昨年刊行された友川カズキの自伝的エッセイ「友川カズキ独白録: 生きてるって言ってみろ」。その際にプロモーションの一環で作成された「友川カズキの酔眼レコメンリスト」を小出し15回に分けてご紹介いたします。本人の推薦コメント付きです。

 

 

■『友川カズキの眼』(書籍編)その①

 

[私を“犯した”15冊の書籍:面白過ぎて競輪場では読めません]

 

西村賢太『疒の歌』(新潮社)


西村賢太は人災だ! 図抜けたマグマの質量

「彼に関しては、芥川賞を獲る前から『凄い作家が出てきた!』って方々でしゃべってね、小さい旗振ってたんですけどね。『どうで死ぬ身の一踊り』や『暗渠の宿』、『小銭をかぞえる』辺りもおすすめですが、この『疒の歌』ではついにというか、田中英光のことにも真正面から触れていて。いや、主題どうこうより、作家の質というのかな。持ってるモノ、向かってくるモノが違うんだな。抱えたマグマの質量がとんでもないのよ。オレが死んじゃう前に彼にはどんどん書いて欲しい」

 

 

 

■『友川カズキの耳』(音楽編)その①

 

[私を“冒した”15枚の音盤:遊蕩詩人のサウンドトラック]

 

DUKE JORDAN『Flight to Denmark』1974 (Steeple Chase)


タクシードライバーにもなった伝説のピアニスト

「上野の池之端にあった『イトウ』ってジャズ喫茶でさ、デューク・ジョーダンのこのアルバムをリクエストしてみたことがあってね。でっかいスピーカーがあってさ。そこで爆音で聴いて、陶然としたのを覚えてるな。家でもLPでよく聴いていたし、洒脱というか軽妙というかね。柔らかくて、重苦しくもないし、ボーッとしながら聴くには最高なんですよ。彼がある時期ホームレス同然の日々を送っててさ、街でタクシードライバーやってたってエピソードも、なんかいい話だよね」

 

 

続く