No-148「南日本新聞」1991年2月21日~鹿児島県
鹿児島郡吉田町宮之浦の「島津の森」(島津グリーンランド経営)の奥で滝にうたれる五体の地蔵岩が見つかり、話題になっている。
場所は、同社が拡張中の同森の西側の谷を百数㍍下った突き当たり。高さ約六㍍、幅約一㍍の滝の下に三体と二体の自然石とも磨崖仏(まがいぶつ)ともつかない地蔵形の岩が二段に並んで浮き出ている。
同社の職員が史料を調べたところ、現場は享保十三年(一七二八年)に牟礼神社を建立した野添金兵衛が化け蛇を退治したという古文書や民話が伝わる場所。その蛇の血潮で周辺の岩は赤く染まったといわれ、滝の名も赤滝と名づけられている。
十八日、写真を姶良郡牧園町犬飼の神職に見せたところ「十八の苦しんでいる顔が見える」といわれ、実は処刑場で蛇は犠牲になった人間だったのでは? という関係者もいる。
同森一帯は牟礼ケ岡山頂の牧神様(まっかんさま)など史跡が豊富な地。同社ではこの奇岩を「赤滝五神子地蔵尊」と名づけ、手前に拝観所を建設して三月二十一日から公開することにしている。