昨年のお盆シーズンに好評だった京都の魔界案内シリーズ。
「今年は投稿しないの?」のという問合せが多く寄せられたので、
できる範囲で再開することにします。
その第一弾は「愛宕太郎坊の巻」
標高924m。京都市内最高峰の高さを有する愛宕山。
その山頂に鎮座するのが愛宕神社です。
愛宕山は、飛鳥時代より摩訶不思議な数々の伝説に彩られている山でもあり、
平安京が造営されて以来、怨霊や魑魅魍魎が出入りする「天門」と呼ばれ、
西北の方角たつ愛宕山は「妖怪鬼神の棲む所・神門」として恐れられていました。
その妖怪鬼神を束ねるのが、仏の命により3000年以前から愛宕山に棲みついている
「大天狗・愛宕太郎坊」なのです。
時は飛鳥時代、大宝年間(701~704)に、修験の祖・役行者(えんのぎょうじゃ)と
愛宕山開山の祖・泰澄が、山裾の清滝から愛宕山を登ろうと十七町(約300m)にある
大杉の前で祈祷をしていると、にわかに天地が広がり、天竺(インド)の大天狗・日羅(ニチラ)や
中国天狗の首領・是界(ゼカイ)とともに、九億四万余の天狗を引き連れた最強の大天狗
愛宕太郎坊が姿を現したのです。
太郎坊は二人に対し
「我らは先き二千年に、この霊山会場に仏の付属をうけ、大魔王となって山を領有し、
群生を利益するであろう」と語って姿を消したといいます!
お告げに従い二人は、愛宕権現太郎坊天狗を祀り、許しを得て
朝日峰・大鷲峰・高雄峰・龍上峰・賀魔蔵峰の5岳を置き、
朝日峰(現愛宕神社)に神廟を立てました。
これが愛宕山開山の始まりです。
その大杉は今も現存しており、愛宕山登山の参道に立っています。
雷が落ちた時に、焼け焦げ空洞となっている姿は、伝説の太郎坊の降臨シーンを
神秘を持って感じさせ、隣接する清滝四所明神の火燧権現(ひうちごんげん)とともに、
修験者や山伏をはじめ参詣者の信仰を集めています。
1177年、京の街に3分1を炎上させる大火災が起こり、太極殿が消失することがありました。
都人はこの火災を「太郎坊焼亡」と名付け、火を司る「迦倶槌命」を太郎坊の霊能力のなせる
技だとその祟りを恐れました。
その後、愛宕山は「火伏せの神様」として信仰を集めています。
事実、京都の町で火事が起こると、大杉に隣接する火燧権現が
「ガタガタ」と音を立てて揺れるそうです。
京の東にそびえる比叡山をも凌ぐ、霊山といえるでしょう。