市川中車様 ❤ 《 瞼の母 》十二月鑑賞記録 | 「日々の固執」

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― 十二月大歌舞伎 ―
第三部

瞼の母
二幕五場


ー 番場の忠太郎 役 ー






《 序幕  金町瓦焼の家 》

舞台は、市川中車様 演じる番場の忠太郎 さんの弟分、金町の半次郎の家屋とその庭先にての幕開けどす。

夕暮れ時。
時折庭先のセットの花木から花が散る演出があり、叙情さと実世界の様なリアルさが生まれていました…


半次郎と、その母と妹との一悶着が終わった後、下手から三度笠をかぶられた中車様 が静かにご登場どした !!拍手

垣根門前へ悠然と歩み寄られ、貫禄たっぷりに三度笠をを脱がれました !!






忠太郎 さんは、五歳で母と生き別れ、さらには十二歳で父を病で亡くし、天涯孤独の身となり、十三歳から江戸へ出るも、父母のいないその生き辛さからヤクザな街道に身をおくこととなった男。

その風情を見事放たれていらっしゃる中車様 ドキドキ
また惚れましたよ 恋の矢恋の矢恋の矢


悠然と髪を直され、弟分の半次郎を訪ねてきた忠太郎 さん低音の落ち着いた抑揚ある声色で第一声を放たれました

時折、喉にひっかけるようなしゃがれ声も交えられより漢さが出ておりましたよ !!


半次郎の母が家屋から出てこられると、律儀に合羽を脱がれ、美しいお動きにてたたまれた後、三度笠の中へしまわれましたよ。


忠太郎さんは半次郎を旅に誘いにきたのどすが、堅気になってもらいたい母親から追い返されようとします。

母役、萬次郎氏のセリフ中の中車様 は、相づちを打たれたり、細やかなお動きをもって、忠 さんのお心をご表現されていました 拍手


中車様 は、『親のねぇ雀…』で、ゆったりと庭先の長椅子に腰掛けられ、抑揚のあるお声にて身の上話をなされました。

忠 さん『赤の他人の親子でさえ、羨ましいやら妬ましいやら…』が切ないです。。なみだ

忠太郎 さん の身の上話に、涙ながらに飛び出してきた半次郎に、母親と妹の気持ちを汲み取り、堅気になれと諭す漢な忠 さん。。。

いとまを告げ、三度笠と合羽を手にされた後、垣根門まで歩み寄られ、哀愁漂わせられながら半次郎に、『堅気になれ!』との後、間をおかれ、『よぉ!』『よぉ!』と二声 !!


見事に中車様ワールド 余韻を残され、悠然と下手に捌けられました 拍手






カラスの鳴き声と鐘の音が流れ…


男二人から仇討ち奇襲を受け、形勢不利となった半次郎のもとへ、忠太郎 さんが危機一髪、台詞後に下手から舞い戻られます。


三度笠と合羽を手に足をドンと踏み鳴らされ、軽い立ち回りに。

中車様 は、下半身にどっしりとした安定感のある立ち姿にて、忠太郎 さん漢さを醸し出されていましたよ らぶ1


探し求めている母親が江戸にいるとの噂を耳にし、江戸へ向けて心勇んでいるとの忠 さん

『江戸へさぁ~~』のセリフ後、たっぷりの間と、江戸の母を見やるような視線の流し方が絶妙どした !!


斬った遺体は、半次郎達に迷惑が及ばないよう自分がやったとの書き置きを残そうと、庭先の長椅子を机変わりに動かされ、明かり加減を調整なされる際、夕陽が眩しいのか手をかざされる忠太郎 さん
セリフのない場面でも一つ一つが叙情的で、魅せられます。。。

無筆の忠太郎 さんは、半次郎の母親に、筆を持つ自分の手を文言通りに動かしてくれと頼まれます。

記入の最中、自分に重ねられた半次郎母の手をゆっくりと見つめられた後、切なく甘えたようなご表情で母親の顔を見つめられ突然、筆を手放しうつむき、母親を恋しいと思うと吐露なされます。。。ほろり






感情的な場面から次への場面の際は、テンポを早めたお動きで、空気を切り替えられましたよ 拍手


そして中車様 は、半次郎に見送られながら、花道にて左肩へ粋に合羽をかけられた後、前を見据えられ、拍手の中揚幕へと消えられました !!



