シネコンで映画観てきた。
中山美穂主演の、『新しい靴を買わなくちゃ』。
監督・脚本は北川悦吏子。プロデューサーは岩井俊二。
そして音楽監督が坂本龍一。
坂本龍一が絡んでなければこの映画を観ることはなかったと思う。
脚本、作品がどうのこうのってことはどうでもいい。
どうであれバックグラウンドで流れる音楽で救われた。
妹・スズメにむりやりパリへ連れてこられたセンはセーヌ川でスズメに一人残される。
偶然そこを通りかかったアオイ(中山美穂)が、センの荷物から溢れたパスポートでヒールを取られ滑ってしまう。
パリの街に不案内のセンはアオイのサポートでホテルへ辿り着き、破れたパスポートの再申請で大使館へ。
そして2時間弱のストーリーが始まる。
パリでの撮影は1週間。
アオイを演じる中山美穂とセンを演じる向井理の顔合わせはこの映画の出逢いのシーンだったらしい。
北川悦吏子はそのシーンやシチュエーションに合わせて書き与えたという。
映画の序盤はシナリオもカメラワークもどたばただ。
劇場が暗くなって映画が始まってからの10分間はなんとなく苦痛だった。
そんな苦痛の中で席を立たなかった理由はといえば、
10数年前に訪れたパリの街を、中山美穂の演じるバックに観たかったからだ。
CMで映る中山美穂は素晴らしく綺麗だ。
しかし演じるとなるとどこかばたばたとしている。というか、映画的ではなくて
演じる彼女を身近な友人と思えてしまうような存在感だ。
ストーリーは全10回のドラマを2時間に納めたような展開だ。
行き詰まったアラサーのカメラマンのセンと、
パリでフリーペーパーの編集者をしているアラフォーのアオイの恋の行方。
ストレンジャーのセンと出逢い、久しぶりの日本語でコミュニケーションできる喜びを感じたアオイが
酔った勢いで心を広げる。
ひとりパリで暮らす彼女がアクシデント的に出逢ってしまうストーリーはドラマ向きのシチュエーションではあるけれど、
限られた時間でストーリーは進む。
申し訳ない的に互いの生い立ちやこれまでの生き方が夜のシーンで語られる。
こんなこと初対面では飲まなきゃ話せないでしょ?とも思うシーンだが、
もれなく二人はワインを飲みながら。
センとアオイが二人で過ごす最後の日の午後。
センは、アオイがパリで好きな景色を見せて欲しいという。
アオイは戸惑いながらもセンをその景色へと導く。
セーヌ川をクルーズする船へと。
坂本龍一の奏でるピアノが流れる。
そう、このシーンがきっと見たかったんだ。
川を渡る橋の手前でアオイはいう。
「橋をくぐる瞬間に祈れば願いは叶う」と。
まぁそんなことはどうでもいい。信じる者は救われる。
コインの裏表だ。
なつかしいパリの街。
ガイドに、「道端の犬のウンコを踏まないでくださいね~」と言われ、
「イヌのウンコを踏むのは観光客だけですからね~」と言われ。
タクシーに乗っても英語が通じない。
ほんとはわかってるくせしてわからないふりする運転手。
憶えたフランス語は、地下鉄乗るときの
「アン・カルネ・シルブプレ(チケット一枚ください)」くらいだ。
旅先で落ちる恋なんていくらでもある。
イギリス北部の湖水地方にあるウィンダミアからひとり高速バスに乗り、
ロンドンへ行く道中に、たまたま日本人の女性が前に座った。
彼女は親切に、ホテルでの朝食から多めに持ち運んだサンドウィッチを僕にすすめた。
僕はその日のバス移動がかなり長くなるものだとわかっていたからユースホステルで多めに食べた。
まずくてどうしようもないユースホステルの食事でも朝食はその中でもとてもまともで、
トーストとポーチドエッグとカリカリベーコンにフライパンで焼かれたスライストマトにオレンジジュース。
前の日よりもトーストを4枚も多めに食べた。
しっとりとしたパン生地のサンドウィッチには食欲も湧いたけれど、まだお腹がいっぱいだったのだ。
サンドウィッチを断ってもたびたび前の席の女の子は振り向いて僕に話しかける。
そんなに話したければ僕の隣に座ればいいのに。
彼女の話しを聞き頷くばかりの僕に彼女の話しは止まらない。
喋りたがらない僕を見て、旅の初心者と思ったのだろう。
そのうち、貴重品は身体に身につけておいたほうがいいよ(そんなことは承知)とか、
靴下の中に現金を入れて置いた方がいいよとか言う。
僕はリバプールを過ぎたあたりで寝たふりした。
映画的には恋に落ちるシーンが満載だったわけだ。
たぶんその時の僕はひとりだったし。
でも面倒臭かった。
もう少し彼女が無口で頼りなかったら面倒を見たかもしれないけれど。。。
ロンドンのコーチステーションに着き、振り向かずさっさとバスを降りた。
バスステーションを出て地下鉄の駅へとスーツケースを引きずっていると怪しい二人組に着いて来られた。
観光客狙いの何かだろう。
感じてゆっくり歩きながら書店へ立ち寄りペーパーバックを手に取り時を過ごした。
ホルボーンで下車し、宿泊先の大英博物館脇のホテルのパブでサッカー観た。
タクシーの運ちゃんと二人して地元のクラブ、チェルシーを応援した。
全てはコインの裏表。そのときの決断だ。
グアムのビーチでトモと砂の城を作っていた。
日本人観光客の多いホテル街にあるビーチはちょっと危険で、
ビール瓶の硝子の破片だったりも砂に埋まっている。
海の高さが腰くらいになるとマスクをつけて海中をのぞく。
すこしキラキラした小さなサカナが群れをなして泳いでいる。
トモは「しょっぱい、しょっぱい」というばかり。
ママはビーチから僕らふたりの様子を眺めている。
僕とトモでのグアムでの恒例行事。
ふたりでビーチで作る砂の城。
大きな山を作ってふたりしてトンネル堀り。
僕は指先にコインを触り掘り出した。
「とーちゃん、すげぇ!」とトモはいう。
なにがすげぇんだかわかんない。
UFOキャッチャーで何かを釣り上げたのと同じくらいの感動だろう。
長く海に沈んだコインは表面の表記が見えない。
片面には砂がこびりついている。
もう片面はすっかり変色し浸食されている。
「記念に持って帰ろう」
僕とトモの旅の記念にコインを持ち帰った。
たいていそんな物は忘れ去られる。
たまたま部屋の片隅で見つかると、旅の出来事を懐かしむ。
旅の一部が運命的に感じる時もある。
出逢いを運命と感じる時もある。
思うままに進むこともある。
出逢いに導き出された光をただ進んできた。
その先に今の家族もある。
失敗の繰り返しばかり。いいことなんてなかった。
今でも失敗の繰り返しは続いているけれど、出逢いを悔やんだことはない。
まぁその時の僕は懸命にやってたんだろうなって思うばかり。
いつも暮らす街と違う時間が流れる他所の場所。
日本から外へ出ると、その場所がたとえ飛行機で1時間弱の釜山でも、
数時間の台北やソウルやグアムでも、
10数時間移動するロンドンでも。
自分を見つめる場所が変わると、ふと気付くことがある。
いつも気付くことがある。
旅の良さってそんなところ。
気付くも気付かないのもコインの裏表。
自分の知る自分の裏側を知る機会だ。
まだまだ僕はやりたいことがあるんだろうって思い返せる。
旅するとそんな自分に出会える。
でわでわっ。。。

