原題:Les heritiers
製作年:2014年
制作国:フランス
ベテラン歴史教員のアンヌ・ゲゲンと、
落ちこぼれ&問題児が多く集まるクラスの生徒との心の触れ合いを描いた
実話がモチーフの作品です。
ゲゲンの提案によって、
アウシュビッツを題材とした
全国歴史コンクールに参加することになった生徒たち。
当初は参加することに反対を唱えていた彼らは、
強制収容所からの生き残りの語りを直接聞くことで、
その事実の重みを知り、
次第に自ら真剣に取り組むようになっていきます。
原題の「Les heritiers」は、
「相続人、後継者」という意味。
過去の大きな悲劇を体験した人々が徐々にこの世を去っていく今、
今を生きる若者たちが、
その悲劇をどう受け止め、
どう次代に受け継いでいくか、
歴史教育の意義をあらためて考えさせてくれる映画です。
ところで、
ハリウッド映画もそうですが、
日本公開時に付けられる邦題は、
時々
その作品の本質を歪めてしまうことがあるように思えてなりません。
今回も
邦題に「奇跡の教室」とありますが、
熱心な先生との出会いによって
落ちこぼれの生徒たちが歴史的なコンクールで優勝するまでに成長したことを
『奇跡』と称することが本当に正しいのかどうか、
教育に携わる仕事をしている私には
正直「う~ん…」と思うところがあります。
移民大国といわれるフランスには
映画のクラスのように
実にさまざまなバックグランドを持った生徒が多くいます。
フランスほどではない日本とはいえ、
生徒一人一人とまっすぐに向き合い、
彼らの持てる可能性を信じて
心に火を灯すきっかけをさまざまな場面で用意し、
背中を押す、支えることが
世界共通の「先生」という仕事の本分です。
これを“奇跡”として例外化してしまうような国の将来には
正直、あまり期待できません![]()
今の仕事をしていると、
生徒の可能性を伸ばすも殺すも先生次第、
と思うことが良くあります。
私が仕事でお会いする先生方は
みなさん常に目の前の生徒に一生懸命な方々ばかりです。
その一方で、
そうではない「先生」がいるのも事実です。
子どもは親同様、
原則、先生を選ぶことができません。
後戻りができない限られた学校生活だからこそ、
先生との出会い、言葉が
その子の一生を左右するほど大きな影響力を持つことに、
先生はもっと覚悟と責任を持ってほしいと思います。

