「角倉了以の相互主義経営哲学の歴史的価値と現代的意義~3」

★現代のグローバル資本主義の中での「角倉了以の業績」の再評価について。

現代のグローバル資本主義は、生産性と効率性で利潤最大化を追求する一方で、
倫理的問題や経済的格差の拡大、環境破壊や人的搾取という副作用を生んでいると云われています。
 

そんな状況の中で、角倉了以の「共に栄える経営哲学」は現代的価値を示すことはできるでしょうか?
考えてみたいです。
 

まずは東アジア諸国との朱印船交易で展開されたサプライチェーンの倫理観に基づいた実践です。

現在、企業の責任として、製品の原料調達から製造・流通に至るまでの全工程(サプライチェーン)において
人権・環境・労働条件などへの配慮が求められています。

しかし、グローバル企業と云われる企業の中には、国際基準に満たない形態のところもまだまだあるのが実情です。

 

今から420年以上前に海外貿易を展開していた近世の企業家・角倉了以の姿勢は、
単なる「取引」ではなく、「関係の構築」と「信義の維持」を重視したものであり、
倫理的サプライチェーンの構築という現代企業の課題に十分に通じます。
 

了以が相手国の文化・ニーズを尊重し、平和的に互恵交易に徹した姿勢は、
現代のESG(環境・社会・ガバナンス)投資の視点からも評価されるものであり、
示唆に富んでいると確信します。
 

また、貿易格差の解消を目指すフェアトレードとも通じます。

現代のフェアトレード運動は、「開発途上国の生産者に正当な対価を支払い、
自立を支援する」ことを目的としています。

了以が展開した海外交易は、戦略的な一方的支配、つまり搾取性はなく、
取引相手の自立・自尊を尊重する互恵関係を重視し取引していたことで、
現代のフェアトレード思想と本質的に合致します。
 

現代の国際関係においても未だ軍事力や覇権主義が横行しているのを見ると、
軍事力や覇権ではなく、公平な交易と信義によって関係を築こうとした了以の経営姿勢は、
倫理的グローバリズムの原点であり、世界最古の企業倫理といえます。

このように「商人道」を国際ビジネスの場で実践した角倉了以という企業家がいたことは、
日本の商業史においても世界に誇るべき人物だと言えると思っています。