先日、日本糸リフト協会で、
「テスリフトと、その適応について」お話しさせていただきました。
私が糸リフトを行ううえで、ずっと大切にしているのが、
「糸を入れれば、誰でも同じようにリフトアップするわけではない」
ということです。
テスリフトとは?
テスリフトは、PDO(ポリジオキサノン)という吸収性素材を用いた糸リフトの一つです。
特徴的なのは、中心となる糸の周囲を3Dメッシュ構造が覆っていること。
この構造によって組織との接触面積を確保し、組織を保持することを目的として設計されています。
TESSLIFT SOFTは100%吸収性PDOからなり、中央のコグとその周囲の3Dメッシュ構造を持つことが解説されています。
ただし、私が今回特にお伝えしたかったのは、
「テスリフトが優れている」という単純な話ではありません。
大切なのは「その方が糸リフトに向いているか」
同じ50代でも、
皮膚の余り方、
皮下脂肪の量、
脂肪の下垂、
靭帯周囲の動きやすさ、
骨格、
ボリュームロス、
は一人ひとり違います。
そのため、私は診察時に「たるみがあるか」だけではなく、実際に組織がどの程度動くのかをとても重視しています。
たとえば、頬の組織にある程度の厚みと可動性がある方は、糸によって組織を移動させる治療が選択肢になります。
一方で、皮膚や皮下組織が薄く、動かせる組織が少ない方に、単純に糸の本数を増やせばよいとは限りません。
実際、2025年に報告されたランダム化比較試験でも、PDO糸を片側3本使用した群と6本使用した群を比較したところ、糸の本数を増やしても、持続的な組織移動量や患者満足度に有意差は認められませんでした。
つまり、
「たくさん入れる=より上がる」ではない。
ここは、私が日々の診療でも非常に大切にしている部分です。
糸だけで完成させようとしない
もう一つ大切なのが、
糸リフトだけですべてを解決しようとしないこと。
年齢とともに起こる顔の変化は、「下がる」だけではありません。
脂肪や骨格のボリュームが減る場所もあれば、逆に下垂によってボリュームが集まる場所もあります。
そのため私は、
動かすところは糸で動かす。
足りないところはヒアルロン酸などで補う。
皮膚の質感や引き締めが必要なら、エネルギーデバイスを検討する。
そして、糸で対応できる範囲を超えていれば、切開によるフェイスリフトも選択肢として説明する。
という考え方をしています。
糸リフトとヒアルロン酸を組み合わせた治療についての臨床報告もありますが、研究デザインや対象患者が異なるため、「併用すれば必ず優れる」とまでは現時点では言えません。
私が目指しているのは「引っ張った顔」ではありません
糸リフトというと、
「とにかく強く引き上げる」
というイメージを持たれる方もいらっしゃいます。
でも、私が目指しているのはそこではありません。
その人が本来持っている輪郭を、自然な位置へ整えていくこと。
無理に若い顔をつくるのではなく、今のお顔のバランスを見ながら、これからのエイジングまで考えて治療を組み立てる。
これは私が普段から大切にしている
「作るより、整える」
という考え方にもつながっています。
PDO糸によるリフトについては、一定の改善を報告した臨床研究がある一方、長期的な効果や最適な治療方法については、まだ十分なエビデンスが確立していない部分もあります。
だからこそ、糸の名前や本数だけで治療を決めるのではなく、
「この顔には、何が必要なのか」
を診断することが、美容外科医の一番大切な仕事だと思っています。
今回、日本糸リフト協会という専門の先生方が集まる場で、テスリフトだけでなく、「どういう方に糸リフトを選択するのか」という適応についてお話しできたことは、私自身にとっても改めて治療を整理する機会になりました。
日本糸リフト協会は、糸リフトに関する教育・情報発信などを行っている団体です。
これからも、単に「上げる」ための糸リフトではなく、
10年後の顔まで考えて、必要な治療を必要な分だけ。
そんなエイジングケアを続けていきたいと思います。

