日本映画祭で観た映画の感想をつらつらと。

 

 vol.1はこちら

 

1本目は

「夜明け告げるルーのうた」

2017年 制作:サイエンスSARU

監督:湯浅政明

脚本:湯浅政明/吉田玲子

 

フランスの映画祭、アヌシー映画祭で

グランプリを受賞した作品。

日本映画としては「平成狸合戦ぽんぽこ」以来の

受賞らしいです。すげえな。

 

ちなみに、映画館の入りは7割くらい。

ビジュアルの印象から

「ジブリの新作?」と思って

きた人もいるのかも(笑)。

 

・・・で、感想。

 

アニメーションはすごい

 

だけど

 

ストーリーは微妙

 

でした。

 

アニメーションは素晴らしいのですよ。

「ああ、今すげえモノを見ている」

という感覚は十二分に味わえます。

 

何がすごいかって、画の躍動感。

 

湯浅監督は、ジブリのような「描きこまれた画」ではなく、

キャラは極力シンプルな線で表現します。

(「マインド・ゲーム」より)

だけど、キャラを動かす時は

とにかくぐりぐり活発に、

ありえないくらいの躍動感で描く。

それも、半ば狂ったように。

(「マインド・ゲーム」より)

 

こうした特徴は、今回の「ルー」でも発揮されています。

 

キャラデザはとにかくシンプル。

動かしやすいよう、極力キャラを

複雑な線で描かないようにしてるんですね。

 

ルーの歌う音楽の魔力で、街の人々が急にダンスを始めるシーンでは、

ありえない速度でみんな踊って踊って踊りまくる。

若干の狂気すら垣間見えるこうした描写は、

最初こそ居心地の悪さを感じるものの、

だんだん感覚が麻痺していき(笑)

ワクワク感へ変わっていきます。

 

静止画では可愛く見えないルーが

動き出すとキュートに見えてくるのもすごい。

 

犬が人魚化した「ワン魚」も素晴らしい。

下半身は魚の動きをするのに、

上半身はまんま犬の仕草をするんですよ(笑)

 

他のアニメでは見られない、

独特の「海」の描写も見事。

人魚のルーが水を操る描写においては、

なんと「海の一部を切り取る」!!

このセンスの素晴らしさよ。

若干藤子Fテイストを感じました。

 

 

かように素晴らしいアニメーション作品ですが。

 

ストーリーがアカン。

 

特に人間関係の描写の雑さが目立ちます。

思春期特有の自意識や

好きなものを好きと言えない気持ち、

自分を表現することの素晴らしさなど

主題にあげたテーマはとても

素晴らしいと思うのですが・・・

 

人魚と因縁のある祖父との関係、かつて同じように音楽を志した父との関係、友人との関係、どれも中途半端に終わってしまった印象です。

 

湯浅監督は、人間描写よりも

「動き」の面白さを追求する人なので、

主人公のキャラや友人関係の描写には

さほど興味が無かったのかな。

 

これだけ色々書きましたが、

見て損はない映画だと思います。

 

ただ、相当クセの強い映画だとは思う。

「崖の上のポニョ」ほどではないけれど(笑)。