密度高く、切ない愛を描く輪廻転生物語。タイBL「Until we meet again」 | まりのブログ

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性同一性障害者の私が、思いのままに生きるために頑張って生きてます。
性別適合手術をしてから2年になりました。
私はトランスジェンダーとして誇りを持って生きてます

幾つものドラマを梯子しながらも、今は本作の余韻で胸いっぱいです。
タイBLドラマ「Until we meet again、運命の赤い糸」観終わりました。締めです。

インとコーンは日陰で心を近付け、深い愛で結ばれていました。今は、まだ同性の愛に受け入れるばかりでは無かった、かの時代のタイ。
当然のように、世間の目を理由にふたりの父親はその愛を引き裂こうとしている。
ある夜。その日はインの誕生日。
ふたりは、ふたりで作り出したふたりだけの場所で、密やかにその刹那の時間を味わっています。しかし、そこにふたりの父親が現れます。彼等は問答を言わせず、ふたりを引き離そうとする。
「何故、こんな奴と」
「愛してる...愛し合っているんだ...」
許すどころか、罵声を浴びせ合う親たちの姿に失望したコーンは、父の携帯する銃を手にし、いさかいを終わりにしようとするかのように... 
「イン... 愛してるよ」
コーンは、頭を撃ってしまう。
「僕を置いていかないで。一緒に居てよ... 目を覚まして。お願いだから目を覚ましてよ。愛してる。... ずっと一緒だって言ったじゃないか。愛してるって言ったのに、先に逝くなんて...」

30年後にふたりは、コーンは、無骨ながら人格は優れ、水泳に才能あるディーンに、インは、心優しく、料理の腕は逸品のパームに生まれ変わります。
多くの転生ものは、やはり前世の因果に苦しまされる話か、前世の愛に執着してしまい、現在の家庭なり愛を蔑ろにしてしまう、そんな話が多いような気がします。
本作でも、ふたりは前世の愛に囚われます。強調はしませんが、今の愛は僕たちの愛?それともインとコーンの愛なの?とも悩むことに成ります。
この辺りへの拘りは非常に強く、ふとしたパームの性格や料理の腕さえも実は複線に成っていて、インは逆に料理が苦手だったと言うオチが有ります。パームが料理上手なのは母の影響では有りますが、インがコーンに何度も料理を作ろうと試しながらも、たかがラーメンですら作れなかった事が、今のパームに料理を嗜ませたと言えると思います。
ディーンとパームが顔を合わせ、食事を作る際、ふたりは過去の因縁?の料理を作って貰って、記憶をなぞり、その出来映えの違いに感慨に耽ったりしています。
パームは、料理研究部でタイの伝統菓子を何度も作ることに成りますが、そのラインナップも過去に思い出深いものを作ります。
どちらもその時はハッキリとは分かりませんが、ふとした時、シチュエーションが重なったりした時に、過去の記憶に心を揺り動かされ、時には止めどない涙を溢してしまいます。

物語はそうしてディーンとパームの出会いがあり、ふたりはふたりが想う以上のスピードで縁を深めていきます。
しかし、先ず、ディーンが悩み始めます。
ディーンはパームと出逢う以前から、自らの中のコーンに気付いていました。そして彼は、その運命の人を捜していたのです。
ビビッドに感じる特別な感覚。そして確かにパームがその人、インだ、と気付きます。
ますます惹かれていく心。更に"縁"以上にパームはディーンの現在を穏やかに変えていきます。それは"輪廻の運命"を超えてパームへの愛を育んでいきます。
しかし。まだ見えない過去の全て、真実が、彼を怯えさせます。
何故、悲しいのか?何故、辛いのか。
彼はパームと居ると絶頂の幸せを感じていました。しかし、どうしても拭えない不安が常に寄り添っています。
更にパームは過去を思い出す度に、涙を流し、身を震わせます。どれだけ彼が自分を受け入れてくれても、時折、パームを苛む、どうにも成らない"真実"が、恐ろしい...
ディーンは親しい先輩を頼り、インとコーンについて調べて貰います。
一方、パームはディーンとの関係が深まるにつれ、やはり夢やフラッシュバックで見る、インと言う存在に気付いて行きます。
僕はインの生まれ変わり。
そして、ディーン、あなたはコーン。
僕たちは以前、愛し合っていた。