《 大詰  第一場  夏の夜の街 》

江戸の川べり風景。

悠然と下手から中車様 ご登場。

かつらと着物が変わられ、非常に色気を感じます !!

両手を袖にしまわれているのがまたまた粋どした ドキドキ






三味線弾きの老婆から代金を支払わず逃げようとする酔っぱらいを悠々とたしなめ、お金を支払わせる忠 さん
格好よし らぶ1


その後、老婆に母親ではないかと期待をいだくも打ち破れます、、、ほろり

そして、母親が暮らしに困っていたら渡そうと賭博で貯めたお金の一部を質問のお礼と老婆へ渡されます。

懐から銭を取り出した後、少し胸元があくのがセクシーで、また、言い回しが『これを使いな』等ではなく『これをあげます』と丁寧なのが印象に残りました。。。だよねー


場面最後は、三味線の音色をバックに上手から舞台中央に歩み寄られた後、ゆっくりと老婆を振り返られ切なく愁いを含まれた目で再び向き直られ、遠くを見つめながら袖からゆっくりと右手を出され、しばらくの後に舞台は暗転となりました。



《 大詰 第二場  柳橋水熊横丁 》

雨上がりの江戸の一角。
料理茶屋『水熊』の台所口場面。


『水熊』女将に金を無心にきた夜鷹のおとらが、勝手口先で店の男衆に罵りを受けているさなか、下手から中車様 ご登場 拍手


手にした雨傘で男衆を遮り、漢っぷりでおとらを助けます。

案の定、おとらにも母親ではないかと年齢や息子の有無を尋ねるのどすが、不発に。。。

しかし、おとらから『水熊』の女将に生き別れた息子がいるとの情報を得て心騒がせる忠太郎 さん


おとらにもお金を渡す際、手になされた傘をお腹で支えられ、懐から銭を取り出された後、滴をはらう為、傘をひとふりなされる一連の流れが好き ドキドキ   魅入ります。。。ドキドキ


お金を渡され、『死んだ息子が安心するぜ』で遠くを見やり、開いた右手をゆっくり閉じられぐっと握りしめられました。
忠太郎 さん情感をかんじます なみだ


そして、おとらは花道へ。

見送る忠 さん
落ち着いた低音で『あばよ』の後、早く行けとの素振りで、傘を二回振られましたよ  らぶ1
格好良かったどす ラブ


そして、母親かもしれない女将が気になる忠太郎 さんは勝手口前へ行かれ、落ち着かない素振りを見せられます。。。

通りすがりの娘二人のいぶかしそうな目を気にする忠 さんですが、土台の悠然さや漢さを残したうえでのご表現で、中車様 流石!!と胸キュンどした ドキドキ


そして、舞台中央にて思案する面持ちで遠くを見つめられ、暗転。






《 大詰 第三場 おはまの居間 》

物語はクライマックスへと。

『水熊』の女将おはまは、やはり忠太郎 さんの母上どしたが、現在おはまには他界した再婚相手との間に産まれた娘がおり、堅気でない忠太郎 さんに今の安定した暮らしを乱されるのではと、邪険に対応します……感涙


下手暖簾から店の者に案内され、中車様 ご登場どす。

少しうつむき加減で、おもむろに床をふまれ、玉三郎氏演じる母上おはまのもとへ。

廊下の場面、圧を感じました !!


