紅葉の名所が数多くある京都の中でも、嵯峨野の紅葉は詫び寂びが感じられ、
秋の情緒がしみ込んでくるエリアです。
その中でも「嵯峨離宮」と呼ばれ、雅やかな風格を持つ「大覚寺」は別格だと感じます。
平安時代初期に、嵯峨の地をこよなく愛した嵯峨天皇が成婚を期にこの地に
「離宮嵯峨院」を建立したのが大覚寺です。
鎌倉時代にはここで政治を執行したこともあり「嵯峨御所」と呼ばれています。
中国の隠遁(いんとん)思想に傾倒した嵯峨天皇が、世俗から離れ山荘で詩を詠み、
絵画を描きなながら、哲学を語る文人のような暮らしを理想として、平安京から離れ、
嵯峨の地で緩やかに暮らしたいという思想を具現した離宮です。
この離宮を後に、嵯峨天皇の孫・常寂入道親王が大覚寺という寺院にされました。
また、弘法大師・空海を宗祖とする真言宗大覚寺派の本山でもあり、
以来、代々天皇や皇族が門跡(住職)を務めてきた格式高い寺院でもあります。
境内にある大沢池は、約1200年前に造られた日本最古の人工池で、
月が綺麗に見える池ことから「日本三大名月鑑賞池」として知られ
「中秋の名月」の頃には、池に舟を浮かべてお琴演奏やお茶会などが催され、
京を風雅を楽しむ「観月の夕べ」が開催されています。
最近では時代劇の撮影現場としてもお馴染みのお寺です。
保津川下りとのご縁といえば、室町時代に角倉了以の本家が
大覚寺境内で土倉(金融)を営み、後年にその勢力を嵯峨一帯に拡大していく
拠点となったのもこのお寺でした、
いけばなの家元・嵯峨御流の発祥の寺でもあり、京都華道の普及と発展にも
影響を与えてきました。
まさに多様な京文化を支えてきた、格式高い離宮の紅葉をお楽しみ下さい。