先日吉祥寺で会った友人と、今度は下北沢へ行ってきた。

目黒や高円寺という案もあったが、名前が候補に挙がったときにはもう、私の頭の中では下北沢に決まっていた。


その友人とは何年か前にも下北沢に行ったことがある。

友人おすすめの蕎麦屋で昼を済ませてから、古着屋をまわり喫茶店にも寄って、最後にスープカレーを食べて帰ってきた。


下北沢といえば普通はもっと若い頃、10代とか20代のときに、知り合いが出るライブを見に行くとか好きな古着屋があるとかで通う人が多いだろう。


私がその歳の頃にはあまり縁がなくて、人に連れられてごはんを食べに行ったことが1、2度あるくらいだった。


そのときからすると随分久しぶりに行ったときに、とにかく店の数が多いのと、店員さん達が皆フレンドリーなのに気が付いた。

一日いても飽きないと思った。


車通りがほとんどなく歩きやすいことも、ブラブラするのには都合がいい。


昨年の年末には従姉とコーヒー屋をはしごしに行った。

途中で寄った古着屋の店員さんと他愛もない話をしたのが楽しくて、また誰かと来たいと思っていたのだ。


その日は最初に少し店を見てからランチにしようと、昼前に下北沢駅に待ち合わせた。

駅で落ち合い、近くで開催していたシャツの古着マーケットを覗いてから、友人が調べてくれた定食屋へ向かった。


開店まではまだ少し時間があったが、二階にある店へ続く階段にはもう列ができていた。

私たちが並んだ後もどんどん列が延びていく。


時間になり入口が開いて、角の席に案内された。

壁かけの黒板に描かれたメニューを眺め、しばらく迷ってから店員さんを呼ぶと、注文はテーブルに貼付されたQRコードからできるとのこと。


どうりで隣の席のカップルが、席に着いて早々にスマホを触っていたわけだ。

会話よりスマホを見てるほうが楽しいのかな?などと余計なことを思っていたが、勘違いだったようだ。


友人は肉団子の黒酢あんかけ、私はミックスフライと迷ってからアジフライ定食にした。





アジは肉厚でふっくらしている。

醤油かソースのどちらがよいか聞かれたが、フライにはソースという習慣がもう何十年も染み付いているので、ここで変えることはしない。


自家製と思われるタルタルソースもついてきた。

フライに限らず、つけるものが何種類かあるときは全部試すことにしている。

使いきれず余ってしまうと残念な気持ちになるので、配分も重要だ。


そして今日もおかずを半分こにする。

あんかけもボリュームがあって美味しかった。


お腹いっぱいになったので、しばらく付近のお店を見て回ることにする。


同じ職場の人が、フェルメールの作品を思い切り単純化してマンガ風に描いたおしゃれなシールを手帳に貼っているが、それを買ったというシール屋に入ってみた。


名画のデフォルメだけでなく、世界の有名アーティスト、日本各地の観光名所や名産品、動物や食べ物などありとあらゆるものがシールになっている。


日本の俗語が英訳付きでシールになっているものもあり、自分用なのかお土産用なのか、外国人観光客の来店も多い。


見るとはなしに見ていると店員さんに話しかけられた。

ちょうど、おいしいジャムトーストになるためにけなげにがんばる食パンのシールを見ていたのだが、4コママンガになっているとのことだった。


一つのフックにシールが何枚もかかっていて、奥へめくっていくと確かにあと3種類ある。

食パンがいっそうけなげに見えてきたが、かといって4枚とも買う思い切りはなく、1コマ目だけ買ってみた。


そのあとも気ままに古着屋や雑貨店を覗いているうちに、どこかに座りたくなってきた。


向かったのは、前にもその友人と一緒に入った、気さくなご夫婦がやっている喫茶店である。

確か以前は骨董品店を経営されていたが、ビルに建て替え、1階で喫茶店を始めたと聞いた気がする。


テーブルや椅子、ところどころに飾られた小物は、どれもアンティークに見えるが重さはなく、どことなくかわいらしさがあって落ち着く空間だ。


友人はアイスコーヒー用の深煎りの豆をホットで淹れてもらい、私は中深煎りのブレンドにした。



キャロットケーキとチーズケーキを頼み、ここでも半分ずつ食べる。

ここのチーズケーキはベイクドなのに柔らかさがあって甘みもちょうどよく、とても美味しい。

キャロットケーキもどっしりし過ぎず、美味しかった。


変わらず居心地がいいお店。

喫茶店は店主さんの雰囲気がそのまま出るなと思う。



再び古着屋をめぐり、駅前まで戻ってきた。

ちょうど18時くらいだったが、この季節だとまだ明るい。


何か飲みたくなった私とお腹が空いてきた友人は、コンビニエンスストアでそれぞれ必要なものを調達してベンチに座った。


駅前には同じように座って話し込む人や、鳩の群れをおどかす男の子たちがいて、一帯がたまり場のようになっている。


私もまだ去り難くて、このままここにずっと座っていられそうな気分になってくる。

小学生の頃、校庭や空き地で遊んでいるうちに夕方になって、そろそろ帰らなくちゃというときに似ている(私がそう思ったのか、友人がそう言ったのだったか?)


それからまたしばらく話して、結局少し前に通りかかった小籠包屋で一杯やっていくことにした。

子どもの頃ならまた明日も会えるが今はそうも行かない。

大人はこういうとき、自由だ。


*定食屋・・yuzuki

*喫茶店・・つゆ艸