《大悲閣千光寺》

紅葉の名所が多い、京都にあって隠れた名所のひとつが、この嵐山中腹の岩山に建つ「大悲閣千光寺」です。

 

保津川下りの創業者でもある角倉了以創建したお寺です。

 

嵐山の景観に溶け込むように建つ大悲閣は、保津川沿いの切り立った岩肌の斜面に観音堂が建ち、

嵐峡絶景から東山三十六峰を見渡すことができる眺望圧巻です!

観音堂には千手観音像が安置され、観音様の慈悲の心を讃えて「大悲閣」と呼ばれています。

また、客殿には木造角倉了以像も安置されており、巨縄を巻いた形の円座(木彫)に坐し、

鋭い眼光で石斧を手にして右膝を立てた構えは、激流保津川の開削へ挑む気構えを表現していると云われます。

 

了以はこの千光寺を自らの終焉の地としました。

晩年はこの大悲閣に居を構えた了以は、保津川開削工事で犠牲になった

人々を弔うとともに、保津川の通船往来を眺めながら栄えを念じたと云われています。

また、経済による京都の再興を目指した了以が、京都洛中を俯瞰できるこの地を、

なぜ終焉の地に選んだのか、この山寺に立つとわかるような気がします。

当時の了以ほどの実業家なら、いくらでも自己顕示できる豪華なお寺を建てることが出来たはずですが

(事実、清水寺復旧に多額の財を寄進している)この大悲閣の質素な境内の姿に、

了以という人物の生きざま思想が込められていると感じます。

京都を一望できる、見事な眺望のお寺で、了以さんの心に触れながら、

紅葉が鮮やかで静かな嵐山の風情を感じてみてはいがでしょうか。