キレるオヤヂにボーゼンの巻 | どこまで走り続けるのだろう?

キレるオヤヂにボーゼンの巻

その人は、一見、人が良さそうで
気が弱そうで、優しげで。
多分、今まで言いたいことがいえなくてつらい思いをしたり、
世の中を渡っていくのが下手だったりするんじゃねぇの。
こんなイメージでみんなに見られてる人が仕事場にいます。

でも、その人を初めて見たときに思った。
(ああ、私と同じで『自分』を作ってる人だな~。)と。
上に書いたようなイメージで他人から見てもらえるように
かなり意識して、自分を殺してるんだろうなと思った。
きみひとには「それは考えすぎじゃないの?」と言われたけれど、
今まで生きてきた中での経験が、私に『そうじゃない』と知らせていた。

こういうセルフイメージを「作っている」人が
いざ、そのイメージを壊した時。
言い換えれば、イメージを壊しても構わない。と思った時。
そういう瞬間ほど、実はヤバかったり、怖かったりする。

そして今日、その瞬間がやってきた。
そう、初めてキレられたの。その人に。

話はちょっと脱線するけど、
女王様に仕事を教わる時に何がイヤって、
「失敗するまで黙って見てる」ってとこなのよ。
まるで失敗するのを待っているかのように。
失敗する姿を楽しみにしてると言わんばかりに。
前もって言っておいてくれれば、失敗することもなかったのに~と、
なんで失敗するまでだまって見てんのさ、この意地悪~と、
女王様に怒られながら、仕事人はいつも思っていたわけ。

そしてそんな仕事人に回ってきたのが
新人教育ってお仕事。
自分がされてイヤだったことを、人にするのはもっとイヤ。
そう思って、この新人に教える時には
ものすごく気配り、目配りして、
失敗することがないように、それで怒られたりしないように
前もって言う癖がついていた。
相手から見れば『ものすごく口うるさい』と思われたとしても
失敗して、私以外の人に怒られるよりは、ずっとマシだろうなと思っていたし。

そして話は今日の出来事に戻る。
いつものように自信なさげに仕事をする新人。
この人のあかんとこは、
ある仕事をやらせたときに、
ちゃんと理解してるのか、してないのかが分かりづらいトコ。
その場面で、本人が分かっていたかどうかはともかく、
少なくとも仕事人の目にはちゃんと分かっていないように見えた。
そこでいつものように、先回りして言ってあげたんだけど、
どうもそれが逆鱗に触れたらしい。

「うるさい!!お前にそんなこと言われんかて、分かってるわい。このアホ、いつもいつもうるさいことばかり言いやがって。ボケ、カス!!」

あっけに取られるとは、まさにこのこと。
次の瞬間、なぜか笑いそうになった。
おいおい、こいつ、こんなこと言うてますケド~ってなカンジ。
自らガラスの仮面を投げ捨てて、こなごなに壊すような真似して
このおっさん、本気かい?ってカンジ。
しかし、この場で笑い出せば『火に油』になるのは必至。
そう思って、とりあえず、そっとその場から離れる私。
外に出て思い切り笑ったのは言うまでもない。

その後、気を取り直して考える。
これってさ、むっちゃラッキーやん。
もう、このおっさんに教える義務がなくなったってことだよね?
だって、向こうが教えて欲しくないって言ってるんだもん。
やった~、やっとあのおっさんから解放されて、自分のペースで仕事できるわ。

仕事が終ってから、休憩室に3人もリーダーがいるところで、
「これこれこういう事を言われたので、もうあの人に教えたくないんですけど…」と宣言した。
みんな、にわかには信じられない様子。
「ウソ~、あの人がそんなこと言わんやろ?」
「ウソだと思うなら、まだ帰ってないから、本人に聞いてみてくださいな。」
そして、リーダーが2人、事情を本人に聴きに行った。
その後「本人が『謝りたい』って言うてるから…」と
新人のところに呼ばれた。
ひたすら恐縮し、ペコペコ頭下げる40男を見ていたら、
非常に情けない思いがした。

そんなにすぐ謝れる程度の気持ちだったの?
そんな安易な気持ちで他人にあそこまで言えるものなの?
例えば、私がキレるとしたら
そんなに簡単に引き下がったり、謝ったりする気持ちにはなれない。
自分のプライドの全てと、命さえかけても惜しくはない。
そういう気持ちにならない限り、キレないだろうと思うから
他の人にちょっと諭されたくらいで、引っ込む怒りではないだろうと思うから。
だからこそ、すぐに謝ってきたこの男に対して
ものすごい脱力感と失望を覚えた。
それくらいの覚悟でキレてんじゃねぇよ!!

「も、いいです。」
「今更謝ってもらっても、思ってしまったことは消えないし、言ってしまったことは取り消せないし。」
「いくら真剣に教えてたってそんな風に思われるんじゃ、私がなんかアホみたいやし…」
疲労が一気に噴出してきたように感じて
謝りつづけるのを無視して部屋を出る。

最初からいわば『胡散臭い』男として
こいつを認識していた仕事人には、たいして驚きもなかったが、
他の人はみな、まだまだ信じられない様子だった。

ふっ、人を見かけだけで判断しちゃいけませんぜ(笑)