終わりました。TBS金曜ドラマ「アンナチュラル」。
衝撃があったわけではないけれど空を旋回してきれいに地面に降り立った、一羽のツルのようなそんな美しい印象の最終回。
きれいにまとまったというか、視聴者に振り回されないというか、着地点のブレない最終回だったように思う。
ちゃんと六郎は制裁されるし、そこから許されるし、シリアルキラーは理解されることの平凡さを否定し、自己陶酔で身を滅ぼす。
そしてミコトと中堂は共依存ではなく、共存して生きていく。
ドラマは終わったけど、ちゃんと彼らの世界では時間が流れていくし旅はつづいていく。
生と死の旅はつづいていく。
「絶望してる暇がない」という娘に「それって最高じゃない」っていう薬師丸ひろこさん演じる育ての母。
そうして救われて大きくなれたんだね、ミコトは。きっとそうして生きてこれた。
肯定されて。
ミコトの過去が詳細に明かされなかったことも、彼女の不幸なところを前面に出す脚本を、同情をよしとしない制作陣の意志を感じ、そこをまたとても高く評価します 。
中堂もミコトによって光が見えたし、亡くなった彼女の絵本のラストシーンを遺族から聞いてやっと泥水から顔を出し息が吸えたことでしょう。
最後、ミコトの昼食シーンで、お弁当から立ち上る湯気の映像の神々しさは半端なかった。
あたたかいご飯のおいしさやよろこびはその背景があってこそ。
生きていくことは食べること―― 食べることは生きること。
見応えあるいいドラマをありがとうございました。
特に第5話「死の報復」は罪と罰について考えた、最近のドラマで一番の脚本でした。
この回は、桃井かおり&岩下志麻が演じた松本清張の「疑惑」(1982公開の映画)以来の好きさかもしれない。(次点でハロー張りハリネズミのこの回)
登場人物の誰もが「ただいま」と言える居場所を見つけることができたかな。ご遺体や遺骨になってしまった誰かにも。
続編があろうとなかろうと、これが着地点です。いい作品でした。