衝撃的なことながら、パームは今、また出逢い、そして愛を育んでいることに特別な思いを抱き始めます。
不安そうなディーンを諌め、僕たちは愛し合っている、だからこれでいいと促します。
しかし、次々と、過去の記憶がパームに雪崩れ込んで来ます。
ディーンは、どれだけ目を反らそうとしても心を離さない因縁を晴らそうと、インの過去を辿り始めます。

扉を開く度に露に成る、30年前の真実。また同時に見えてくる、あの日の記憶。
....ディーンはインとコーンについて調べて貰っていましたが、コーンについてがどうしても分かりません。これについてはちょっとした事実が有りました。
ここからの展開は、非常に複雑で在りながら、インとコーンの関係者全ての、30年抱え続けた思いが犇めきます。そして、ディーンとパームの行動が、縺れ、身動きさえ出来なくなっていた、因果を背負う者たちの時間を、流し始めます。彼等は、抱え引き摺るその思いを、ディーンとパームに晴らして貰おうとするかのように、涙ながらにただただ思いを溢します。
...ここでまた、思わぬ人が実は誰で...更に今の自分の出生に纏わる衝撃の真実までもが明らかに成ります。
また、それを引き起こしたのは、たくさんの悔やみを抱えた、残された人達が、必死で願ったからだと描きます。

本作は日本の"赤い糸"伝説が題材に成っています。足首で繋がる中国の赤い糸伝説も語られますが、ここで扱われたのは日本のものでしょう。
それは"運命"と言うより、人の思いが込められた、"願い"の象徴でした。

しかし。真実は、更なるふたりの絆と成る筈が、パームの心だけは、インの遺したある想いによって晴れずにいました。
それは。

「僕を置いていかないで。一緒に居てよ... 目を覚まして。お願いだから目を覚ましてよ。愛してる。... ずっと一緒だって言ったじゃないか。愛してるって言ったのに、先に逝くなんて...」

ディーンもその事を思い出して、自らを叱咤しました。
「なんて、俺は最低なんだ!」
悲しみに暮れ、怒りと憤り、そして絶望までも抱え、どうにも出来ないくらい落ち込んでしまいました。
彼を救ったのは、インの家族。そして何よりパームその人でした。
だからパームを救わなくちゃいけない。
ディーンはパームを皆に会わせ、そして晴れていくパームの因果を見守りました。
それはディーンをも、より、救っていきます。
更に過去に囚われた人達の因縁をも晴らしていきます。
言えなかったこと、出来なかったこと、悔やんでいること、だから、し続けてきたこと...

それらが今を全て塗り代える...筈でした。

最終話。記憶が、真実が、パームを追い詰めてしまいます。
....こんなにも複雑に因果を巡らせ、晴らしながら、それ以上に描きたかったのは、インの裏切られた記憶。それを受け継ぎ、絶望に囚われたパームでした。
全17話。長い旅で、本作はただひとつのことを描きました。
それはコーンによる裏切りの精算でした。

許して欲しいと願うコーンことディーン、ディーンを、そしてコーンを心から愛しているけれど、あの置いていかれた辛さを抱え込んでしまったインの絶望...
それは、30年、そして、生まれ変わってまでも、魂に刻まれてしまいます。

パームはディーンの愛によってその思いを自らと切り離します。そしてインの思いと語ります。
言葉より、心で、そして見届ける目で、ふたりは確認し合います。

「愛こそ...辛い記憶も、その素晴らしく幸せな記憶で洗い流そう...僕らは約束通りまた出逢え、そして愛を育めた...大丈夫。もうあんなことは起こらないから...」

インは悪戯でもするかのように笑い、見守り、微笑むパームに、そっと頷きます。

本作の最大の貢献者は、インを演じた、このカッサモンナット・ナームウィロート君です。
「ラブ・バイ・チャンス」にも出演していましたが、そちらではあまり冴えある演じでも役柄でも有りませんでした。しかし今作の彼は、全身全霊でインを演じ切りました。
彼の視線が物語るものや、笑顔の奥に見えるものは、観るものの記憶に痕を残すでしょう。

