この地が私が生まれ育った街です。
我が家は、先祖伝来の地・嵯峨清滝を父の代で出て、この衣笠に移り住みました。
平安の昔、宇多法皇が「真夏に白絹を掛けて雪見の風情を楽しんだ」という
伝説の山・衣笠山の麓に広がる街で、北に金閣寺や等持院、龍安寺、仁和寺、
また東に北野天満宮や平野神社、千本釈迦堂など全国でも有数の観光名所が続く街です。
平安時代に栄えた王朝文化の上に、室町時代の北山文化が融合され出来た美しい街並みは、
京の雅と歴史のロマンを感じることができ、山と森にも囲まれた自然あるロケーションも相まって、
京都でも「一度は住んでみたいまち」として人気だといいます。
ただ、由緒ある高級住宅街が並ぶ一方で、地場産業である西陣織の職人住宅が軒を連ねる
文化的風景も残る街でもあります。
そんな京の風情が色濃く残る街で、私は生まれ育ちました。
少年期から多感な青年期まで、かけがえのない時間を過ごしたこの地には、
懐かしい思い出がぎゅっと詰まっています。
賑やかな観光地から一歩入れば、当時の風景がそのまま残っています。
自転車で駆け抜けた道、かくれんぼした公園、野球をした神社。
家族で行った銭湯は暖簾を下ろしていますが、建物は昔のまま。
角の電柱、歩道のブロック、マンホールの蓋。
見るもの全てが懐かしい。
この地で、私は幾つもの夢をみました。
栄光と挫折、喜びと失意も味わいました。
一歩一歩、思い出を踏みしめるように足を進めます。
もうここにはあの頃の家族の姿はありません。
しかし、目を閉じ耳を澄ますと、あの頃の家族の笑い声が確かに聞こえてきます。
慎ましくも、毎日が楽しかったあの頃。
昨日は久しぶりに、ふるさとの同窓生と会いました。
ここへ来ると、いつも心が和み、ピュアな気持ちになれます。
それが‘ふるさと’なのですね。
懐かしい風景、温かい人情、そして心の奥底に眠る思い出。
ふるさとは、どんな人にとっても特別な場所ですね。
私もこの街・ふるさとの思い出を大切にしながら、人生を歩んでいきたいと思っています。