日本自動車工業会主催の福祉車両広報イベント、
「快適に! 体に得するワザ教えます!」という福祉車両広報イベントに参加しました。




会場は東京ビッグサイト。

注目のイベントですので、たくさんの来場者でにぎわっています。




東4~6ホールを使った大規模展示会に先駆けて、別室で行われたプレス発表会にお邪魔しました。





まずは日本自動車工業会、福祉車両部会の児玉副会長のご挨拶。




いまや日本は世界一の長寿国なんですね。
福祉車両はあまり馴染みのない車両のようですが、高齢の方の移動や介護の場面、また身体の不自由な方のお出かけの大切な足でもあり、需要は格別に増えてきています。



 



さまざまな利用スタイルに合わせた、さまざまな車両タイプがあり、三世代同居という世帯も増えてきた昨今、心構えのない中でいきなり介護が始まるご家庭も今は少なくないのだとか・・・




高齢化社会が進み60歳以上が6割をしめる中、日本人の平均寿命は2025年には女性は約87歳! 2060年には90歳!(マジですかサー・・・・ッ!)

介護する側は女性が7割に及び、力のない女性が介護をしなくてはならないジレンマが確実に生じているのだそうです。
ですから介助する側が負担の少ないお世話の仕方や、軽減するワザのある車両でカバーしていきたいものです。





一般的に認知度の低く思われる福祉車両ですが、各メーカーから製造・販売されており、最寄りの各社販売店で買うことができます。


「介護式」は体の不自由な方のための介護や送迎に利用する車、
「自操式」は体の不自由な方が自分で運転するための補助機能がついた車。



自操式は上記の流れで、介護式は通常の免許で運転することができます。





大野副部会長からもスライドを見ながら詳しくお話を聞きました。






たとえばスライドシートが助手席についたタイプでは、くるりと座席が回せるもの、




また飛び出して車椅子の高さまで調節できるものなど、




すべてをリモコンで作用できるものとさまざまなタイプが現存します。
故障したときやアフターサービスなども、あとで伺うと各販売店でちゃんとケアしてくださるのだとか。






車椅子移動車では、スロープ式がほとんど。
ベルトを車いすに結びモーターで引き上げたり、




リフト型などがあるようです。
しかしこれだけ手が込んで安全性にも考慮しているとなると、気になるのはそのお値段ですが・・・
補助金や免税などもあるそうですので、各市町村自治体などに問い合わせるといいそうです。




スライドを見ながら思うのは、老々介護や女性の介護の苦労点。そこでどうしたら負担を軽減させられるか・・・といったところで、




介護・医療リハビリ界で話題を呼んでいる古武術(こぶじゅつ)介護というジャンルを確立された第一人者、介護福祉士の岡田さん登壇です。

「古武術」というと瞬間で相手を倒す?わけではなく、日本に古くから伝わってきた武術の身体の使い方や考え方を取り入れ、素早く動く、力を使わず大きなものを動かすといった身体の使い方の応用と、それを介護技術へ取りいれる技術です。
介護業界22年目とおっしゃる岡田さんいわく、

介護は筋力に頼らないケアが必要不可質の転換によって効率よい動きを!とのこと。

ではそのコツを実践で見せていただきましょう。



 



介助に古武術のワザを使った実演です。

(被験者の女性はおもりをつけたベストを着たり足にサポーターを巻いて動きにくくされています。)


寝ている人を起こしてあげるワザ





真上に引き上げようとしても、相手も苦しいし、上げるほうも重くて無理です。
日本人は華奢なのでその体でストレートに大きな人を介助するのはほぼ無理、する側にもされる側にもほころびが生じます。





こういうときは、首の下に手を回す。その手は重さを軽減するために、手首をひねり手のひら側を外にする。
通常人はものを引き寄せるとき、上腕二頭筋を中心とした腕の力で持ち上げようとします。
そうすると介助する側は腕、肘、あるいは肩、腰と局所に力を集中してしまい、体を壊してしまいがち。
腰痛を予防する重いものの持ち上げ方として教わりましたが、抱えるときに手首をひねると介助する側の引き上げる力は、背中と腕の筋肉を連動させて動かすことでより大きな力と変わるそうです。





引き上げたら体を引き寄せ、手前に転がすように上げる。




その空いた隙間に介助するほうはさっと体を滑り込ませ、座らせて起こしてあげる。
あとは脇の下から手を差し入れれば立ち上がらせることもできます。

移動させて、いすに座らせるワザ





座っている状態からなら、膝を浮かせ、そこに膝を入れ込みます。






そのまま腰を浮かせ、両膝に乗せるようにします。





そこから腰を上げるのと同時に、てこの原理で体を90度ひねり足を立てることで座った介助者の腰を持ち上げます。





あとはまた足の位置をずらし逆に体をひねり、スライドさせて椅子に移します。

昇降シート車に乗車させるときのワザ





車いすに座った状態から真上に持ち上げてはダメです。
重いばかりか、介助する側が腰をやられてしまいます。





ではどうするか? まず先ほどの腕力の原理で手のひらを外側にし、腰に手を回します。




それから引き上げるのではなく、持ち上がったら抱え込んだほうが後ろへ倒れるようなイメージで重心をずらしていきます。





抱え上げたら肩に乗せ斜めに抱え、体の1点でなく数点で支えることで重さを分散しているように私には見えました。
そこから体を反転させ椅子のほうに向きます。




そっと降ろします。
(でも現実問題、この降ろす仕草でもかなり腰をやられそうなので、ここもコツがあるのかもしれません。)


武術には力を最大限に引き出すワザ、そしてダメージを最小限に散らすワザがあると思います。

古来の護身の知恵を現代に、また未来に活かせること。
そしてそれを生きながらえるために使うことは、自然の摂理のように感じられます。

生まれてきたとき寝ているだけで自力では動けなかった赤ん坊だった私たちが、乳母車に乗せて連れて行って見せてもらった景色。
そこに育ててもらった祖父母や父母を連れて行ってあげること―――。
それは朝が来て夜になるように、なんら変わったことでも大変なことでもなく、ふつうの摂理なのかもしれません。





イベント後、いろんな思いを巡らせながら展示会も実際に回ってみました。






ビッグサイトの東4~6ホールを使った大規模イベントに、たくさんの来場者があふれています。





各社の福祉車両に実際に乗り込み、皆さん熱心に質問されていました。








わかりやすく表示されたポイントやお値段、試乗の感触は何よりも購買心につながるでしょうし、ご自分のため、ご家族のために来場した皆さんが福祉車両に賭ける思いも伝わってきます。








いろんな車両が一度に見られますので、外出がなかなか難しい方もこのイベントに一度参加することで、たくさんの情報を一気に比較検討することができます。
それも最新技術の。




福祉車両が普及することによって、もっとたくさんの方の視界が開け、ますます家族の笑顔が増えていくこと。
高いのではないかというハンディを超え、普通の販売店で買えるという段差を乗り越え、
福祉車両はますます飛躍してほしいと願います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

国際福祉機器展2015は、東京ビッグサイトにて、来年10月にまた開かれます。
何度も言いますが、これほど福祉車両が一堂に会する場はなかなかないかと思います。
この機会にぜひ、実際の乗り心地をお試しください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

日本自動車工業会