(です・ます調)
とあるニュース番組での、ひとコマです。
前日の夜から大雨がふり、関東一円に大雨洪水警報が発令されていました。
その日も東京は激しい雨。そんな中、水位の上昇した多摩川から、リポーターが生中継をしていました。
多摩川はいつもより水かさが増し、茶色く濁った水面には、大粒の雨が落ちていた。また風も強く、河川敷の草木が、波を打つように揺れていました。
危険な状況を中継している最中、リポーターは驚くべき光景を目にしました。
なんとその大雨のなか、増水した多摩川で、釣りをしている人がいたのです。
それは白髪まじりの男性で、雨のあたらない高架下で釣りをしていました。
さっそくリポーターは男性に接近し、話をきいてみることに。
「あのー、すみません。何をしているんですか?」
リポーターがきくと、白髪まじりの男性が答えます。
「釣りです」
やはり、そうです。男性は釣りをしていたのです。
リポーターが、またききます。
「こんなに雨が降っているのに、釣りですか?」
すると男性は、こう答えました。
「はい。毎日の日課なので」
リポーターはそれ以上、何もきけませんでした。
大雨なのに、増水しているのに、毎日の日課なので、釣りをしている。
冗談を言っているようには見えませんでした。
日課だから釣りをしている。その言葉に、嘘はないと思います。
たとえ雨がふっても風がふいても、日課だから釣りをする。
身の危険なんて、なんのその。毎日の日課が最優先。そんなところでしょうか。
(なんてまじめな人なんだ)
日本人の勤勉さを痛感した、ひとコマでした。