半信半疑のまま、櫛だけではなく心も折れそうになる日々が続いた。

普段は帽子をかぶって、髪の毛に汚れがつかないようにし、たまにシャンプーや石鹸を使った。すると頭がぐっと軽くなってスッキリした。
シャンプーを使う頻度をどんどん減らして、一年くらい経った頃、気が付けばとても調子が良かった。湯上がりの後も髪の毛が早く乾くようになった。


そして、そのときとても自然な流れでドレッドロックスを結っていこうと決めたのだった。

 

つづく

 

 

写真は2017年12月タスマニアにて。