...本作はエポックなラブストーリーでは有りませんでした。繊細で感覚的な作品。
私は始終「ふたりのベロニカ」と言う映画を思い出していました。世界にはもうひとり自分に似た人が居る。そんなもうひとりと心が繋がってしまったベロニカの話。かのはもうひとりのベロニカの記憶の痕跡を辿ります。
その作品に見た、あまりに刺々しい感覚が、この作品には有りました。いえ、正確には観ている時にそう刺々しさは感じ無いんです。でも、人の記憶を共有し、その世界に飛び込んで行くのは、非常に痛々しい気がするんです。誰かを傷付けるかもしれない、傷付けられるかもしれない。常に、突端を渡っているような危うさが漂います。
まさにディーンとパームも、好奇心と愛の再確認に胸湧かせながらも、反面、不安と恐怖に苛まれます。
ベロニカも「私はひとりじゃない」とばかりに嬉々とし、もうひとりのベロニカを追いますが、故にもうひとりのベロニカに起こっていた運命をも背負うことに成ります。

....結構な重いテーマのようですが、全編に渡り、どちらも清々しさを残します。そして辿り着いた先はまるで朝の空気のように爽やかです。

そしてやはりタイのBLです。:p

後半はディーンのやりたい放題。パームたじたじです。お風呂シーンはBLベタながら、恥ずかしさ100%でした。そう言えば「ラブ・バイ・チャンス」でも有りましたねぇ... :)
前回紹介したお店での身長差"壁ドン"ならぬ"物取ってあげドン"?は、パームも逃げ出すほど破壊力が有りました。
更にインによる唇奪いの技は、悲鳴ものです。知らずにぜひ、虚を突かれて下さい。更にまた30年の後、再現されます。
ディーンによる、あんたクールなの?甘えタイプなの?と、翻弄させる二刀使いが、またじわじわと観るものの足腰の芯を砕いていきます。

本筋の繊細さ故に、愛の描きは非常に切ないです。「2gether」のような健康優良青春物語とは確実に双璧で、また「Dark Blue Kiss」のような絆と嫉妬に悩む、そこにある青春群像でも有りません。
運命とか輪廻を題材に、"今を生きること"を促し、強く"愛"と言うものを引き立たせた人間ドラマでした。
感動的で、素晴らしい終局を味わえます。

あえて難を言うなら、やはり友人マナウらによるジョーク配分の悪さ、そしてしつこいほどのタイアップ商品の見せびらかしでしょうか。
前者は、何しろディーンとパームの愛と家族の話以外は、全て、おまけです。
ディーンの友人のウィンが非常にキャラ立ちが良く、またパームの友人ティームに荒々しく思いをぶつけ、引きずり込んでしまう大胆な愛が非常に魅力的なのですが、進行も成立もあっさりで、また、発展もさほど無く残念。演じたノッパナット・ガンタチャイ君が、これまたイケメン秀でておられ、金髪ちょんまげ髪で颯爽と画面を歩き、彩る様は、あなたの視線を何度も奪うことでしょう。
だからこそ、もう少し主線に絡めても良かったのになあ...

パームにモーションをかける、イカすゲス男アレックスも、なにせ「ラブ・バイ・チャンス」のティンを演じたピーラウィット・アッタチットサターポーン君(ハアハア...名前が長い...)ですから、「ラブ・バイ」観てるとそのイメージが重なり、堪りません。しかし、山場ではざっくり登場機会を奪われ、気付けばディーンの妹と交際中!との話だけ。涙...
序盤の最難マナウは、基本、化粧品宣伝担当。ジョークも担当している故に、二倍時間を取ってしまう残念さ。またどちらもあまり面白くない。"食"が物語に重要なエッセンスとしてあるだけに、集まりの中にマナウが居ると彼女は食事さておいて化粧をし始めます。当然、彼女待ちで展開が止まります。
ジョークもアドリブ?と思うほど拙いです。
ただし。中盤以降は彼女のためのランタイムも時間を減らし、気にならなくなります。また、男子たちは真面目なので、彼女のジョークは、物語が生み出す張り詰めた空気を抜く役割も担っています。厄介だけど必要なのでした...

