私は何もよりも、とりあえずそのJemが私の顔を覚えていたという事実に驚いた。彼は私の斜め後ろに立って、私とパソコンの画面を交互に覗き込んだ。
「何してるの?」
「化学の復習」
「わあ、難しそう…というか、これ全部日本語だね」
「うん、日本語で読んだほうがよく理解できるから…」
たわいもない会話を交わした後、私はさらにこう続けた。
「ねえ。今度こそ遊ぼうよ!あさっては私の誕生日なんだよ」
「えぇっ、そうなの、それは何かするっきゃないね!」
「ホント?!一緒にどこか行ける?」
「もちろん、行こういこう!あとで電話するよ」
そういえば後々にわかったことだけれど、出会ってからほんの少しで「どこか遊びにいかない?」という話題が持ち上がるときは、たいていの場合「脈あり」である。つまり、その彼は私に一応興味がある、ということだ。デート、という言葉がでてくることはなくても絶対に気がある。
Jemに出会ったころはそんなこと知らなかったけれど、今思えばJemに「どこかに遊びに行こうか?」と初めて言われたのは出会ったその日だったっけ。しかもあとでJemが言ってくれたことだけど、Jemが私に声をかけたのも、わたしがホットだったから、らしい。ホットっていうのは…つまりはJemは私がかわいいと思った、っていうこと。お褒めの言葉、どーもありがとう。
そうして私に、出会ってから1ヶ月してやっと初めて遊びに行けるという大いなる期待を抱かせたJemだったんだけど。Jemからの電話をまつ私に、彼が電話をかけてくることはなかった。まだほとんど彼のことも知らなかったから、そんな彼を理解するのはすごく難しかった。裏切られた、という気持ちだけが私の中で大きくなった。