《法輪寺》

嵐山・渡月橋右岸すぐの山裾に「嵯峨の虚空蔵さん」として親しまれ、

十三まいりで有名な「法輪寺」があります。

虚空蔵さんとは正式名称を「虚空蔵菩薩(こくぞうぼさつ)」といい、法輪寺のご本尊さま。
古くから智恵福徳を授け、芸能工芸の技上達にもご利益がある仏さまとして篤い信仰があります。

京都では子供が十三歳になるとこの法輪寺へ「十三まいり」をする風習があり、

特に陰暦3月13日前後には多くの参拝者で賑わいます。

西暦300年頃にあった「葛野井宮」という宮を前身としており、

その後にこの地を拠点に活躍する豪族・秦氏がこの宮を訪ねてやって来て、

住み着いたとも云われる寺です。


本堂は和銅6年(713)元明天皇の勅願により行基開創し建立しました。
現在の本堂は江戸末期(1864)に蛤御門の変により焼失した後、

明治17年(1884)に再建されたものです。
虚空蔵さんが丑寅の護り本尊なので、本堂手前の両側に「阿(あ)型の虎」「吽(うん)型の牛」の像が護っています。

「法輪寺」の名称は弘法大師の高弟道昌僧都が「葛井寺」から改名したもの。

本堂へは渡月橋右岸すぐにある料理旅館渡月亭さん横の細い参道からのコースと

表通りの石畳みの階段から登る山門コースがあります。


山門から入ると色鮮やかな紅葉が迎えてくれてなんとも趣きある風景です。

参道を登り切ると左側に多宝塔と正面に本堂が迎えてくれます。

本堂右側にある小さな門をくぐると京都市内が一望できる舞台が広がります。

ここからは比叡山など東山三十六峰愛宕山北山の峰まで見渡すことができ絶景です!

眼下に目を移すと渡月橋がまっすぐこの法輪寺に伸びているのが見て取れます。


渡月橋は亀山上皇が月見の際に名づけた名称で、それまでは「法輪寺橋」と呼ばれ、

この寺へ行く為に架けられた橋と云われています。


京都では十三詣りをした帰り、渡月橋を渡り終わるまでに振り返ると

せっかく授かった智恵を返してしまうことになるという言い伝えがあります。
これは昔、十三歳を成人年齢と定めていたっことで

「大人は言いつけを‘必ず守らなければいけない’」という
約束事の大切さを新成人に教える為のものだったと云われています。

 

境内には今でも皇室で使用された針を納める「針供養塔」

子供の健やかな成長を祈願する「人形塚」、雷・稲妻の神様で電気・電波の神様を鎮守する「電電宮」が、

彩り鮮やかな紅葉が包まれすっかり秋色の佇まいとなっています。

平安時代には勝験無双の寺として多くの参拝者に賑わい、和泉式部も足げに通ったという逸話もある古刹です。

深まる紅葉の季節、渡月橋から近いこともあり、訪れてみてはいかがでしょう。