卒業と同時に慎太郎は地元を離れた。

と言うより追い出されたに近い。

父親のコネで他県の営業会社に勤めることになった。

慎太郎にとってはどうでもいい事だった。

「今更捨てられても…」

そう思い、知らない街で1人で暮らした。


知らない街でも慎太郎は変わらなかった。

いつものように人を蹴落とし、罵り、人を人とは見なかった。

自分にとって、「ヒト」とは何かがわからなかったからである。

ただ1つわかった事は、「誰も信用するな」という事だけだった。

そうして独りで生きていった。



そんなある梅雨の時期

今日も雨が降っていた。

慎太郎は雨が好きでした。

雨に当たると自分が今まで生きてきた中の嫌な思い出や罪悪感が流される気がして。

「っと言っても今思えば良い事なんて何もなかったけどね」

そう思い、仕事を終え家に帰っていた。

帰り道、傘を差しながら歩いていると

「もしもーし?」

何処からともなく声が聞こえた。

振り返っても誰もいない。

あたりを見回しても誰もいない。

慎太郎は気のせいだと思い帰ろうとすると

「おい!無視するな!」

また聞こえた。

「下だよ!下!」

そう聞き、反射的に足元を見た。

するとどう言う訳か、水溜りに自分が映っているはずなのにそれは慎太郎ではなかった。

長い黒髪で二十歳くらいの女性がそこに映っていた。

その女性を見た瞬間、何処かで見たような気がした。

「やっと気づいてくれたね!」

その水溜り越しに映る女性が、微笑みながら言った。

ついに自分は、おかしくなってしまったのかと慎太郎は頭を抱えた。

すると、

「いやいや! 君はおかしくなんかなってないぞ!」

慎太郎の考えを読んだかのように答えた。

慎太郎は動揺しながら、辺りに誰もいない事を確認して女性に問いた。

「お前は何なんだ!?」

女性は待っていましたとばかりに答えた。

「私は葵(アオイ)って言うの! よろしくね慎太郎!」


「そう言う事じゃない! 君は何者なんだ!?」

慎太郎は動揺しながら質問し続けた。

すると、葵は答えた。

「それは言えない! 言ったら私が来た意味がなっちゃうから」

「何だよそれ!? もしかして幽霊とかそう言う類いのものか?」

すると、葵は笑いながら答えた。

「その歳で幽霊とか信じちゃってるの!?
慎太郎って面白いね〜!」


それが、慎太郎と葵の出会いであった。




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