でも、基本、群像にしなかったのは正解です。横道に時間を掛けて、あの繊細なイメージが萎えてしまうのは勿体無いですから。
いえ、インとコーンの愛にはたくさんの人が絡んでいたので、必然で群像の赴きを見せます。
ディーンとパームがインの家族に会い、そこまで!と思わせる衝撃の真実が明らかに成る件りは、下手なサスペンス映画が太刀打ち出来ない張り巡らされた蜘蛛の糸です。しっかり捕らわれてしまいましょう。

私としてはタイBLの最高は「ラブ・バイ・チャンス」(まだまだ観ている作品が少ない)ですが、「Until we meet again」は、輪廻による切ないドラマを描き、それでいて仰々しく無く、あくまで、ある事件によって悲しみに暮れた"ふたつの家族"の物語を描いた、素晴らしい片隅の奇跡の物語でした。
ちょっと不完全ながら、そんなBっぽさが、私に「好き」を人一倍湧かせてしまったかもしれません。もしかしたらタイBLで一番..."好き"...かも?...

2021年にウィンとティームを主人公にした番外編『เชือกป่าน (Between Us)』が放送されたらしいのですが、コロナもありましたし、どうなっているのでしょう...
調べると情報は出てくるのですが、あまり深く情報が有りません...


☆以前、グレタ・スカッキ出演の映画「セカンドフェイス」と言う作品がありました。ベルギー映画だった?と思っていましたが、ネットによるとドイツ映画のようです。
この作品ではある男性が魅力的な女性に出逢った。ふたりは瞬く間に心惹かれていくが、彼女は不思議な感覚に囚われていました。その感覚は止まるどころか導きを強め、それが前世でもふたりが出逢っていたことを示し始める。ふたりはそのことに運命を感じるが、明らかに成る真実は、実は彼が彼女を殺していたと言うことでした。
そしてまた、今、彼は、記憶に抗うことが出来ず、それが為されようとしていた...
...そんなラブストーリー要素のあるサスペンスでした。
記憶とか感覚と言うものは非常に映像にし辛いものですが、行間を省いたり、未知の存在の気配を映像に忍ばせ、予感させることで、私達の第六感を刺激するような素晴らしい体験を促してくれることもあります。
私には「セカンドフェイス」がそう。
そして「Until we meet again」にもそれを感じました。でも質はちょっと違いましたけど。
やはり仏教国タイだから...でしょうか。
前世の記憶。もし、あなたが前世で悪人だったら?どうしますか?

「Until we meet again」も過去に不幸があり、またそれが再現されてしまう因縁を招きます。しかし、ひとまず、アンハッピーには成りませんでした。
過去や出来事に向き合い、それを解決してこそ、明日に踏み出せる。それこそが人生の真理。そう学ばせ、人生を振り返らせてくれたドラマでした。
今は、本作の余韻で胸がいっぱいです。
非常に"心"に触れる、ドラマでした。


☆おまけ。
「原神」始めました。まあ、お金を注ぎ込まないと快適には楽しめなさそうですが、マイペースならそれなりに楽しいです。
と、言うより中国製ゲームとして、誇らしいほどよく出来た作品でした。

世界が非常に豊かで、また、独特な世界観が惹き付けます。何より驚かされるのは動きの自由度です。
自由に移動できる箱庭世界、オープンワールドを、走る、跳ねる、泳ぐ、崖登り、木登りと、何でも出来ます。

更に、飛ぶ!と言いたいですが、実のところは滑空出来ます。
この世界の冒険を、ひとまず無料で楽しめる凄さが堪りません。
残念は、あまり開拓や冒険をしているわくわくを感じないことでしょうか。世界は色とりどりで、探し、見付けるものがたくさん有るのに、何故か、興奮しません。
でも、確かに言えるのは、ゲーム大国日本、危機ですぞ!

季節の変わり目。私、買い物に出るだけでぐったりしてます。みなさん体に気を付けて。