少しの間、家族控え室で待機。。。
それぞれお互いの両親に、ひさ君が亡くなったことの連絡を入れました。
両親たちもとてもショックを受けていたものの、落ち着いた口調で、
とにかく「気をしっかり持つように」と言われたのを覚えています。
NICUからティッシュペーパーを借りていて良かった…
夫婦二人して、散々泣きまくったので、テーブルの上にはティッシュの山が…。
悲しくて、次から次と溢れる涙。
ふうっと、落ち着きつつあるとき、コンコンっとドアをノックされ、執刀医のN先生が入ってこられました。
「ひさと君、本当によく頑張ってくれましたね。すぐに連絡を受けて、先ほど僕もひさと君に会ってきました。」
と言いながら、私たちの向かい側に座られる。
「危機的な状況を何度も乗り越えてくれたよね。
もうだめかなぁっていうときに、何度も何度も這い上がってきてくれて、生きたい!っていう気持ちが、ひさと君からものすごく伝わってきてました。
だからどうにかしてこの子を助けてあげたいと思ってたんだけど…本当に残念です。
ひさと君の様子を覗きに行って(挿管チューブを)チュパチュパしてる姿を見るたび、ごめんよ、ごめんよ、って申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
8/11に手術を受けて4ヶ月、苦しいことばかりによく耐えて本当に強い子でした。
手術を受けて、合併症にかかると、1ヶ月くらいで亡くなってしまう子が多いんだけど…
あの子の生きたいっていう気持ちからくる生命力には驚かされるものがあったなぁって感じてます。
お母さんも毎日毎日、面会に来ている姿を見て、スタッフ皆、お母さんのひさと君に対する愛情を感じていました。
ニット帽をよく作ってきてくれてたりしてね。
ハロウィンの帽子の次はクリスマスの帽子が見れるかなぁって思ってたんだけど…。
初めてお会いしたときにも言ったように、ひさと君の心臓の病気は、お母さんのせいでもひさと君のせいでも、誰のせいでもないからね。
心臓がつくられていく過程の中で、偶然、そうなってしまった、というだけだから、責任を感じないでほしいです。
僕もね、8年…もう9年目になるのかな?息子を一人亡くしていて…小児がんだったんだけど…。
忘れたことは一度もないし、やっぱり楽しかった頃のことを思い出すんですよね。辛いこともいっぱいあったけどね…。
だから、
お母さん達もひさと君と幸せに過ごした時間を沢山思い出してあげてほしいです。
将来男前になるだろうなっていう顔してて、楽しみではあったんだけどね。。
ひさと君、助けてあげたかったし、色々と手を尽くしてやってきたけれども、力になれなくて本当に申し訳ないです。
正直なところ、ひさと君のノーウッド手術は手応えを感じた手術でした。よしっ!(ガッツポーズ)って思ったんだけど…。
翌日のショックが引き金となって、あらゆる合併症にかかってしまって…。
我々はひさと君に沢山のことを学ばせてもらいました。
人工弁なら起こりうることが、まさか自分本来の弁に菌が付く…なんてことは、そうそう考えられなかったからね。そんな事が起こるなんて驚きました。
ひさと君が命をもって我々に教えてくれたことは決して無駄にはしたくないし、必ず活かしていきたいと思ってます。。。
K医大のU先生にもお伝えしておきますね。月1回のカンファレンスで顔を合わしているので毎回報告はしていたんだけど…U先生も心配してたのでね。
またお会いする機会があれば、よろしくお願いします。何か気になることとか聞いておきたいこととかあれば、またいつでも病院に連絡くださって構いませんので…。
僕はこれからすぐ手術があるので、すみませんけど、これで失礼しますね。」
と、手術前の大事な時間を縫って、これが全部の内容ではないけど、お話ししてくださいました。
先生からのあたたかいメッセージは、忘れないでおこうと、ずっと心の中に留めていました。
先生も医者でありながら、天使パパでもあり、私たちの気持ちは痛いほどに理解してくださってる。
だからこそ、そんな思いをする家族が一人でもいなくなるように。
と、一生懸命、治療にあたってくださっているのだろう。
だからこそ、前に立つ医者でありながらも心温かい言葉かけができるのだろう。
とても残念な結果になってしまったけど、私はN先生に出会えて良かったと思います。
大好きな先生です。
最後に会えて良かった…。
それから、
トイレに行こうと、廊下を歩き出すと、ICUでお世話になった胸部外科のU先生がパタパタと小走りで、NICUに向かわれているところをすれ違いました。
「今さっき、聞きまして。ひさと君の顔を見に行ってきます。」
と、ペコリ。
U先生も今日これからN先生とともに手術場に立たないといけないのに。。
ひさ君。
冷たくなる前に早く会いたい。
なんだか時間が経つにつれ、現実味がなくなっていくような気がしました。。。
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