昔、一匹の犬がいました。


名前は「さくら」


僕が1歳くらいの冬に、家の玄関の前にぽつんと座っていたという(父親の証言)その小さな犬は僕の妹みたいな存在で共に貧しい時を過ごし成長していった生涯忘れることのできない犬でした。

その犬はスピッツの一代雑種でそれはそれはかわいい顔をした犬でした。


その犬も僕が中学1年生の頃に亡くなりました。フィラリアでした。享年13歳。


朝起きると玄関で横たわり、ハァハァと苦しそうにしていました。僕の母親は「学校にいきなさい。さくらはお母さんが診るから!」と僕を学校に送り出しました。その日はたしか土曜日で午前中の授業だったから、授業が終わってダッシュで家に帰りました。


しかし、時は既に遅くその犬は天国に逝ってしまっていました。母親の涙溢れた顔が今でも忘れられません。


母親からは、その犬は「ずっとお父さんが仕事から帰ってくるのを待っていたようで、車の音がするたびにがんばって首をあげていたよ。最後はきれいな顔で、ゆっくり大きく息して目を閉じて逝ったよ」と聞かされました。


僕は冷たく固くなったその犬を抱きしめて泣きました。


その日、一家5人の夕食は誰も一言も話すことなく、そして、近くの山に埋めるべく花束を買いに行き、父親と姉と弟で山に登り必死に穴を掘りました。みんなで泣きながら花束と供にその犬を埋めました。


それからの1週間は学校でも誰とも話すことができないくらい(話すと泣き出しそうだから)落ち込んでました。


放課後の野球部室でも先輩から「お前、なんでしゃべらんとか!おい!」などと怒られたりするくらいでした。その時は1つ歳上のキャプテンがすばらしい人で「こいつ飼っとった犬が死んだらしいけん、そっとしといたれ」と助けてくれたことを思い出します。


いかん!!この文章はやばいっ・・・今、ものすごく泣きそうになっている僕・・・続けます。


この犬との想い出は僕にとって誰がなんと言おうと一番大事な想い出です。

この犬は

一、顔はかわいい

二、頭はいい 

三、ものすごくやさしい

 (僕が親に怒られて泣いているときはいつも涙を舐めて拭いてもらっていました。)

四、おしとやかで気品がある

五、いろんな人から可愛がられて超有名である


などなど完璧な犬でした。

僕は、中学生の時、将来結婚して、子供ができたら(もちろん女の子)絶対に「さくら」という名前を付けようとずっと考えていました。僕の兄弟はみなそう思っていたようですが、僕が早い者勝ちで命名権を獲得いたしました。

友達やいろんな人から、「さくらちゃんは8月生まれなのになんで「さくら」なん?」とかよく聞かれ、僕も馬鹿正直に「死んだ犬の名前なんよ」と答えていました。

すると、ほとんどの人は「そんなんいけん(駄目という意味)やろ~子供がかわいそうやん」とか、かなり言われました。


正直 「なぁ~にぃ~くらっそ!きさぁ~ん」と思いましたよ。


しかし、これは僕の問題だ!と毅然とした態度で反論しました。


子供の名前はみんなそれぞれの想いがあって決めてるやんか!


真心をもった子になってほしいから「心」とか、雪のように美しい子になってほしいから「雪美」とか、みんな何かをイメージして決めてるやんか!


俺は昔飼っていた犬のように、可愛く、賢く、みんなに好かれ、やさしい子になってほしかったから「さくら」と名付けたんや!!と。

大抵の人は「ふ~ん」といった感じで、熱く語る僕を冷めた目で見ていたようです。

でも、嫁と嫁の両親は僕の話しにもちゃんと耳を傾け理解してくれたので、長女には「さくら」と名づけることができました。

そういうわけで、「さくら」という特別の想いとともに長女を立派なすばらしい大人に育てることをここに誓います。

ちなみに漢字で「咲里」と書きます。里に咲くかわいい花のように、毎年咲く桜の花のように、いつまでもきれいな子に育っていてほしいと、この漢字は嫁が考えました。


ついでに、「花の命は短い」というけれど、桜の木は人間の寿命より長く、いつまでも美しい花を咲かせることができます。


次は次女の名前の話しを書きますね。