ここから、母親との辛い辛い対峙が始まります…


中車様は迫真のご演技で、台詞の度に首筋に血管が浮き出ておいででしたよ… ほろり


忠太郎 さんは、自分が江州番場の六代続いた旅篭、おきなが屋の倅 忠太郎 だと分かってもらおうと一生懸命に訴えられます なみだ

過去のすり合わせから、おはまが母親とわかり
『 おっかさ~ん 』と、二度にじりよるもその度、『近寄るんじゃない!』と突き放される忠太郎 さんが本当に痛々しくて辛おした。。。






忠太郎 さんは父親が女好きだったと聞かされており、母親が出ていっても無理はないとおはまを庇い、恨んでない表現もなされてるのに~~ !! 感涙

 
忠太郎 さんは、母親に受け入れられる想いで生きてこられたので、伝わらない想いにどんどん傷つけられていき可哀想すぎて、、、

中車様に惚れた弱みもあり情がうつりすぎて拝見していて非常に辛おした、、、


お金の無心にきたのかまで言われ、母へと貯めた懐の金を見せ、『 ひでぇや…ひでぇや…ひでぇや…ひでぇや 』と、膝上で拳を握りしめながら泣き崩れる忠太郎 さん。。。感涙


堅気で現れなかったことまで責められた際、目を閉じ上を向かれ、やりきれないご様子がもうもう可哀想すぎ !!

そして、『指図、辞退しますわ。』と。
12歳から親のいない子供が堅気の道では生きのびれないこと。
裸一貫、一人で生きてきたことを返す忠 さん


廊下で聞き耳を立てる店の者が音を出し、忠 さん我に返られ威勢よく襖をあけ、一喝 !!
ドスきいていて格好良ろしおした !! 恋の矢

それがいとまのきっかけとなり、『二度と忠太郎はめぇりません』と告げられ、妹にも会いたいと思っていたことも告げられた後『これも愚痴か~~』と哀愁たっぷりに言われました。。。


『子の心が親には通じねえ』との台詞が辛い… 

さらに題名とリンクしてくる忠太郎 さん台詞がまたまた辛い。。。

『 瞼のうえしたをぴったりあわせ、絵を描くように見えたものをわざわざ骨折って消してしまったよ 』


廊下で妹とすれ違われた際『よく似ているな~~』と優しい声色でおっしゃいました。。。

下手暖簾前で深々と頭をさげられ、哀愁と共に捌けられました。。。



《 大詰 第四場  荒川提 》

傷心の忠太郎 さんは、あてのない旅へ。。。


中車様 揚幕より、旅の衣装に灯りを手にされた出で立ちでご登場 拍手

花道を抜けられ舞台中央へ。


そこで、忠太郎さんの命を狙う輩二人に挟みうちされます。






名乗りをあげられた後、灯りをフッっと消すと同時に三度笠と提灯を放り投げられあっという間に浪人を斬られました。


もう一人は逃げ、そこへ娘に諭され忠太郎 さんを呼び戻しにきた母おはまと妹が上手からやってきた為、忠 さんは姿を隠そうと下手へはけられます。

自分を呼ぶ声に応えず、やりすごす忠太郎 さん

二人が花道へと去る中、再び下手からご登場され、花道を見やりながら『 嫌でぇ、嫌でぇ、会うものか… 』と… なみだ


忠太郎 さんは、『瞼の母』を想い生きることを選んだんだと…


そこへ先ほど逃げた一人が襲いかかり、応戦する忠 さん敵に『親は?子は?』と尋ね、いないとの返事の後、戸惑いなく斬りつけられました。


切ない唄が流れ、忠太郎 さんはゆっくり刀を拭き取りさやにおさめられた後、舞台中央へ愁いを纏われ歩み寄られました。


夜が明けてくる演出の中、切ないご表情と共に右手に握った三度笠の紐を脱力なされたかのようゆるめられ笠が床についた後、哀愁漂う中舞台は終幕となりました… 拍手




2017.12/18,19,20
瞼の母