鈍色の雲が街を覆う。
数日までとは、街の音さえ違って聞こえるような、季節の進み方だ。
鈍色をわずかに銀に染める、ささやかな陽射が心の隙間に射し込む。
「もう会えないんだな・・・。」
射し込んだ光がゆらゆらと、面影を運んでくる。
寂しさが、忘れたころに吹いてくる。
振り向いても、そこには笑顔はおろか、影ひとつない現実。
聞こえたと思った声は、木枯らしのいたずらだったのか。
こんなにも、
逢いたい、と思っていること。
誕生日を祝うメールを送る先に、受け取り手はもういない現実。
見上げた空は、木蓮の薄い黄色に染まっていた。
「ありがとう」
と、聞こえたのは、
空を舞う水鳥の群れの羽音だったのか。
きっと、そうだろう。
風が吹いている。
いつだって風は吹いてる、
忘れていても、そうでなくても。
風は吹いている。
鳥はまた、羽ばたいている。